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淫らな大人と夜這い少年2

ロマ日
夜這い少年の続きです。
淫らな大人と夜這い少年2


















夜這い、というのはもうこの現代には存在しないと思っていた。
小説家を営む上で、自分の専門分野の江戸文化の研究は不可欠だ。だから、かつての夜這いについて思い当たり、自宅の日の当らない広い書庫に没頭していた。
月の明るいよるは夜這いの夜。男どもがこぞって想いを重ねる女のもとへと通うのだ。
いまでこそそんなふうに書かれているが、実際はそんなロマンチックでなかったに違いないが、夜這い、という言葉の響きには、暗い空の下、灯りの少ない部屋の中で淫らな様子が思い浮かんで、どうやらとても艶めいていた。
最近、夜更けに近所の中学生が忍び込んでくる。
少しつり上がったような目元に、暗い中ではよくわからないが、彫りが深い顔立ち。行灯の灯りでも分かる程に、その中学生は美しかった。
初めから彼の言う好きだなどという絵空事は信用していなかったし、なんど言われてもよくある何かの賭け事で負けたバツゲームに、近所の独り身の男に掘られてこいとか、好きだと言って騙してやれ、とかそういう類いの話にしか思えなかったのだ。
しかし、何がどうしてしまったのか、自分の一時の気の迷いとも思ったのだが、存外彼との関係は続いている。
「・・・・なにやってんですかね・・・・若い子を捕まえて・・・」
ふう、とため息をついて、本を閉じる。壁にかけた時計は、丁度正午をさしている。
気がついたら、お腹も減っていた。
「しかたありませんね・・・・材料を買いに行きますか・・・いや、今日は外食にしましょう」
作る気分ではなかったのだ。
ついでに、この前注文しておいた資料が届いている筈だから、それも回収して、そのあと夕食の買物もいって帰れば良いではないか。
そうと決まれば話は早い。早速着物から外出用の洋服に着替えると、家を出た。
まだ夏はこないというのに、日差しは結構な強さで、頭の上にのしかかってくる。
アスファルトからの照り返しに目をつぶされそうだ。
「おい、本田ー!」
呼ばれて振り返ると、何人かの中学生の中から、見知った顔がこちらに小さく手を挙げていた。
「ああ、ロヴィーノくん・・・・」
彼は周りに何かを言って手を挙げて、こちらに駆けて来た。
その姿は、あまりにも自分のいる世界とかけ離れていて、まるで自分の書いている小説の中に自分が取り込まれたかのようだ。
「よう、今からどっか出かけるのか?」
「・・・・ええ、ロヴィーノくんは・・・今日はお早いんですね」
ああ、と生返事を返しながら、彼はつ、と鞄をもつ右手の薬指を指でたどる。
「どこに・・・?」
まだ中学生のくせに、こんな技、一体何処で覚えて来たのだろう。せっかく、買物へ行く事で気分転換をはかろうと思っていたのに、またもやいけない大人の自分がもどってくる。
だいたい、この年齢差では自分は明らかに犯罪者じゃないか。それが、相手から言いよって来ていたとしても。
それに、どうしてこんなたかだかまだ子供の彼にドキドキしなければならないのだ。
「昼食を摂って、そのあと買物して帰るんです。ご学友がお待ちですけど?」
先ほど手を挙げていた子供たちは、まだ不思議そうにこちらを伺っている。
「ああ?・・・・お前らさっさと帰れ!・・・・フェリシアーノ、じいちゃんに今日は泊まりだから帰らねえって言っとけ!」
「わかったよ、兄ちゃんー!」
大きく手を振ってぴょんぴょん飛んでいるのが、おそらくかれの弟なのだろう。遠くであまりよく見えないが、可愛いに違いない。
「・・・・弟さんですか?可愛いですね」
率直に言っただけなのだが、一瞬にして今まで一度も見た事の無いむっすりとした顔に成ったので、驚いた。
「というか、今日は泊まるんですか?聞いてませんけど」
「今言った。・・・今日は、知り合いにいいもの貰ったから」
その、知り合いに良い物貰ったから、というときの表情があまりにも淫らに見えて、今日の夜が恐ろしくなった。

中学生に行けない事をするどころら、いけないことをされる淫らな大人、そんな自分にため息をついた。
今日は原稿も進まないし、頼んでいた資料を受け取りに行く事もできないだろう。
間違っても、自分の描く時代小説のあの資料を見たなら、明くる日には自分でそれを実践する事に成る事間違いなしだ。
ああ、また出かけなければならないのかと、ため息をついたけれど、見上げてくる熱い視線に、目を細めてキスを返した。

不意打ちで真っ赤になればいい。
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