キッチンのトマトと豚バラ
西日。
なんともないです、すみません。いつも通りの日常編。
なんともないです、すみません。いつも通りの日常編。
キッチンのトマトと豚バラ
庭にも植えてあるというのに、また、買ってしまった。
小さなプラスチック容器に入ったそれは、世話も簡単で、しかも室内やベランダで作れるというのがうりで、水をカップ容器に入れて、中の鉢を居れれば、給水綿が水を吸い取って育てている植物がすくすく育つ、という物だ。
毎日水やりをしなくても、少し様子を見て、水が減ったらまた容器に足せばいい。
ちょっとした買物に出かけたついでに寄った雑貨屋で見かけてついつい手に取ってしまったそれは、パッケージに大きくTOMATOと書かれていた。
「ふふ、何でですかね・・・・トマトって書いてあるとついつい買ってしまうんですよね・・」
野菜を作るのも、庭の花を手入れするのも苦にならないから、とくにそんな便利ツールを使う必要もないというのに。
しかし、何となく、トマトの文字と、トマトの写真を見ると、彼を思い出してしまうのだ。
買わなければならない気分にさへなる。
「この子はお台所で育てますかね」
ぶら下げた袋の中を覗いて、にんまりと笑った。
「え、何んなん、これ?」
久々にやって来た彼は、案の定、大量の真っ赤なトマトと共にやってきた。
時差ぼけでふらふらな筈だと思うのだが、夕食を作るから、すこし休んでいてくれと言ったら、手伝うから、と台所までついてきた。
「ああ、それですか?最近、うちでの流行なんです。簡単な手入れで家庭菜園ができる、という代物でして。」
冷蔵庫の中を覗いたら、丁度トマトと和えて炒めたら美味しいだろう、豚バラ肉があった。
新鮮で味も濃く、妙な臭みが無い彼の家のトマトは、どんな料理にも合うのだが、やはり肉と合わせるのが最高に美味しい。
「あ、うん、そうやなくて・・・・」
彼の腑に落ちない、という声に、思わず振り返る。
スペインさんは、しげしげと小さな菜園を見つめて、こちらに背を向けたままだ。
「はい。どうしました?」
「・・・・トマト、やんな。これ。」
その後、その雑貨屋に行く度に、何故か売れた様子の無いそのトマトのそれを購入してしまった所為で、もう5つもずらりと並んでしまっている。しかし、どれも本当にたくましく、にょっきりと芽を出し、間引きもしたものの、青々とした葉を茂らせて、先日は黄色い小さな花が咲いていた。
「はい。・・・どうしても、トマトを見ると手が伸びてしまって。」
くるりと振り返って、緑色の目をまんまるにしているスペインさんに言うと、彼は本当に嬉しそうに笑った。
「せやけどさ、日本は裏の畑もあるやん。」
「ああ、まあそうなんですが・・・」
なんとなく、貴方を思い出すので、とは口が裂けても言えないから、口を噤む。
それにこれは、何となくそれが分かっているときに言うのだと、知っている。
彼は時々、こういう風にして、言わせようとする節があるのだ。
「うん?」
それでもって、大概それをかわすのは難しい。
スペインさんの、熱い、大きな手が、豚バラ肉を持った右手に重なった。
するり、と感覚を確かめるようにしてぎゅっと握ると、すごく嬉しそうにしている。
「・・・・・ちょっと。すみません。」
「ん?」
じっとみたトマトの先に、何かがちらっと見えた。
今にも近づきそうだったスペインさんの体を押しのけて、並んだトマトたちの、一番始めにこの家にやってきた鉢をみる。
「ああああああ!ああ、ちょっと、スペインさん!トマトが!実をつけてます!」
「ええっほんまにっ?!」
小さな小さな実が、ちょこん、と、まだ青いが確かに成っていた。
「私も子供っぽいなって思うんですけど、トマトを見ると貴方を思い出すものですから、売れ残ってしまったらイヤだなって・・・買い占めてしまうんですよね・・・。ふふ、可笑しいですね。でも、実がなってよかったです。ちょっと食べるのが勿体ないですね」
「・・・・よかったやん、お前、日本にこんなにかわいがってもろて。大きいなって、日本の力になったりや!」
スペインさんはそういって、まだ小さく青いトマトに向かって、投げキスをして、ゆっくりと体を密着させた。
その日の夕飯は、トマトと豚バラの炒め物と、ご飯と、みそ汁、を予定していたのに、結局何も食べる事が出来なかった。
冷蔵庫から出しっ放しになってしまった肉が、腐らなかったのはまだ気温がさほど高くなっていない時期だったからに違いない。
こんどからは絶対に流されないと胸にしっかりと注意書きを載せた。
庭にも植えてあるというのに、また、買ってしまった。
小さなプラスチック容器に入ったそれは、世話も簡単で、しかも室内やベランダで作れるというのがうりで、水をカップ容器に入れて、中の鉢を居れれば、給水綿が水を吸い取って育てている植物がすくすく育つ、という物だ。
毎日水やりをしなくても、少し様子を見て、水が減ったらまた容器に足せばいい。
ちょっとした買物に出かけたついでに寄った雑貨屋で見かけてついつい手に取ってしまったそれは、パッケージに大きくTOMATOと書かれていた。
「ふふ、何でですかね・・・・トマトって書いてあるとついつい買ってしまうんですよね・・」
野菜を作るのも、庭の花を手入れするのも苦にならないから、とくにそんな便利ツールを使う必要もないというのに。
しかし、何となく、トマトの文字と、トマトの写真を見ると、彼を思い出してしまうのだ。
買わなければならない気分にさへなる。
「この子はお台所で育てますかね」
ぶら下げた袋の中を覗いて、にんまりと笑った。
「え、何んなん、これ?」
久々にやって来た彼は、案の定、大量の真っ赤なトマトと共にやってきた。
時差ぼけでふらふらな筈だと思うのだが、夕食を作るから、すこし休んでいてくれと言ったら、手伝うから、と台所までついてきた。
「ああ、それですか?最近、うちでの流行なんです。簡単な手入れで家庭菜園ができる、という代物でして。」
冷蔵庫の中を覗いたら、丁度トマトと和えて炒めたら美味しいだろう、豚バラ肉があった。
新鮮で味も濃く、妙な臭みが無い彼の家のトマトは、どんな料理にも合うのだが、やはり肉と合わせるのが最高に美味しい。
「あ、うん、そうやなくて・・・・」
彼の腑に落ちない、という声に、思わず振り返る。
スペインさんは、しげしげと小さな菜園を見つめて、こちらに背を向けたままだ。
「はい。どうしました?」
「・・・・トマト、やんな。これ。」
その後、その雑貨屋に行く度に、何故か売れた様子の無いそのトマトのそれを購入してしまった所為で、もう5つもずらりと並んでしまっている。しかし、どれも本当にたくましく、にょっきりと芽を出し、間引きもしたものの、青々とした葉を茂らせて、先日は黄色い小さな花が咲いていた。
「はい。・・・どうしても、トマトを見ると手が伸びてしまって。」
くるりと振り返って、緑色の目をまんまるにしているスペインさんに言うと、彼は本当に嬉しそうに笑った。
「せやけどさ、日本は裏の畑もあるやん。」
「ああ、まあそうなんですが・・・」
なんとなく、貴方を思い出すので、とは口が裂けても言えないから、口を噤む。
それにこれは、何となくそれが分かっているときに言うのだと、知っている。
彼は時々、こういう風にして、言わせようとする節があるのだ。
「うん?」
それでもって、大概それをかわすのは難しい。
スペインさんの、熱い、大きな手が、豚バラ肉を持った右手に重なった。
するり、と感覚を確かめるようにしてぎゅっと握ると、すごく嬉しそうにしている。
「・・・・・ちょっと。すみません。」
「ん?」
じっとみたトマトの先に、何かがちらっと見えた。
今にも近づきそうだったスペインさんの体を押しのけて、並んだトマトたちの、一番始めにこの家にやってきた鉢をみる。
「ああああああ!ああ、ちょっと、スペインさん!トマトが!実をつけてます!」
「ええっほんまにっ?!」
小さな小さな実が、ちょこん、と、まだ青いが確かに成っていた。
「私も子供っぽいなって思うんですけど、トマトを見ると貴方を思い出すものですから、売れ残ってしまったらイヤだなって・・・買い占めてしまうんですよね・・・。ふふ、可笑しいですね。でも、実がなってよかったです。ちょっと食べるのが勿体ないですね」
「・・・・よかったやん、お前、日本にこんなにかわいがってもろて。大きいなって、日本の力になったりや!」
スペインさんはそういって、まだ小さく青いトマトに向かって、投げキスをして、ゆっくりと体を密着させた。
その日の夕飯は、トマトと豚バラの炒め物と、ご飯と、みそ汁、を予定していたのに、結局何も食べる事が出来なかった。
冷蔵庫から出しっ放しになってしまった肉が、腐らなかったのはまだ気温がさほど高くなっていない時期だったからに違いない。
こんどからは絶対に流されないと胸にしっかりと注意書きを載せた。
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リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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