かしわ
伊日。
「かしわ」って・・・鶏肉のことなんですけど、標準語ですよ、ね?
「かしわ」って・・・鶏肉のことなんですけど、標準語ですよ、ね?
かしわ
ここ数日、外に出るだけで吹き出てくる汗に辟易していたが、早くも秋が迫っているのか、早回しになった季節に首を傾げているところだ。
やがてくる盂蘭盆会に向けて、今はもう夏休みに入った子供たちが祭り気分でスーパーの仏果コーナーの前を通り過ぎて行くのを眺めて、目を細めた。
虫取り網に、いつもよりずいぶんと多い人出。肉のコーナーや酒のコーナーでは大人たちが宴会の準備でもしているのか、大量の食材と飲料を籠に乗せている。
活気溢れるこの場にいるのはなんだかこちらまで元気になる、といいたいところだが、人が多すぎるのはこの老体にはキツい。
「イタリアくん、すみませんが・・・・今日はもう簡単なもので済ませてしまっても問題ないですか?」
振り返ってそういうと、彼はにっこりと笑った。
「ヴァヴェーネ!」
微かに店内の注目を集めている彼がさらににっこり笑ったことと、声を放ったことで、後ろに見える若い女の子のグループの目の色が変わるのがわかって苦笑した。
籠を持たせているのだから、連れ合いだとは解るだろうが、その彼女たちの視線に嬉しいような、嬉しくないような・・・・。
切らしていた食材だけ彼の持つ籠へひょいと入れてすぐに会計に並ぶ。
もちろん、持参して来た竹の籠に入れ替えるので、ノーレジ袋である。
「ふふ、ねえ、日本の女の子って可愛いけど、ちょっと変だよね」
イタリアくんが、竹籠を持つのと反対の手で、何も持たない私の手を攫って行ってしまった。
往来でこんなことをするのは恥ずかしいと何度も言っているのに、彼はやっぱり彼のままで、そんなことを意に解してくれない。
しかし、自分もじつは悪い気はしていないのだ。
「貴方にとったら女の子は皆可愛いじゃないですか。それに、変ってなんです?」
素直に疑問を口にしたら、珍しく彼は苦笑いを返して来た。
「あのね・・・皆、俺の事見てから、日本のこと見るんだもん。俺じゃなくて、日本にすーーーーっごくうらやましそうな顔向けてるの、気付いてた?」
「あら?そうですか?皆さん貴方の事をしっかり見ていましたけどね」
「うん。まあ、ソレは気がついてるんだけどね~・・・・俺、その後の、日本のことを見る目がすっごく嫌いなんだ。」
思わぬ言葉に首を傾げる。
どうしてですか、と問うたら、彼は言った。値踏みをする目をしているのだと。
気がつかなかった。彼に対する憧れの眼差し、恋の眼差しに嫉妬するだけで精一杯で、自分がどんな風に見られていたのかなんて気がつかなかった。
そして、ハタ、と気がついた。
それはもしや、もしかしなくても、彼が自分を、自分と同じように見ていたということに成らないだろうか。
そう思ったら、いてもたっても居られないくらいに恥ずかしくてたまらなくなった。
恥ずかしいのだが、それ以上にとても嬉しい。じわじわと足の先から頭のてっぺんまでざざっとそれが巡った。
「これは・・・・・今日はかしわを買って帰らねば・・・。」
かしわ?と首を傾げる彼を横目に、早足で近所の肉屋へ飛び込んだ。
今日は唐揚げにしよう。
とびきり美味しい唐揚げにしよう。揚げ物でもしてこの茹で上がりそうな頭を冷やさなければ。
そう思いながら、店で一番いいかしわを購入したのだった。
ここ数日、外に出るだけで吹き出てくる汗に辟易していたが、早くも秋が迫っているのか、早回しになった季節に首を傾げているところだ。
やがてくる盂蘭盆会に向けて、今はもう夏休みに入った子供たちが祭り気分でスーパーの仏果コーナーの前を通り過ぎて行くのを眺めて、目を細めた。
虫取り網に、いつもよりずいぶんと多い人出。肉のコーナーや酒のコーナーでは大人たちが宴会の準備でもしているのか、大量の食材と飲料を籠に乗せている。
活気溢れるこの場にいるのはなんだかこちらまで元気になる、といいたいところだが、人が多すぎるのはこの老体にはキツい。
「イタリアくん、すみませんが・・・・今日はもう簡単なもので済ませてしまっても問題ないですか?」
振り返ってそういうと、彼はにっこりと笑った。
「ヴァヴェーネ!」
微かに店内の注目を集めている彼がさらににっこり笑ったことと、声を放ったことで、後ろに見える若い女の子のグループの目の色が変わるのがわかって苦笑した。
籠を持たせているのだから、連れ合いだとは解るだろうが、その彼女たちの視線に嬉しいような、嬉しくないような・・・・。
切らしていた食材だけ彼の持つ籠へひょいと入れてすぐに会計に並ぶ。
もちろん、持参して来た竹の籠に入れ替えるので、ノーレジ袋である。
「ふふ、ねえ、日本の女の子って可愛いけど、ちょっと変だよね」
イタリアくんが、竹籠を持つのと反対の手で、何も持たない私の手を攫って行ってしまった。
往来でこんなことをするのは恥ずかしいと何度も言っているのに、彼はやっぱり彼のままで、そんなことを意に解してくれない。
しかし、自分もじつは悪い気はしていないのだ。
「貴方にとったら女の子は皆可愛いじゃないですか。それに、変ってなんです?」
素直に疑問を口にしたら、珍しく彼は苦笑いを返して来た。
「あのね・・・皆、俺の事見てから、日本のこと見るんだもん。俺じゃなくて、日本にすーーーーっごくうらやましそうな顔向けてるの、気付いてた?」
「あら?そうですか?皆さん貴方の事をしっかり見ていましたけどね」
「うん。まあ、ソレは気がついてるんだけどね~・・・・俺、その後の、日本のことを見る目がすっごく嫌いなんだ。」
思わぬ言葉に首を傾げる。
どうしてですか、と問うたら、彼は言った。値踏みをする目をしているのだと。
気がつかなかった。彼に対する憧れの眼差し、恋の眼差しに嫉妬するだけで精一杯で、自分がどんな風に見られていたのかなんて気がつかなかった。
そして、ハタ、と気がついた。
それはもしや、もしかしなくても、彼が自分を、自分と同じように見ていたということに成らないだろうか。
そう思ったら、いてもたっても居られないくらいに恥ずかしくてたまらなくなった。
恥ずかしいのだが、それ以上にとても嬉しい。じわじわと足の先から頭のてっぺんまでざざっとそれが巡った。
「これは・・・・・今日はかしわを買って帰らねば・・・。」
かしわ?と首を傾げる彼を横目に、早足で近所の肉屋へ飛び込んだ。
今日は唐揚げにしよう。
とびきり美味しい唐揚げにしよう。揚げ物でもしてこの茹で上がりそうな頭を冷やさなければ。
そう思いながら、店で一番いいかしわを購入したのだった。
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西條事情
店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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