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余白は告げる

余白の続きです。リボツナ。
*
*

「あのバカ、」

跳躍して敵の中へと踊るように走っていった綱吉を、この上なくいらついた表情で追いかけた。





「さあて誰が一番最初に死ぬのかな、」

笑って、こんなことを言えるようになってしまったのは一体何故なのかななんて考えたりしない。誰にでも、破壊衝動なんて潜んでいるんだから。それは温厚な、俺にだって言える事で、人の血を見る事と、断末魔、肉の避ける音なんて、聞いてもなんとも思わない。人を殺めるのは嫌いだけど、苦痛じゃない。

敵が、怯えて尻餅を着くのを、どこか遠く、感じないくらいに遠くで聞いた。

重く、伸しかかる銃声は、確実に人の体を突き抜けて、無色の液体とともに地面に落ちる。落ちた瞬間に液体は真っ赤な血になって、綱吉の目に色彩を知らせた。人を殺めるその瞬間だけ、綱吉の全ての感覚は消え失せる。戻る頃にはすでに誰かが息絶えているのだ。

続けて、何発も打ち放つ。そのどれもが、それぞれ人の体に吸い込まれて、一瞬にして命を奪った。



「おい、」



不意に襟を掴まれて、後ろに引かれる。とっさに、銃口を向けていた。

「.....俺も打つ気か。........もうだれも生き残ってねーな、」

右腕を、痛いくらいに掴まれて、腕を引くけれど、年に似合わないくらいの力で握られては抵抗できる訳なかった。





「だから、大丈夫だって、これくらい。ただのかすり傷だから」

必死で逃げようとする綱吉を無理矢理ひっぱって自室へと向かう。ここまで過保護になるなんざ、家庭教師失格だなと思いながらも、家庭教師失格ならもうずっと前から失格だったなと思い直す。第一、教え子に気があるなんざ、有ってはならない出来事だ。

殺し屋に本当の意味での大切な人なんていらないのだから。愛人なんて、何人いても同じ。いつ、どこでくたばっていようがそれならそれまでのことだから。

(俺も堕ちたもんだ)

わざわざ他のやつらと張り合ってスーツまでそろえて、その上ポケットに入ってるものをいつ渡せばいいかと迷ってるなんて、この世のどこにいるリボーンをしる人間が聞いてもうそだろうと言うだろう。

(イタリア男は伊達じゃねえってのにこんだけヘタレるたあ相当だな俺も)

愛してる、好きだなんて口が裂けても言えねえなこいつだけにはなんて思いながら、救急箱を取り出して手際よく手の甲と頬を手当してゆく。

そのうち耐えられなくなったのか、綱吉が口を開いた。

「リボーンさ、愛人って何人くらいいる?全員女?」

はあ?思わず妙な声が出てしまわないように声のトーンを落とす。綱吉の甘いテノールが室内に響いた。

「さあな、生きてるかも知らん。.....男はいねえな。んな趣味もないからな」

これは本当。綱吉以外だったら男なんてごめんだ。女の方が抱き心地がいいに決まってる。

「そ、だよね(そうに決まってるって分かってた、さ。だから言わなかったんだから)」

「まあ、お前なら別だけどな、」

「えっ(いいい今なんて!)」

しまった口が滑った。なんて、嘘だけれど。いまここで言わないと、これから先、ボンゴレとして結婚するときもあるだろう。心底、妻に惚れてしまわれては困る。と、いうか耐えられなかった。こんな時に年下というのは不便だなと今更思った。年上だからといって綱吉に余裕があるとは言えないけれど、年齢に頓着はしないだろう。

「別に、ああ、誕生日のプレゼント、まだやってなかったな、これ持ってろ。」

「え、あ、りがとう........」











「あれ、リボーン、これ.....」

誕生日からもう二ヶ月が過ぎた。あの日もらったプレゼントは、丁度右手の薬指にぴったりとはまるシルバーの上品なリングだった。

最初のうちはアクセサリーに縁のなかった綱吉にとっては違和感しかなかったこの指輪も、ずっとつけているうちになじんで、いまでは外していることもなくなった。それをリボーンはなんだかまぶしそうに目を細めて、いつも見る。何かはわからないけれど、嬉しいならそれでいい。この思いも日が経てばこのリングの存在みたいに、違和感なんてなくなって、消えてしまうんだから。

そう思っていた矢先、妙な空白のあるこの報告書。

「これ、なに、リボーン」

いつものように、向かいのソファにゆったりと腰掛けているリボーンに報告書を差し出す。

リボーンはやっぱり見もしないで、

「自分で考えろ、だめツナ」

と吐き捨てた。

ところどころ、文字と文字の間に、隙間、余白がある。それは、例えばabcと続くなら、a b cdeという風に、一文字だけ切り取られる。
ん。と、それを一文字一文字、集めてゆく。と、







「あ!」






「やっと気がついたかのろまめ」














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