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死を志願するもの

リボツナ。

終始死とか自殺について悶々とねちっこく考えている話です。
*
*

明け方の綺麗な空気には、触れてしまったらこの穢れきったからだはきっと燃えさかる炎のなかに投げ込まれたかのような苦痛を伴うほどの美しさがあった。

大きな、白のシーツを体に纏い、裸足で冷たい大理石の床を音も立てずに窓辺へと移動する。

窓の外には、朝焼けに染まり、薄い霧に覆われたイタリアの町が見えた。

このボンゴレファミリーの城である総本部は、イタリアでも町中でなく少し高い場所にあって、景色の良さは保証されている。けれど、綱吉にとっては下界ときっちりと線引きされた牢獄とさして変わりはなかった。

遠い向こうで上り始める太陽を、目を細めながらも確りと目に焼き付けるように見ながら、

この命の終わりに想いを馳せた。

ああもう死んでしまおう、と唐突に思う事が度々有った。それはまるで心臓の発作かなにかのように、常にどこかに隠れてつきまとっていて、ふとした時に発作的に起こるのだ。

誰だって人生一度や二度、終わって欲しいと思う事くらいあるだろうけれど、これはもう病の部類に入ってしまうんじゃなかろうか、と思わずにはいられなかった。もちろん、医者になど行く訳もないのだけれど。

そしてその自殺志願的な考えは、発作的に周囲の銃器や刃物をつかんで柔らかい手首の上に、首筋に、こめかみに、あてられる。

けれど、誰に止められることもなくても、その後には進めなかった。

それは、自身の弱さから。

大きな、窓を少し風を入れるために開けると、もう既に秋と成った冷えた風が頬を撫でた。

目を閉じる。

紅い太陽が見えなくなって、冷たい風と、その音、鼓動しか聞こえなくなる。

暗闇のなかで、また暴れだす汚い言葉とともに。

何故死にたいと、強く願っても、死ねないのかなんて、それはとうに分かっている。

一番最初にそれを思ったとき、死ねない自分に情けなさを感じて、小さくて、卑怯な自分に反吐がでるくらい。

それくらいに弱かったのだ自分は。

まだ、自殺できるほどに心は強くあってくれない。全てを断ち切ってしまえる程に強くない。一人きりになってしまうのが怖い。
その先にあるものが怖い。

嗚呼、なんて卑小なんだろう。

涙が流れて、纏ったシーツに染みて逝く。

嗚呼もう全てわすれて眠ってしまおう。

今さっきこのシーツを持って出たベッドに未だ横たわっているであろう優しい人のもとに、行って眠ろう。

そして願わくば二度と目覚めないように。

さっき来たのと同じようにしてベッドにもどる。窓は開けたままで、冷えた体と、冷えた部屋が一層冷たくなった。

黒の癖のある髪が、枕に散っている。それを少しだけ救い上げて、気付かれないように別れのキスをした。

「おやすみ」

言って、腕の中に潜り込む。冷えた体には少し熱くかんじるリボーンの体が心地よく、すぐに睡魔が襲って意識が途絶えた。







「だめツナ。」

隣で、腕にすがって眠る綱吉を抱き寄せて、ふわふわとする髪をなでてキスをする。

誰も、気がついていないと思っているのか、本人以外には皆分かっていることで。

全てを捨てて命を断たない、断てない甘い綱吉をこのときばかりは叱ることはできなかった。

死なれては、困る。

助けてと言われるまでは、助けてはならないのだ。



苦しい胸を忘れるために、リボーンもまた目を閉じた。


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