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雪雲

伊日。
私の中のCP曲王、笹川さんのお唄から。
雪雲
























遠く遠くの方に雪雲が見える。
もう春も間近に迫っていると思っていたのに、やはり空気が冷えて、大地を震え上がらせていた。
おおきなどんよりとした雪雲は、風に吹かれて、きっとすぐにこちらへやってくるのだろう。
一体どんな雪を降らせてくれるのだろうか、粉雪、牡丹雪。どんな降り方でもいい。
この大地に降り積もる雪が、まるで自身の胸に徐々に大きくなるあの人への愛しさに似ていて、頬に熱がともる。
重く深く積もれば積もる程、なお良いと思える。
真っ白なその雪に、そっと足を踏み入れて、自分の足跡をつける。
そうして、頭の中で、こんな風にあの人の心の中にも足跡を残して行ければいいのにと願うのだ。

「日本?」
じっと空をみて、日本はさっきからはたとして動かなくなってしまった。
「日本、にほんてばあ」
何度呼びかけても、電池の切れたおもちゃみたいに、微動だにしない。
すこし怖くなって、置かれていた手に手を合わせると、大げさすぎるぐらいに体を揺らせて目をまんまるに見張ってこちらを振り返った。
「・・・・イタリアくん・・・」
声も少しかすれてしまっている。
一瞬の事だけれど、彼の中から自分の存在が消えてしまっていた事を深く知ってしまい、悲しくなった。
日本が見上げていた空は、薄暗い雲がどんどん大きくなって行って、青かった空が、色を失いかけている。
木々に降り注いでいた太陽の光もだんだんと薄くなり、影が濃くなった。
「ねえ、どうしたの?」
また、空を見上げようとしていた日本の意識を捕まえようと、声をかける。
緩慢な仕草で、彼はこちらへと向き直ると、
「雪雲、を見ていました。どんな雪が・・・降るのかと」とふわふわした声で言った。
「ふうん・・・・。」
ぼんやりと、同じように空を見上げると、
雪雲はどんどんどんどん大きくなって、もう、すぐにでも降り出してしまいそうだ。
ふわりふわりと風に舞う白い花のような雪を思って、口角が上がった。
きっと、となりで先ほどからしきりに空を眺めている恋人も、そんな気分なのかもしれない。とても感慨深いのだ。握った手は温かく、ほっとする。
縁側の冷え始めた空気には似合わないくらいで、まるでここだけ日が陰っていないようにも思える。思いは、積もる。
「・・・昔の人が、こんな風に歌ったことがあります。『筑波嶺の、みねより落つる、みなの川。恋ぞつもりて淵となりぬ』恋とははじめは互いに好きかどうかなんて、分からないじゃないですか。友としての好き、同盟国としての好き。でも、つもり積もると、こんなにも愛しくなってしまった・・・。いろんなことがありましたけど、こうして降り積もった感情が今になっていると、そうであれば、もっと降り積もって欲しい。そう実感していたところです。・・・爺の戯言です。」

空からは、もうはらはらと白い雪が姿を見せ始めていた。
嬉しくて、心臓の裏側がぎゅっとなって、「俺も、日本をもっともっと好きになりたい」と言ったら、日本はふっと笑って、
「・・・・お願いします、」と顔を伏せた。
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