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教えてよ

仏日。
すんげーどうでもいい感じの日常風景です。
この前見聞録でパリやってたのを見て。
教えてよ










この国では、いつだって、もてはやされるのは異文化だ。
きれいなブロンドの髪よりも、神秘的な漆黒の髪。青や緑の眸より、底の無い沼のような黒い目。今、そのあこがれの対象の、黒目黒髪の彼のころころと鈴の音のような笑い声が、晴れ渡った空の下、青々と茂った庭木の先に広がっている。
隣を歩く、黒髪の小柄な彼はとても嬉しそうだ。
カメラのシャッターを何度もしきりにきっている。
「楽しい?」
覗き込んで言うと、日本は本当に嬉しそうににっこりと、いつも感情が読み取れないと言われている人間とは思えないくらいにはっきりと喜びを表せてみせた。
「はい!」
「ふ~ん・・・そんなに面白いかな。お兄さんにはさっぱりだよ」
本当に、何がそんなに面白いのかわからないのだった。
パリの、官庁街の一角にある、この美術館は、かの有名なロダンの住んでいた館をミュゼとした由緒正しい建物だし、庭も手入れが行き届いて綺麗だ。
彼の残した作品なんかもある。
静かで、悠々とした時を纏っているというのに、場違いなこの人は、
「だって、この、考える人。面白いじゃないですか・・・なんでこんな、庭の真ん中にっ」
目の端っこに涙までためて腹を抱えているものだから、なんだかだんだん自分まで可笑しくなってきた。
「そう?うーん、まあ言われてみれば面白いかもね」
庭の真ん中で、全裸で考え事を必死でしているイギリスなんかを想像したら、吹き出してしまいそうだ。
「あ、そうだ、あのねえ、日本。最近さ日本のベントー流行ってるんだけどさ、それを出す店、発見したんだ。食べにいかない?」
この国で日本の文化が流行るのは、さして最近でもない。古くはゴッホなんかも日本に憧れていたし、浮世絵なんてものすごい人気を博していた。今でいうなら、漫画やジャパニメーションみたいなものから、サブカルチャーではない、正統派の日本文化を好ましくおもうものも居る。
なんとなくだけれど、間を大切にする日本だから、例えば皿に少しの料理を盛りつけて、まっさらな皿の空きスペースをお洒落に思える自分と気が合うのではないか。
「あら、そうなんですか?キャラ弁を個人でやってらっしゃる方は最近見かけましたけどね。・・・ついにお店ですか。」
「んー、ま、専門店って訳じゃないんだけどさ。最近、こっちも食事時間を削らないとって風潮でさ。早い美味いを売りにした店で、ベントーがあるらしいんだよね」
このご時世、こちらでの生活の醍醐味である、食事はゆっくり時間をかけて、と言ってられない状況だ。削れるものは削らなければならない。しかし、まあ、日本人と比べれば屁でもないかもしれないが。日本人は昼休憩も短ければ、その後残業もあたりまえだ。
「ははあ、じゃあ、お手並み拝見、ですね。・・・・・しかし、日本食とうたいながら、殆ど料理人もオーナーも外国人。悲しいですね〜・・・これで味も確かなら言う事がないんですけど」
「だから、最近はちゃんと整備したって〜」
ミュゼを後にして、地下鉄に乗るのはこんなにも天気がいいから勿体ない。だから、歩いて向かう。狭い路地にびっしりと駐車された車と、行き交う人の間を縫って、歩く。
はぐれないように手を繋いだら、抵抗されると思ったのに存外日本は素直に応じてくれたから、百戦錬磨の自分としては疑問符が浮く位に、どきどきしてしまった。

「美味しい?」
オフィスから昼食にきたのだろう人たちに混じって、その人気のベントーを箸を使って食べながら、隣に座った日本に訊いた。
すると、我慢していたのか、大きくため息をついて、少しだけあきれた声でこう言った。
「あのねえ、こんなすかすかにするんだったら、器をもっと小さくしてくださいよ。弁当というのは、底が見えてはいけないんです。日本でこの値段でこの内容なんて、どこぞの詐欺おせちと同じじゃないですか。・・・・まだまだ修行が足りませんね。ベントーと名付けるからには、一度日本の本当の弁当を学びにきてから作っていただきたいです。」
日本人の食に対するこだわりは、この一言で十分だった。
これは、多分、もっときちんと自分を理解して欲しいということの現れだと取っていい筈だ。
伊達に日本とともにギャルゲーエロゲー乙女ゲーを乗り越えて来ていない。
「・・・勉強、しに行ってもいい?」
箸を握っていない右手で、 日本の左手を掴んで言う。
日本は、言葉にして返事はしなかったけれど、耳を赤くして、ひとつ、頷いた。
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