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奥さんシリーズ^^
歴史は好きですが、その当時の生活までは深く知りません。
参考は硫黄島から〜とウィキ先生です。















最終の汽車ももうとうの昔に行ってしまった。
誰もいない、虫の声すらしない道の真ん中は静かな風の音が時折するだけで、真夏の汗ばむ体を少しだけ冷やしてくれる。
遠く向こう、ちかちかとついたり消えたりを繰り返す街灯の灯りに照らされて、ほの暗く見える彼のその顔は、ぎゅっと胸を締め付けた。
2人の間に言葉はなく、ただじっと、体が火照るのも気がつかない振りをしたままで身を寄せ合っていた。
別れたくない、ずっと一緒に居たいと、彼は泣いて、いつもあの燦々と降り注ぐ太陽のような笑顔を作り出す顔をくしゃくしゃにして嗚咽を隠す事無く言った。
しかし、どうにもならないことは、私たちはとうの昔に知っていたのだ。
この、戦争が激化する中で、異人としてひどい扱いを受けた事もある彼が、国の収容施設に行かなければならないことも、それによって自分の命が助かるのだということも。
それでもずっと一緒に居たのは、離れるくらいなら死んだ方がいいとさへ思っていたからだった。

「なあ、菊ちゃん・・・」
いやに彼は何か考えるそぶりをしていたと思ったら、重々しく彼は口を開いた。
仕事をすることができなくなった彼と自分の食い扶持をなんとかするために何もかも一切合切必要な物だけを残して売っぱらってしまったこの家に、2人ではすこし広い。
薄暗い、空襲対策として、敵国に見つからないようにと傘を大きくかけて殆ど無い灯りを付けた部屋で、その灯りの下、無いも同じのわびしい夕食を終えたところだった。
「はい、なんでしょうか・・・?」
声が震えてしまったのも、きっと彼は気がついていたに違いない。ふっと、笑うのがわかった。
「あんな、俺・・・収容所に行こう思うんよ。」
息を呑んだ。
「駄目です!そんなところ・・・絶対戻って来れないにきまっています!あんな・・・あんな・・・!」
数日前、憲兵から彼を隠した罪でめった打ちにされたことが脳裏に浮かんで消えた。
もう、ここに目をつけられていることなんて、知っている。殴られるのも、これで何度目かだった。
それだけでも、かれが収容所に行ったなら、どうなるのかなんて分かりきった事だった。
「せやけどさ、もう菊ちゃんが殴られるんも、殴られて抵抗できひんくて悲鳴あげとる菊ちゃんの声聞こえてるんに何にもできひんの、いやなんや・・・」
彼のその歪んだ笑顔が痛い。
「そ・・・そんなの・・・・貴方が気にする事じゃ、」
「好きやから!好きやから好きな人が自分の所為でぼろぼろになるんは耐えられへんよ・・・!」
遮るように言うと、かれはちゃぶ台に置いていた拳をさらに固く握った。
「嫌です、離れたくありません・・・!どうしてですか?貴方は何もしていないじゃないですか!それなのにあんな鬼の住処に行く事なんてないんです!」
彼は、そこまで聞いて、何も言わずに出て行った。
必死で後を追って、彼が、もうどうしたって決意を覆すことなどないのだと自らその足で今向かっているのだと知った。決して、彼だって楽しくてしていることでは無いのだと、それで知る事が出来たのだ。
彼はゆっくりと、後ろから、ついて来ているのを知っていてわざと歩調を合わせていた。
夜も更けて、こんな月の出ている日に、憲兵が見回っていないのが不思議な程で、だれもそこには居なかった。昼間、徴兵されて行く男たちを見送る女や子供たちが列をなす、汽車の線路に沿って歩いて行く。
月明かりが、星灯りが可笑しいくらいに綺麗だった。
何時間も歩いて、下駄の鼻緒が刷れて足が痛い。けれど、なにも履かずに出かけた彼の方がもっと足が痛いに違いなかった。
「菊ちゃん、菊、」
呼ばれて、はっと視線を落とせば、彼が、月明かりの下、遠くの街灯で仄暗い中で、こちらを振り返っていた。
収容所のある場所まで、目前だった。
「アントーニョさん・・・・」
もう、この名前を呼ぶ事も出来なくなるのだろうか、そして、こんなにも優しい音で、この名前を呼ぶ人も、居なくなるのか。
彼の熱い手が頬を覆い、太い親指が唇をなぞる。
彼の緑色の美しい眸が視界一杯に広がったのを見て、目を閉じた。
熱く、記憶させるような深い口づけに酔いしれる。歯列をなぞり、舌が吸い上げられ、追われて絡まる。
「ふ、」
唇が離れて、銀色の糸がすっと消えた。
「愛しとるよ、菊。ずっと。」
彼は笑って言ったつもりだろうが、その大きな眸からは綺麗な涙が後から後から流れていた。
「絶対帰ってくるで、待っとってな?帰って来たら、また一緒に暮らそな、俺の故郷で暮らしてもええなあ・・・菊も気に入ると思うわ」
その約束が、果たせないことだというのは、互いに知っているのだ。
心に楔を打って、2人が離れないように、それだけの言葉だ。
けれど、私は溢れる涙もそのままに、大きく頷いて、笑った。


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珍しくあとがきなんぞ
ちょっと、これ実は脳内ではMADで完成してまして、その時は戦時な設定じゃないものだったので変だったらすみません^^
また気がついたときに修正と加筆かけたいと思います!
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