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再確認

伊日。
相変わらず日常
再確認















朝目覚めたら、隣に寝ていた筈の日本はもう居なくて、寝苦しい暑さと湿気にやられて真夜中、なんどか起きたからきっと寝かせておいてくれたのかもしれないなんて思いつつ、起き上がる。
薄い掛け布団がふわりと落ちて、心なしか汗で湿気っている気がする。
日本の夏の暑さは、自国のモノとは少し違って、何度経験しても暑い。それに、なんだか最近もっと暑くなっている気がする。
まだ活動する前だからか、真夜中に起きた時とはまったくちがって、涼しい風まで蚊帳の向こう、開け放たれた障子のその先から吹いてくる。
「ヴェ~・・・気持ちいい・・・・」
布団をぎゅっと団子状にして抱き枕代わりに抱いて目を閉じる。軒先に付けられた風鈴が涼しげな音を奏でているのが聞こえた。
「あら、イタリアくん、おはようございます。今丁度起こしに来たところですよ。」
風鈴の音に混じって、特徴的な、足をすってあるく音と、着物の裾をさばく音が聞こえてそのあとのこの声に、ぱっと目を開けると、そこには愛しい姿が見えた。
「おはよう!日本!今日も暑くなりそうだねえ」
朝食をいつもの通り、美味しく頂き、この暑さでへばってしまい気味だったこの体をいたわってか、ひんやりとして塩っけがあったりとか、すこしすっぱい味付けだとかでなんとも胃袋まで涼しくなってくれたところで、日本があ、そうです、と思い出したように頷いた。
「ヴェ、どうしたの?」
「あのですね、今日は花火大会があるんですよ。あと、来週には町内の夏祭りがあります」
この、祭り、という言葉は魔法の言葉で、一日居ても立っても居られないくらいにわくわくしてそわそわして仕方ない。
普段は洋服をきている彼らが、皆一斉に民族衣装であり、しかもとってもセクシーな浴衣を纏ってこぞって街を歩く姿はとても楽しい。自分の家のあるヴェネツィアもそういったイベントはあるけれど、今や観光客向けだったりして少しずつ変わってしまった。
しかし純粋に自分たちが楽しむためにその服を纏っているのはとってもいいものだと思うのだ。
「で、イタリアくんも浴衣、着ませんか?用意はしてあるんですけど・・・・」
返事はもちろんSiにきまっている。
「日本も着るの?」
「そうですねえ・・・私はまだ抵抗がありまして・・・・。浴衣、ですからねえ・・・下着と変わりないという感覚がまだ消えなくて」
そういうと、日本は苦笑して、さあさ、この話はここまでと話題を打ち切った。
「今日は少し早く夕飯を食べましょうね。夜店もありますから、お素麺にしましょう」

夏の日差しがすこし和らいで、しかしまだまだ太陽は沈まない。
傾き始めた陽が、縁側から開け放たれた障子を通り越して部屋を照らした。
小さな声でひぐらしが啼く。
風で揺らされて音を立てる風鈴の下、涼しげなガラスの器に盛られた素麺と、トマト、イカ、葉の物が緑色の不思議な液体の隣に並んでいる。
実に涼しげだとは思うのだが、この緑色の液体がきになってしかたない。
匂いをかいだら、なんだか懐かしい香りがした。
「ねえ日本?これ、なあに?」
水出しされた冷たいお茶が、カラフェから透明なグラスに注がれて行く。日本は手を止めることなく、ふっと笑った。
「ああ、それはね、特製イタリアン風味なおつゆです。トマトと愛想のものと一緒にお素麺をつけて召し上がってくださいな。美味しいといいんですけど」
そう言われて気がついた。これはバジルの香りに似ている。
日本はよくこういった料理を考えてはもてなしてくれる。日本料理は大好きだし、日本の洋食も中華も好きだ。けれど、確かに自国の料理が一番慣れ親しんでいる訳で、こういう気遣いがとても嬉しい物なのだった。しかしそこで思うのは、自分のところに彼が遊びに来た時はどうだろう。
そんなことに気がつきもしないで、あっちの美味しい店、こっちの新しく出来た店だのひっぱりまわしている。手料理を振る舞いもするが、もちろん日本料理は作れないし、日本が「今日は私が作ってもよろしいですか」と言い出す時はそういえば必ず日本料理だった気がする。
なんてことだ・・・・!と思いながら、白く細い麺を、自分でも上手くなったと褒めたくなる箸遣いで少量とると、緑色のつゆのなかにくぐらせて、吸った。
「!おいしい・・・・!」
濃いバジルの風味と味が絶妙で、瞬きを繰り返していたら、笑われてしまった。
「そうですか?ふふ、よかった。貴方のお口に合えばと思って作った物ですから。ま、ただの自己満足ですけど」
その言葉で、気がついた。
ああそうか、自分が気が回らないだけじゃない、これは彼の不安な心と、もてなしの心なのだと。
自分がいろんな店に連れて行くのは、彼を楽しませたいから。もてなしたいから。自分をもっと、知って欲しいから。
彼がどうにかしていつも自国を感じさせるような食べ物を考えてくれるのは、愛情と、不安と、もてなし。
「ヴェ・・・・・なんだ、そっか」
「?どうしたんです?」
「なんでもない!日本、愛してるって思っただけ!」
何十年も聞かされて来た言葉でも、未だに頬を染める彼が愛しいと心の底から思った。
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