ひこうき
みぞ西。
結婚直後
結婚直後
ひこうき
(みぞ西)
空を見上げたら、偶然飛んでいたその飛行機のカラーリングまではっきりと見えたから、今日はなんていい日なんだろうと思って嬉しくなった。
空は驚く程綺麗な透き通った碧色をしていて、降り注ぐ太陽の光も丁度よい暖かさだ。
「あ、飛行機ですね、智さん」
隣で買物袋を抱えたみぞれが、立ち止まって空を見上げていた僕に気がついて、同じように空を見上げながら言う。
「うん。・・・しっぽの色が空色だから、日本の飛行機じゃあないね。・・・フィンエアーでもないし・・・どこからきたんだろう?」
相変わらず空を見上げたままそういうと、みぞれもそのまま、
「う〜ん、どうでしょうね・・・あの色ならKLMみたいな気もしますね。」
2人して首を反らして空を仰ぎ見る。
飛行機はどんどん進んで行って、いつしか小さく小さくなってしまった。
それを見送ったあと、また歩き出す。
自然と空いている方の手が彼の手に絡めとられて、気がつけば手のひらが彼の温もりでほかほかしている。
言葉もなく、ただ地面を踏む足音だけが2人分、路地に響く。
ようやく2人の住処が見えて来た頃、ぽつりとみぞれが言った。
「・・・そういえば、僕が小さい頃って、智さんはよく海外に行っていましたよね?」
「そうだね、僕、海外に旅に出るの好きだったから。バイトを掛け持ちしてたのも、生活費の他に旅行資金が欲しかったからだったりしたから。」
出会った頃はまだ、彼は10歳で、よくそこかしこでお土産を買って来ては渡したものだった。
もちろん、彼だけでなく、灰音や、伊織、達也さんなど自分の近辺のお世話になってる人には必ずお土産を買って来ていたのだけれど、彼の喜び様がなんとも嬉しくって、ついつい彼にだけ特別にいいものを選んだりしたものだった。
出会った当初もそうだけれど、年齢も性別もわきまえずにいつの間にか彼を好きになってしまってからも出かけるのは変わりなかったが、気持ちに気がつくまでと、気持ちに気がついてからとでは、旅に出かける理由が違っていた気がする。
初めは単に、知らない土地、自分を知っている人が一人も居ない土地で、価値観の違いや習慣、空気の違いを知って、見聞を広めることが目的だった。
しかし、いつの間にかそれは逃げ道になっていて、片思いでいいと誓ったけれど、どうしても心のどこかで、もしもを期待してしまっている自分を孤独に追いやって、一人の世界に逃げ込むために出かけていたのだ。
誰とも関わりたくないとふいに思う事もあったから。
「今は・・・いかないんですね?」
みぞれが俯いて立ち止まり、困ったような、申し訳なさそうな顔をして言った。
「僕が居るから、ですか・・・?」
その顔を見て、笑顔で返した。
「もう、行く必要がないんだよ。だから、行かなくていいの」
彼が隣に居て、もっと言えば同じ場所に住んで暮らし、愛され、その証拠に僕の左手の薬指のは彼にもらったリングがはまっている。
叶わない恋に心臓を締め付けられるようにしながら自分を孤独に追いやって小さくなっていたあの自分に見た微かな期待はなにがどうなってか叶わないはずが叶ってしまった。
だから、一人になる必要は無い。
いまさら一人が耐えられるとも思えない。
「あ、でもね、みぞれとなら何処か行きたいなあって思うんだよ?・・・みぞれが隣でこうやって、今みたいに手を繋いで一緒に居てくれるなら何処だっていいんだけどね。」
笑いながら、でもいつか壊れてしまうんじゃないかと少しの恐怖とともにそれを知らぬ間に押しつぶす程の幸福が彼から絶え間なく流れてきて、その感覚に頭の奥がじんとしびれる気がする。
不意に目頭が熱くなって、泣きそうになるのを歯を食いしばって笑って耐える。
だというのに、それを見透かしたように、みぞれは僕を見て優しく笑った言った。
「ふふっ、愛してますよ、智さん。」
こらえきれずに涙があふれて、家の前だけれどみっともないから顔を隠すと、みぞれは笑顔をさらに深めて、僕の頭を優しく撫でた。
:
(みぞ西)
空を見上げたら、偶然飛んでいたその飛行機のカラーリングまではっきりと見えたから、今日はなんていい日なんだろうと思って嬉しくなった。
空は驚く程綺麗な透き通った碧色をしていて、降り注ぐ太陽の光も丁度よい暖かさだ。
「あ、飛行機ですね、智さん」
隣で買物袋を抱えたみぞれが、立ち止まって空を見上げていた僕に気がついて、同じように空を見上げながら言う。
「うん。・・・しっぽの色が空色だから、日本の飛行機じゃあないね。・・・フィンエアーでもないし・・・どこからきたんだろう?」
相変わらず空を見上げたままそういうと、みぞれもそのまま、
「う〜ん、どうでしょうね・・・あの色ならKLMみたいな気もしますね。」
2人して首を反らして空を仰ぎ見る。
飛行機はどんどん進んで行って、いつしか小さく小さくなってしまった。
それを見送ったあと、また歩き出す。
自然と空いている方の手が彼の手に絡めとられて、気がつけば手のひらが彼の温もりでほかほかしている。
言葉もなく、ただ地面を踏む足音だけが2人分、路地に響く。
ようやく2人の住処が見えて来た頃、ぽつりとみぞれが言った。
「・・・そういえば、僕が小さい頃って、智さんはよく海外に行っていましたよね?」
「そうだね、僕、海外に旅に出るの好きだったから。バイトを掛け持ちしてたのも、生活費の他に旅行資金が欲しかったからだったりしたから。」
出会った頃はまだ、彼は10歳で、よくそこかしこでお土産を買って来ては渡したものだった。
もちろん、彼だけでなく、灰音や、伊織、達也さんなど自分の近辺のお世話になってる人には必ずお土産を買って来ていたのだけれど、彼の喜び様がなんとも嬉しくって、ついつい彼にだけ特別にいいものを選んだりしたものだった。
出会った当初もそうだけれど、年齢も性別もわきまえずにいつの間にか彼を好きになってしまってからも出かけるのは変わりなかったが、気持ちに気がつくまでと、気持ちに気がついてからとでは、旅に出かける理由が違っていた気がする。
初めは単に、知らない土地、自分を知っている人が一人も居ない土地で、価値観の違いや習慣、空気の違いを知って、見聞を広めることが目的だった。
しかし、いつの間にかそれは逃げ道になっていて、片思いでいいと誓ったけれど、どうしても心のどこかで、もしもを期待してしまっている自分を孤独に追いやって、一人の世界に逃げ込むために出かけていたのだ。
誰とも関わりたくないとふいに思う事もあったから。
「今は・・・いかないんですね?」
みぞれが俯いて立ち止まり、困ったような、申し訳なさそうな顔をして言った。
「僕が居るから、ですか・・・?」
その顔を見て、笑顔で返した。
「もう、行く必要がないんだよ。だから、行かなくていいの」
彼が隣に居て、もっと言えば同じ場所に住んで暮らし、愛され、その証拠に僕の左手の薬指のは彼にもらったリングがはまっている。
叶わない恋に心臓を締め付けられるようにしながら自分を孤独に追いやって小さくなっていたあの自分に見た微かな期待はなにがどうなってか叶わないはずが叶ってしまった。
だから、一人になる必要は無い。
いまさら一人が耐えられるとも思えない。
「あ、でもね、みぞれとなら何処か行きたいなあって思うんだよ?・・・みぞれが隣でこうやって、今みたいに手を繋いで一緒に居てくれるなら何処だっていいんだけどね。」
笑いながら、でもいつか壊れてしまうんじゃないかと少しの恐怖とともにそれを知らぬ間に押しつぶす程の幸福が彼から絶え間なく流れてきて、その感覚に頭の奥がじんとしびれる気がする。
不意に目頭が熱くなって、泣きそうになるのを歯を食いしばって笑って耐える。
だというのに、それを見透かしたように、みぞれは僕を見て優しく笑った言った。
「ふふっ、愛してますよ、智さん。」
こらえきれずに涙があふれて、家の前だけれどみっともないから顔を隠すと、みぞれは笑顔をさらに深めて、僕の頭を優しく撫でた。
:
PR
西條事情
店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
メルフォは下にあります。
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
