静寂の闇
伊日。
(露様が悪役です。/史実系/流血)
(露様が悪役です。/史実系/流血)
静寂の闇
静寂が世界を包んだ。
何の音もしない。虫の音も、風の音も、身じろぎの音一つさへしなかった。
足下、錆びた匂いを放つその水たまりがひたりとこの靴に寄せた。
その向こう、倒れてぴくりとも動かないその人は、真っ白なその服を真っ赤に染めていた。
漆黒の髪は月明かりに輝き、バター色の膚は青白く、透けるように、そして薄く光を纏って見える。
その手に握られていた長刀から流れるように水たまりに使っている紫色の組紐の片端が切れて途絶えていた。
嬉しそうに笑ったり、頬を染めたり、怒ったり、いろんな感情を表していたその艶のある黒髪と同じ色の、塗珠の眸も、どこを見つめているのか開かれたまま、瞬きもしない。
「ねえ、どうして?」
じっと唖然として見つめていた眸が現実をとらえ始めた。目の前の靴を、そしてその人をひたと眸に映す。
この惨劇を起こした張本人であるのに、彼は顔を歪めて泣いていた。
「どうして・・・・日本くんは君じゃなきゃだめなの?僕じゃ、だめなの?どうして?なんで?」
それを聞かれて、答える事が出来るのは、いまここで倒れている彼だけだ。
人ではないが、これだけの出血ではこのまま生きて行けるかわからない。
きっとアメリカあたりが駆けつけてくるのだろうとは解っているが、この無力な足は、頭は、何も策を講じてはくれない。
「君は、日本くんに守られてるだけで、日本くんを守るどろころか裏切って、なのに、どうして日本くんは君を好きだっていうの?僕は日本くんが好きなのに、ね、どうしてなのかな?僕じゃ、だめなの?」
ぐったりと倒れて動けないままの日本の髪を掴んで、揺さぶる。
「や、やめてよ・・・・!」
この声が聞こえないのか、そのまま手を離すと、ごつんとイヤな音がした。
日本のその黒髪の上に、その人のべったりと赤いものがついた靴が乗る。
「やめて・・・・やめてよ!日本がしんじゃうよ!」
恐怖に馬鹿になった足を奮い立たせて、脚をつかむ。
「離せ・・・・日本くんに愛されてる君に触られたくない」
頬が急に火をつけたように熱くなった。次いで痛みが脳天を突く。
それでも、これ以上はと、恐怖にすくむ体を、精神を奮い立たせた。
「やめろって言ってるんだ!その汚い目で日本のことを見るな、日本に触るな、同じ空気を、吸うな・・・・・・!」
「・・・・・うるさいなあ・・・・・害虫は黙っててくれないかな」
「うるさいのはお前だ!」
間髪入れずに言い放ち、言うのと同時に、懐に入れていた愛銃をぶっ放した。
「痛い!」
見事に、狙った場所をそれは貫いた。
ぐったりとして動かない日本を抱き上げると、痛みに鑪を踏んだ隙に全力で走った。
走って走って、どれくらい走っただろうか、後からくる気配もなく、そっと日本の体をおろす。まだ、血は流れ出ているままだ。
「どうやったら、止まるの、これ・・・」
なおも溢れ出して止まらない日本の中の血液に、さらに青くなる顔色に嫌な予感しかしない。背筋をぞっと鳥肌が這う。
このまま、回復する事もなく、死に至ることもあるのだろうか。
国であるなら、そんなことはあり得ない。そう思いたい。
流れ落ちるその血は、彼を成す人、というなら、いま多くの命が失われている事に成る。
首もとから頬まで覆うケロイドも、その証だった。
「ごめんなさい・・・・ごめんね、ごめん。ねえ、お願い、もう戦わなくていいから、約束なんて忘れていいから、だから、目を覚ましてよ・・・・!」
勝とう、と言った。この窮地からみんなで脱出しようと、血路を開くと。
その最後の別れの日が、脳裏に蘇って焼き付く。
「お願いだから、消えないで・・・・・!」
ふわりと風が吹いたかと思った。
そうしてはっとして手元を見れば、日本は何処にも居なかった。
「神様・・・・・!」
闇は答えるように、白んで見えた。
静寂が世界を包んだ。
何の音もしない。虫の音も、風の音も、身じろぎの音一つさへしなかった。
足下、錆びた匂いを放つその水たまりがひたりとこの靴に寄せた。
その向こう、倒れてぴくりとも動かないその人は、真っ白なその服を真っ赤に染めていた。
漆黒の髪は月明かりに輝き、バター色の膚は青白く、透けるように、そして薄く光を纏って見える。
その手に握られていた長刀から流れるように水たまりに使っている紫色の組紐の片端が切れて途絶えていた。
嬉しそうに笑ったり、頬を染めたり、怒ったり、いろんな感情を表していたその艶のある黒髪と同じ色の、塗珠の眸も、どこを見つめているのか開かれたまま、瞬きもしない。
「ねえ、どうして?」
じっと唖然として見つめていた眸が現実をとらえ始めた。目の前の靴を、そしてその人をひたと眸に映す。
この惨劇を起こした張本人であるのに、彼は顔を歪めて泣いていた。
「どうして・・・・日本くんは君じゃなきゃだめなの?僕じゃ、だめなの?どうして?なんで?」
それを聞かれて、答える事が出来るのは、いまここで倒れている彼だけだ。
人ではないが、これだけの出血ではこのまま生きて行けるかわからない。
きっとアメリカあたりが駆けつけてくるのだろうとは解っているが、この無力な足は、頭は、何も策を講じてはくれない。
「君は、日本くんに守られてるだけで、日本くんを守るどろころか裏切って、なのに、どうして日本くんは君を好きだっていうの?僕は日本くんが好きなのに、ね、どうしてなのかな?僕じゃ、だめなの?」
ぐったりと倒れて動けないままの日本の髪を掴んで、揺さぶる。
「や、やめてよ・・・・!」
この声が聞こえないのか、そのまま手を離すと、ごつんとイヤな音がした。
日本のその黒髪の上に、その人のべったりと赤いものがついた靴が乗る。
「やめて・・・・やめてよ!日本がしんじゃうよ!」
恐怖に馬鹿になった足を奮い立たせて、脚をつかむ。
「離せ・・・・日本くんに愛されてる君に触られたくない」
頬が急に火をつけたように熱くなった。次いで痛みが脳天を突く。
それでも、これ以上はと、恐怖にすくむ体を、精神を奮い立たせた。
「やめろって言ってるんだ!その汚い目で日本のことを見るな、日本に触るな、同じ空気を、吸うな・・・・・・!」
「・・・・・うるさいなあ・・・・・害虫は黙っててくれないかな」
「うるさいのはお前だ!」
間髪入れずに言い放ち、言うのと同時に、懐に入れていた愛銃をぶっ放した。
「痛い!」
見事に、狙った場所をそれは貫いた。
ぐったりとして動かない日本を抱き上げると、痛みに鑪を踏んだ隙に全力で走った。
走って走って、どれくらい走っただろうか、後からくる気配もなく、そっと日本の体をおろす。まだ、血は流れ出ているままだ。
「どうやったら、止まるの、これ・・・」
なおも溢れ出して止まらない日本の中の血液に、さらに青くなる顔色に嫌な予感しかしない。背筋をぞっと鳥肌が這う。
このまま、回復する事もなく、死に至ることもあるのだろうか。
国であるなら、そんなことはあり得ない。そう思いたい。
流れ落ちるその血は、彼を成す人、というなら、いま多くの命が失われている事に成る。
首もとから頬まで覆うケロイドも、その証だった。
「ごめんなさい・・・・ごめんね、ごめん。ねえ、お願い、もう戦わなくていいから、約束なんて忘れていいから、だから、目を覚ましてよ・・・・!」
勝とう、と言った。この窮地からみんなで脱出しようと、血路を開くと。
その最後の別れの日が、脳裏に蘇って焼き付く。
「お願いだから、消えないで・・・・・!」
ふわりと風が吹いたかと思った。
そうしてはっとして手元を見れば、日本は何処にも居なかった。
「神様・・・・・!」
闇は答えるように、白んで見えた。
PR
西條事情
店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
メルフォは下にあります。
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
