夏初
伊日。
歴史表現あり。
短いです。これから伊日週間に入ります。
いろいろ光景を想像しながら読んでいただけたら幸い
歴史表現あり。
短いです。これから伊日週間に入ります。
いろいろ光景を想像しながら読んでいただけたら幸い
夏初
もう真夏のような日差しがこの身を照りつけていて、先の見えないこれからと過ぎ去って行ったいままでが脳裏を高速で過ぎて行く。
もうすぐ、あの日がやってくるのだ、あとひと月もすれば。
そう思うだけで、もうすでに、徐々に体は鉛を含んだように動かなくなる。
買物に出るのも億劫で、何を見てもあの時の事がフラッシュバックして手に負えない。
あの汗の出る暑い日、轟々と燃え上がる炎、鳴き声、叫び声、涙、太陽の光を反射して、異様な程美しい青々とした草たちがまとわりつくようにしてこの家からこの身からすべてを包むのだった。
「・・・・ぽちくん、」
しんとして何の動く気配すらない。
なにも与える事が出来なくて、やせ細って庭に倒れていたあの惨めな姿がまた目前に現れた。
ぐったりとして体も動かすのが億劫で、畳の目を数える。
「いち、にい、さん、し・・・・・」
けれど途中から、流れて止まらない涙で嗚咽が混じって、どこまで数えたか忘れてしまった。
失った命は数知れず。自分のこの身の事も、この身が傷つけた相手の事も。
消えたいと思っても、なんどもなんども誤った方向に転んでもこの命に終わりは来ない。
なんて残酷だろうと悲観に暮れてみてもどうしても終わらないのだから、そのうちくるであろう終わりに期待して怠惰にすごすしかないのだ。それなりに。
もうなにも見たくなくて、目を塞ぐ。意識を失ったら、次に目が覚めたときにはこの命が亡くなっていれば良いのにと思いながら、瞼の裏、暗い闇を迎えた。
遠くで、浮上しかけた意識のその遠くで、何かがかたりと音を立てた気がした。
今、ここはどこだろうか、今は何年何月の何日で何時何分だろうか、ぼうっとした狭間を漂う頭にはそれが解らない。
見覚えのある誰かが、こちらを覗き込んでいる。
「日本、日本、」
囁く声に、意識は少しずつ浮上する。
「フェリシアーノ、くん・・・?」
そうだこの声は聞き覚えがある。自分の発した声の思いのほか掠れているのに驚きながらも目をこすり体を起こそうとして、いつのまにか敷かれた布団の上に、布団を被って寝ていたという事にきがついた。視線を巡らせれば、彼は団扇で風を送ってくれている。
「うん。俺だよ。・・・・もう大丈夫だから、ね?」
落ち着くテノールが耳にしみ入る。
彼は去年もこうしてこの時期にやってきたのだった。
何も出来ないくらいに重い体を引きずって家事やらなにやらするのはしんどい、だから嬉しい事この上ないのだが、もし、彼があの時の事を負い目に思ってそうしてくれているのならば、すぐにでもお帰りいただく思いだ。
「・・・・大丈夫、俺がいるから、悪夢なんて見せないよ。だから、ゆっくり休んで。側に居るからね」
彼の形の良い指先が、額の髪を分けてそっと撫でてくれる。
再び睡魔が襲っても、先ほどのような悪夢を見ないだろうほど、心が凪いでいた。
風がすだれをおして揺らして、遠くで風鈴の音がちりん、とひとつ、鳴った。
もう真夏のような日差しがこの身を照りつけていて、先の見えないこれからと過ぎ去って行ったいままでが脳裏を高速で過ぎて行く。
もうすぐ、あの日がやってくるのだ、あとひと月もすれば。
そう思うだけで、もうすでに、徐々に体は鉛を含んだように動かなくなる。
買物に出るのも億劫で、何を見てもあの時の事がフラッシュバックして手に負えない。
あの汗の出る暑い日、轟々と燃え上がる炎、鳴き声、叫び声、涙、太陽の光を反射して、異様な程美しい青々とした草たちがまとわりつくようにしてこの家からこの身からすべてを包むのだった。
「・・・・ぽちくん、」
しんとして何の動く気配すらない。
なにも与える事が出来なくて、やせ細って庭に倒れていたあの惨めな姿がまた目前に現れた。
ぐったりとして体も動かすのが億劫で、畳の目を数える。
「いち、にい、さん、し・・・・・」
けれど途中から、流れて止まらない涙で嗚咽が混じって、どこまで数えたか忘れてしまった。
失った命は数知れず。自分のこの身の事も、この身が傷つけた相手の事も。
消えたいと思っても、なんどもなんども誤った方向に転んでもこの命に終わりは来ない。
なんて残酷だろうと悲観に暮れてみてもどうしても終わらないのだから、そのうちくるであろう終わりに期待して怠惰にすごすしかないのだ。それなりに。
もうなにも見たくなくて、目を塞ぐ。意識を失ったら、次に目が覚めたときにはこの命が亡くなっていれば良いのにと思いながら、瞼の裏、暗い闇を迎えた。
遠くで、浮上しかけた意識のその遠くで、何かがかたりと音を立てた気がした。
今、ここはどこだろうか、今は何年何月の何日で何時何分だろうか、ぼうっとした狭間を漂う頭にはそれが解らない。
見覚えのある誰かが、こちらを覗き込んでいる。
「日本、日本、」
囁く声に、意識は少しずつ浮上する。
「フェリシアーノ、くん・・・?」
そうだこの声は聞き覚えがある。自分の発した声の思いのほか掠れているのに驚きながらも目をこすり体を起こそうとして、いつのまにか敷かれた布団の上に、布団を被って寝ていたという事にきがついた。視線を巡らせれば、彼は団扇で風を送ってくれている。
「うん。俺だよ。・・・・もう大丈夫だから、ね?」
落ち着くテノールが耳にしみ入る。
彼は去年もこうしてこの時期にやってきたのだった。
何も出来ないくらいに重い体を引きずって家事やらなにやらするのはしんどい、だから嬉しい事この上ないのだが、もし、彼があの時の事を負い目に思ってそうしてくれているのならば、すぐにでもお帰りいただく思いだ。
「・・・・大丈夫、俺がいるから、悪夢なんて見せないよ。だから、ゆっくり休んで。側に居るからね」
彼の形の良い指先が、額の髪を分けてそっと撫でてくれる。
再び睡魔が襲っても、先ほどのような悪夢を見ないだろうほど、心が凪いでいた。
風がすだれをおして揺らして、遠くで風鈴の音がちりん、とひとつ、鳴った。
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リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
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