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午前7時の誓い-事は転じて-

リボツナ。午前7時の誓い-事始め-の続きです。
*
*

リボーンはプールサイドに佇む綱吉を見て、もうすぐ契約が切れるのを惜しく思っている自分に気がついた。

そして、急速に、自分のこの嫉妬の訳や、悲しみの意味を知る事となる。

(ああ、オレはこいつが好きなのか)

ばかばかしいとさへ思っていた恋愛という感情に、いまさらに気がつくなんて、いつも何よりも何事にも察しがよくなくてはならない、というか、それが当たり前の筈の自分としてはありえない事だった。

無意識下に人に対しての感情を抑えていたのかもしれない。

考えてみれば、自分と綱吉の関係は、微妙なもので、薄い、ミシン糸の上を歩いているような危うさだった。

そして、今それが崩れ落ちようとしているのならば、これ以上崩れないようにしてしまう手だてはまだある筈だ。何しろ、これからもうボンゴレのボスとなる綱吉のそばから消えるのだから。

けれど、それでいいのか。

最強のヒットマンである自分が、こんなことでうじうじと悩んでいるのが、人として長けている筈の自分が、愛人も何人いたかも知れない自分が、たった一人のためにこんなになってしまうのが、ひどく悔しかった。



ぱしゃん、という水音に意識を戻される。

見れば、プールサイドに佇んでいた筈の彼は見当たらず、もう一度した水音にようやく彼がプールに入っていると知る。

「おい、何してる」

この突飛な行動を理解出来ずに、あきれた声が深夜のプールに響いた。

「何って、見てわかるだろ、プール。リボーンも来いよ」

「はあ?何だそれは。ふざけるんじゃねーぞ」

「いや、別にふざけてないけど。気持ちいいぞ」

そういって、ふっと笑った綱吉の顔が、とても艶を帯びてきらめいて、一瞬どきりとする。

「第一、おまえ服はどうした」

「え、着てるよ。靴と上着はそこだけどね」

指差す方に視線をやると、きちんと畳まれた上着が、そろえて置かれた靴の上に乗っている。

「.......は、仕方ねーな、もうすぐ最悪の劣等生ともお別れだ、餞別に付き合ってやる」

言って、すぐにレオンを自身に擬態させると、帽子と上着、靴、ネクタイ、ベルトを外して持たせる。

おとなしくレオンはそれらと先に綱吉が脱いだものまで抱えて座っている。

それをみて、綱吉のいるプールへ一気に飛び込んだ。

「うわっぷぁ」

水しぶきと起こった波に飲まれて綱吉が苦しげにうめく。

「ちょっと、飛び込むなよ!こんな狭いプールで!」

水面から顔を出して第一声で怒声。

リボーンは何事にも熱しやすいくせに、面倒くさがりで、怠惰な綱吉の怒った顔が好きだと思った。

綱吉は、この中学に入った当初とは比べがたいくらいに上手くすいすいと泳いでゆく。目で追うけれど、まるでこれからの関係のように、追いかけることができない。
綱吉は泳いでいるかぎり、リボーンの居場所は分からない。リボーンが後ろから付いてきているのか、それとも佇んだままなのか、

そして、リボーンは綱吉が泳いでいるかぎり、ともに並んで泳ぐ事などできそうもない。

深夜のプールはやけに哀しさと、寂しさを助長させるように水音を垂らした。

このまま、別れてもいいのか、こんな普通の男みたいな悩み、なんて持ちたくなかった。

どこまでも、自然で、ドライでありたかった。

自分が崩れて行く気がして、これは早く離れてしまわないと大変なことになってしまう、とか、バカが映るとか、大切なものなんて作って良い訳が無いとか、ぐるぐると思考が廻る。

(オレも堕ちたもんだな、)

「....あ、のさ、リボーン、」

突然、真後ろで声がした。不覚にも気配で感じ取れないほどに悩みが深かったらしい。ここまでオレをゆるみきらせるのもこいつだけだな、とリボーンは頭の端っこでつぶやいた。

けれど、結局、少しは呪い有る身を幸せにしてやってもばちは当たらない、とボスになるまでの間だけだったとしても、愛しあったならそれで一生を生きて行けると覚悟した。

「んだ、」

「ずっと、言えなかったんだけど、さ」

後ろから、熱い空気が漂った。
今、どんな顔をしているのか、見なくてもわかるようだった。

「おれ、さ、いつからかは分からないけど、ずっと、リボーンのこと好...」

「まて。オレが先に言う。」



「愛してるツナヨシ、」



「っ」

綱吉は息を飲む。

リボーンは柄にもなく、手に汗をかいて、頬が少し熱いのをごまかそうと、プールに身を沈めた。沈めた先に、綱吉のほっそりとした脚が見えた。

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