贖罪
伊日
前回から繋がってますちょっと鬱?
贖罪
静かに、虫の音がさわさわと世界を包む。
暗く、灯りの無いこの部屋には、障子から透けて差す、月の光だけが青白くこの人の膚を輝かせている。
白い布団の上に横たわる彼の眸は今は長い睫に覆われて、美しい黒曜石の眸を見る事は叶わない。
そっと髪を撫でた。蚊帳が夜風がどこからか入り込んだのか、ふうわりと揺れた。
「日本、」
これで何十何回目か、毎年同じ痛みをその体に蘇らせ続ける彼は憔悴しきった様子で、今日、虫の知らせでここへ来た時も、畳の上、普段では滅多に見れないような姿で、倒れ込んで意識を失っていたのだ。
苦しくないよう、ふわふわと団扇であおいでやると、眉間に寄っていた皺がふと緩んだ気がした。
「ねえ、日本、これはどう?食べれそう?」
考えうるかぎりの食欲の出る物、食べやすいものを作って、机の上に並べて、すこしずつ勧めてみる。
動く事すら億劫なのか、だるそうにゆるゆると手を挙げては一口、また一口。
この調子で毎年くらしていたのだとしたら、去年より前はいったいどうやって生命を維持していたというのだろう。いくら国としての体だとは言っても食事をしなければ死には至らないにしても衰弱しきってしまう。
よわよわしい声で、「おいひいれす」っと笑ってみせた日本のその顔は、目の下に盛大に隈ができていた。どうしてそこまで自分を責めてフラッシュバックを繰り返すんだろう、とは思うがそんなことを聞く事は出来ない。
ただ、少しでもその心を和らげる事ができればと思うだけだ。
「本当に、いつもすみません。とっても・・・・助かっているんですよ・・・。」
「ううん・・・おれ、全然何も出来てないよ・・・。日本がこんな苦しい思いをしてるのに・・・・こんなことしかできない。」
「そんな・・・・私一人だった時は、いつも上司が式典の準備にくるまであんな感じでしたから・・・ぽちくんも、この時だけは近くにこないでしょう?」
そう言われてみれば、いつもずっと日本の隣に居る筈のぽちは、昨日から姿を見ない。
「ぽちは?どこかへ預けてるの?」
スプーンですくって日本の口の前へ持って行きながら聞くと、さっと青白い顔に頬をほんのり血色をよくして、口を開く。
「・・・・いいえ。どこか、裏庭にでもいるんでしょうかね」
「ふうん・・・・・それにしても静かだねえ・・・」
ぱくり、と遠慮がちに、スプーンに乗った食べよく味付けたリーゾ・イン・ビアンコを頬張る彼はとてもではないが、その昔悪魔のように言われていた姿を想像できない。
ちりんちりんと涼しげな音を立てて、風鈴が鳴る。
外の目映い夏の景色とは打って変わって薄ら暗い日本家屋がさらに涼しくさせてくれる。
くっきりと切り取ったような景色が目に眩しい。
「ねえ、日本、もうそんなに自分を責めなくても、いいんじゃない?」
いつまでもこの時期になると動けなくなるくらいになるのは、自分の犯した罪を責め続けているからだろう。
どうしようもなかった、と流す事すらできない彼は、自分を責めてせめて、そうすることで罪滅ぼしにしているのかもしれない。
最大の悪役を演じたのだから、そうなるのも仕方の無い事なのかもしれないが。
日本はじっと畳の目を数えるように、下を向いて答えない。
「・・・・どうして、泣くの」
けれど、その握りしめられたて手に透明な綺麗な涙が降ったのだ。
声も無く、肩を振るわせて彼は泣いた。
「あなたって、どうしてそんなに私に優しくしてくれるんでしょうかね」
震える声は、ぽつりとしかしはっきりとこの耳に届いた。
前回から繋がってますちょっと鬱?
贖罪
静かに、虫の音がさわさわと世界を包む。
暗く、灯りの無いこの部屋には、障子から透けて差す、月の光だけが青白くこの人の膚を輝かせている。
白い布団の上に横たわる彼の眸は今は長い睫に覆われて、美しい黒曜石の眸を見る事は叶わない。
そっと髪を撫でた。蚊帳が夜風がどこからか入り込んだのか、ふうわりと揺れた。
「日本、」
これで何十何回目か、毎年同じ痛みをその体に蘇らせ続ける彼は憔悴しきった様子で、今日、虫の知らせでここへ来た時も、畳の上、普段では滅多に見れないような姿で、倒れ込んで意識を失っていたのだ。
苦しくないよう、ふわふわと団扇であおいでやると、眉間に寄っていた皺がふと緩んだ気がした。
「ねえ、日本、これはどう?食べれそう?」
考えうるかぎりの食欲の出る物、食べやすいものを作って、机の上に並べて、すこしずつ勧めてみる。
動く事すら億劫なのか、だるそうにゆるゆると手を挙げては一口、また一口。
この調子で毎年くらしていたのだとしたら、去年より前はいったいどうやって生命を維持していたというのだろう。いくら国としての体だとは言っても食事をしなければ死には至らないにしても衰弱しきってしまう。
よわよわしい声で、「おいひいれす」っと笑ってみせた日本のその顔は、目の下に盛大に隈ができていた。どうしてそこまで自分を責めてフラッシュバックを繰り返すんだろう、とは思うがそんなことを聞く事は出来ない。
ただ、少しでもその心を和らげる事ができればと思うだけだ。
「本当に、いつもすみません。とっても・・・・助かっているんですよ・・・。」
「ううん・・・おれ、全然何も出来てないよ・・・。日本がこんな苦しい思いをしてるのに・・・・こんなことしかできない。」
「そんな・・・・私一人だった時は、いつも上司が式典の準備にくるまであんな感じでしたから・・・ぽちくんも、この時だけは近くにこないでしょう?」
そう言われてみれば、いつもずっと日本の隣に居る筈のぽちは、昨日から姿を見ない。
「ぽちは?どこかへ預けてるの?」
スプーンですくって日本の口の前へ持って行きながら聞くと、さっと青白い顔に頬をほんのり血色をよくして、口を開く。
「・・・・いいえ。どこか、裏庭にでもいるんでしょうかね」
「ふうん・・・・・それにしても静かだねえ・・・」
ぱくり、と遠慮がちに、スプーンに乗った食べよく味付けたリーゾ・イン・ビアンコを頬張る彼はとてもではないが、その昔悪魔のように言われていた姿を想像できない。
ちりんちりんと涼しげな音を立てて、風鈴が鳴る。
外の目映い夏の景色とは打って変わって薄ら暗い日本家屋がさらに涼しくさせてくれる。
くっきりと切り取ったような景色が目に眩しい。
「ねえ、日本、もうそんなに自分を責めなくても、いいんじゃない?」
いつまでもこの時期になると動けなくなるくらいになるのは、自分の犯した罪を責め続けているからだろう。
どうしようもなかった、と流す事すらできない彼は、自分を責めてせめて、そうすることで罪滅ぼしにしているのかもしれない。
最大の悪役を演じたのだから、そうなるのも仕方の無い事なのかもしれないが。
日本はじっと畳の目を数えるように、下を向いて答えない。
「・・・・どうして、泣くの」
けれど、その握りしめられたて手に透明な綺麗な涙が降ったのだ。
声も無く、肩を振るわせて彼は泣いた。
「あなたって、どうしてそんなに私に優しくしてくれるんでしょうかね」
震える声は、ぽつりとしかしはっきりとこの耳に届いた。
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リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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