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午前7時の誓い-事初め-

リボツナ。

続きますので。
*
*

秋も近づき始めて、すこし涼しい風が頬をかすめる。

空はからっとした青空で、見上げた先にちいさく薄い雲が漂っていた。

朝早くでまだ空気も澄んで、ぴんと張っているから、リボーンは大きく息を吸い込んだ。

肺に冷えた、澄んだ空気が入って、体のなかさへも洗われているように感じる。



「いい天気だな」



ぽつりというその言葉に、返事をする人はいなかった。

リボーンは傍らにおかれた愛銃を片手にとると、頭に押し当てた。





時刻は午前7時をまわったところだった。







綱吉のボンゴレ10世襲名の日が明後日に近づいていた。

初めてリボーンと出会った時と同じくして未だに人を殺す職業と言っても過言ではないこの裏社会の、マフィアのボスになるということに抵抗していた綱吉も、ようやく抵抗を諦めたらしい。

リボーンはようやく仕事が終わる見込みが出てきたのを、嬉しくも、哀しくも思っていた。

(一緒に居た時間が長過ぎたな)

愛着と言えば聞こえがいいけれど、実際それはただの執着でしかなく、誰彼かまわず彼に触れるものが気に入らない。

もちろんそれはこれからボンゴレとなる事実も同じ。

彼をボンゴレのボスにするのが仕事ではあるけれど、今では仕事と私情が入り交じって、複雑に糸を絡めていた。

それに対して綱吉はというと、とうとうその事実を受け入れて、日々ボスとしての才能と品格を極めて行っている。

(だめツナ。そんな振りしたって分かってんだぞ)

受け入れたことにして、違う未来があるかもしれないという可能性をねじ伏せているのに違いなかった。

明後日になれば、襲名の儀式をすれば、彼はボンゴレとなる。

綱吉はねじ伏せた希望が砂を吐いて起き上がらないように、早く明日になって欲しいようで、少しでもあまる時間ができると、この街を離れるのが哀しくなるからと、忙しない。

「リボーン、ちょっと出かけない?」

ちょうど漸くスーツケースを作り終わったツナが、ツナのベッドに座って窓の外を眺めているリボーンに声をかけた。

「こんな夜にか。もう1時だぞ。明日は早えんだ、早く寝ろよ」

「いいじゃんか、おまえと一緒にいられるのも、あともう少ししかないんだしさ、」

「......しかたねーな、」

「ありがと、」

ボンゴレ襲名の後は、別々の未来に歩き出す。

家庭教師はマフィアのボスになった暁には契約完了でおさらばだった。

ならばせめて、少しでも思い出を作っておくのも悪くない。

二人は、もうとっくに静まりかえっている家のなかをそっと抜け出した。

並盛の町並みは、今も昔も変わらず、どこかに新しいスーパーが出来たとか、そんな話もないままで。中学時代のそのままで、それはツナが記憶している幼い頃からも寸分も違わない。

互いに会話はなく、暗く、少し湿った空気のなかを歩く。虫の音もしない、ただ風にゆれる草と、大気の音だけが周りに響いていた。

まるで、世界に二人しか存在しないような錯覚さへ起こさせる程に。

ふと、ツナがフェンスの前で立ち止まる。

「どうした、」

近くに寄ると、ツナは振り返って、

「ほら、プール。今、まだプールの授業有る頃だもんな、入れる、かな」

「お前泳げねーだろ、入ってどうすんだよ」

「いいじゃん。」

じゃあお前はそこにいていいから、と言いおいてさっさとフェンスを上り始める。

たいした高さでもないのによじ上る辺りが,まだ出会った頃のままだなと、この街と変わらずこいつにも変わらないとこがあんだな、とリボーンは人知れず思った。

「ふん、」

ツナがフェンスを昇っている間に、さっさと飛び越えてプールサイドに降り立つ。そこは間違いなく、並盛中学のプールで、過去何回も来ている場所だった。

「ずるいぞ、リボーン、飛び越えるなんて」

後ろからようやく乗り越えたツナが歩いて近づいてくる。

リボーンは闇にまぎれて見えないように、ふと笑った。

(変わらないなおめーも)



帽子のつばを、ふかく被るようにと下へ下げた。
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