記憶に纏る愛の詩
伊日。
fromYtoYを聞いてて、もうそうしたもの。
あとがきに設定などを書いています。
fromYtoYを聞いてて、もうそうしたもの。
あとがきに設定などを書いています。
記憶に纏わる愛の詩
「・・・・・では、」
そう言って、菊は扉を閉めて、2人が過ごしたこの光溢れていた筈の部屋から出て行った。
どうしてか、足が動かなくて、追う事はできなかった。追ってはいけないと、思ったのかもしれない。そうじゃないかも知れない。心の中では行かないで、そばに居てと叫んでいるのに、おかしなことにちっとも声はでてこなかった。
がらんとして、彼が出て行ったこの部屋は、ワンルームだというのにとても広く感じる。一秒一分が、菊が居ないとこんなに長い。こんなに長いなら、一体どうやって一日を過ごしたらいいんだろう。何をしても、何を見ても、何を食べても、色は無く、音も無く、味も無く、とても空虚だ。一日だって努力して過ごすのに、一週間、一ヶ月、一年、こんなんじゃとてもじゃないけれど過ぎてはくれない。
ふとして菊の名残を見つけては、胸が大きくきしんだ。
そしてこの部屋ですごした2人の幸せな時間が繰り返し頭の中で流れる。はじめてこの部屋へ来た時。2人で家具を買いに行って、あーでもないこーでもないといいながら、一番しっくりくるかたちを発見して、その日の夜には初めて体を繋いだ。まだベッドしかない部屋の窓から降る注ぐ月明かりに照らされたその体は夢と疑う程美しかった。そうして溶け合ったというのに、翌朝起きたら菊は照れて顔をみせてくれなかったのだった。
美味しいご飯を作って帰りをまっていてくれた時もあった。大切な日なのに一緒に居る事が出来なくて、泣かせた事もあった。こんなにも、思い出すたび愛しさが募る。
時間は無情にも止まる事無く過ぎてゆく。忘れたくないこの2人の出来事も知らないうちに少しずつ色あせて行く。まして君の体に残る自分の記憶なんて、すぐに流れ出て消えてしまうんだろう。
ああまだ自分は彼を愛しているのに。きっと彼もそうだとまだ信じていたい。
彼のさよならといったその眸は水に浮かぶガラスのように揺れていたから。
菊が去って行った扉を見つめた。
「おい、フェリシアーノ、仕事の時間だ。行くぜ」
「・・・分かってるよ、兄ちゃん・・・」
手にした愛銃を撫でる。あの日から、何度この世界を呪ったか知れない。
幸せを願う事すら赦されないこの世界に生きるしかないこの身を呪う。
数えきれないくらいの命を奪ってきた自分には彼に触れることも、隣で笑っていたことも、幸せになりたいと願った事も、生きようとした事も、すべて罪だったのだろうか。その罰がこの孤独だというなら、もうずっとこの孤独がなくならなくてもいいから、彼の記憶の中ではずっと笑顔の、彼の理想であった自分でいたかった。
「さあ、始めようか、fratello。Cominci in carnevale!!」
唸る銃声、叫び声、鉄の匂い。この世界こそが自分の世界で、あの、温かで笑顔に満ちた部屋は、今はもう夢の話だった。
「フェリシアーノ!危ない!」
はっとして振り返る。銃口の間近に、人の気配。
ああ、いけない。避けられない、そう思って、目を瞑る瞬間、目の前に愛しい人の姿が見えた。
「あ、すみません」
立ち寄った本屋で、手に取ろうとした本に指をかけた瞬間、上からも同じようにその本に指をかけようとして失敗して、こちらに手に重ねられた。
驚いて振りかえって言うと、彼はまじまじとこちらを見た。
この国ではなんども遭遇した、奇異の視線だ。この国の人たちは興味を隠してこそこそするなんてことはしない。とても自分の興味に正直だ。
そして、かれのその目も、とても正直だった。
「わあ、Asiatici?Cinese?Giapponese?」
一目にしてぱあっと顔を明るくして、話しかけてくる。普段ならぎょっとしてたじろぐところだが、こちらも見とれてしまって、ぎゅっと目を見張ってしまった。
「あ、・・・ああ。日本人です。」
答えると、彼は
「そうだと思った!日本人って、小さくてとっても可愛いよね!」
「はあ、どうも・・・。」
彼はとても人懐っこく、初対面だというのに、気取らずに話しかけてきてこちらまでついつい素が出てしまうのだった。
自分はもうずいぶん長い間、友達という物を持っていなかった。
一緒に出かけて、大いに笑って、彼が隣にいるようになってからこんな自分にも明るい未来が見える気がした。しかし、一方で彼に自分の秘密を話す事が出来ない自分に嫌悪感は募るばかりでいつしか、彼にも秘密があると気がついた。
体を初めて繋いだ晩の幸せに満ちた、愛されるという事を初めて知ったその後に、彼の生業が何なのかというのを知ったときの衝撃と言ったら、心臓を掴み揺さぶられているようで、涙も出ないくらいに悲しかった。
それでも、自分の秘密を言わずに彼とともに何も無かったようにすごしたのは、何者でもない、「本田菊」としての幸せを掴めるかもしれないと僅かな希望に大きな物を期待していたのだろう。結局は卑怯な自分の小手先の魔術だったのだ。
「・・・・それで?お前はのうのうとこんなところで仕事の合間にシケコんでいたということアルか?」
今、2人だけの隠れがだった筈のこの絶対の領域に、侵入してきた黒い悪魔は、さも汚い物でも見るようにこちらに視線をよこした。
殴られた頬が熱い。
「・・・だったらどうなんですか?私が何処で何をしていようと、仕事さへこなせばいいと言ったのは貴方ではないですか。」
「その仕事がおろそかになっているアル。お前の仕事はただ殺せばいいという物ではないアル。懐柔して情報を聞き出す事も役目じゃないアルか?」
一丁前にも仕事を選ぶなんて・・・・とそういってかれは鼻で笑った。
「その体は誰に抱かれようと、我のものアル。・・・とにかく。そうそうにここでの生活を辞めないと、お前、大変な事になるヨ。お前を追っているのは我だけじゃない、ブラギンスキもお前を追っているアル。」
誰に抱かれようと、とその言葉に一瞬にして背筋が凍った。
「・・・出て行ってください。」
「・・・・・その声、その目アル。腐抜けた面よりよっぽど見がいがあるネ。・・・明日、夜12時。いいアルな」
言葉を投げ捨てて踵を返すその黒い悪魔は、音も立てずに消えた。
「く・・・・っ」
涙は出なかった。ただ、彼を傷つけるだろうと思うとひどく気が重い。しかし、彼の命のためには消えるしか無かった。
「さようなら、なんて言ったらきっと行かないでよって言って泣くんでしょうね」
愛が冷めた訳でもないのに、この胸はまだ彼の事でいっぱいなのに、彼のもとを去らなければ成らないのが引き裂かれるように辛い。
「でも、きっと私の事なんてすぐに忘れてくれますよ・・・ね」
それでもいい。
私が彼を覚えているのだから。
「さようなら、フェリシアーノくん。未来永劫、貴方を愛しています。」
__________________________________
加筆修正の可能性大w
えーっと、これは前から書こうと思っていた話で、いちから書くと私の苦手な長編になりそうな予感だったので書きたいところだけかきました。
設定は、ヴァルファスファミリーのボスのフェリシアーノと、王ファミリーの秘蔵の暗殺者であり諜報部として育てられるという本田家の末裔で有能な暗殺者。
本屋さんで出会い、惹かれ合い、一緒に暮らしていましたが、フェリも菊も自分の本業の事を隠しているため、すれ違いなどもありましたが、仲良くしてました。
が、王にバレてしまい、王によるとブラギンスキも菊を狙っているという話。ブラギンスキは手段を選ばないので有名で、菊はフェリシアーノがマフィアだと知っていたのでなおさらフェリシアーノが危ないということで家を出ます。
分かれた2人は・・・・というのが書きたかったんです。上記はさらっと書いちゃいましたが。ねっとり詳しくやりたかった。
「・・・・・では、」
そう言って、菊は扉を閉めて、2人が過ごしたこの光溢れていた筈の部屋から出て行った。
どうしてか、足が動かなくて、追う事はできなかった。追ってはいけないと、思ったのかもしれない。そうじゃないかも知れない。心の中では行かないで、そばに居てと叫んでいるのに、おかしなことにちっとも声はでてこなかった。
がらんとして、彼が出て行ったこの部屋は、ワンルームだというのにとても広く感じる。一秒一分が、菊が居ないとこんなに長い。こんなに長いなら、一体どうやって一日を過ごしたらいいんだろう。何をしても、何を見ても、何を食べても、色は無く、音も無く、味も無く、とても空虚だ。一日だって努力して過ごすのに、一週間、一ヶ月、一年、こんなんじゃとてもじゃないけれど過ぎてはくれない。
ふとして菊の名残を見つけては、胸が大きくきしんだ。
そしてこの部屋ですごした2人の幸せな時間が繰り返し頭の中で流れる。はじめてこの部屋へ来た時。2人で家具を買いに行って、あーでもないこーでもないといいながら、一番しっくりくるかたちを発見して、その日の夜には初めて体を繋いだ。まだベッドしかない部屋の窓から降る注ぐ月明かりに照らされたその体は夢と疑う程美しかった。そうして溶け合ったというのに、翌朝起きたら菊は照れて顔をみせてくれなかったのだった。
美味しいご飯を作って帰りをまっていてくれた時もあった。大切な日なのに一緒に居る事が出来なくて、泣かせた事もあった。こんなにも、思い出すたび愛しさが募る。
時間は無情にも止まる事無く過ぎてゆく。忘れたくないこの2人の出来事も知らないうちに少しずつ色あせて行く。まして君の体に残る自分の記憶なんて、すぐに流れ出て消えてしまうんだろう。
ああまだ自分は彼を愛しているのに。きっと彼もそうだとまだ信じていたい。
彼のさよならといったその眸は水に浮かぶガラスのように揺れていたから。
菊が去って行った扉を見つめた。
「おい、フェリシアーノ、仕事の時間だ。行くぜ」
「・・・分かってるよ、兄ちゃん・・・」
手にした愛銃を撫でる。あの日から、何度この世界を呪ったか知れない。
幸せを願う事すら赦されないこの世界に生きるしかないこの身を呪う。
数えきれないくらいの命を奪ってきた自分には彼に触れることも、隣で笑っていたことも、幸せになりたいと願った事も、生きようとした事も、すべて罪だったのだろうか。その罰がこの孤独だというなら、もうずっとこの孤独がなくならなくてもいいから、彼の記憶の中ではずっと笑顔の、彼の理想であった自分でいたかった。
「さあ、始めようか、fratello。Cominci in carnevale!!」
唸る銃声、叫び声、鉄の匂い。この世界こそが自分の世界で、あの、温かで笑顔に満ちた部屋は、今はもう夢の話だった。
「フェリシアーノ!危ない!」
はっとして振り返る。銃口の間近に、人の気配。
ああ、いけない。避けられない、そう思って、目を瞑る瞬間、目の前に愛しい人の姿が見えた。
「あ、すみません」
立ち寄った本屋で、手に取ろうとした本に指をかけた瞬間、上からも同じようにその本に指をかけようとして失敗して、こちらに手に重ねられた。
驚いて振りかえって言うと、彼はまじまじとこちらを見た。
この国ではなんども遭遇した、奇異の視線だ。この国の人たちは興味を隠してこそこそするなんてことはしない。とても自分の興味に正直だ。
そして、かれのその目も、とても正直だった。
「わあ、Asiatici?Cinese?Giapponese?」
一目にしてぱあっと顔を明るくして、話しかけてくる。普段ならぎょっとしてたじろぐところだが、こちらも見とれてしまって、ぎゅっと目を見張ってしまった。
「あ、・・・ああ。日本人です。」
答えると、彼は
「そうだと思った!日本人って、小さくてとっても可愛いよね!」
「はあ、どうも・・・。」
彼はとても人懐っこく、初対面だというのに、気取らずに話しかけてきてこちらまでついつい素が出てしまうのだった。
自分はもうずいぶん長い間、友達という物を持っていなかった。
一緒に出かけて、大いに笑って、彼が隣にいるようになってからこんな自分にも明るい未来が見える気がした。しかし、一方で彼に自分の秘密を話す事が出来ない自分に嫌悪感は募るばかりでいつしか、彼にも秘密があると気がついた。
体を初めて繋いだ晩の幸せに満ちた、愛されるという事を初めて知ったその後に、彼の生業が何なのかというのを知ったときの衝撃と言ったら、心臓を掴み揺さぶられているようで、涙も出ないくらいに悲しかった。
それでも、自分の秘密を言わずに彼とともに何も無かったようにすごしたのは、何者でもない、「本田菊」としての幸せを掴めるかもしれないと僅かな希望に大きな物を期待していたのだろう。結局は卑怯な自分の小手先の魔術だったのだ。
「・・・・それで?お前はのうのうとこんなところで仕事の合間にシケコんでいたということアルか?」
今、2人だけの隠れがだった筈のこの絶対の領域に、侵入してきた黒い悪魔は、さも汚い物でも見るようにこちらに視線をよこした。
殴られた頬が熱い。
「・・・だったらどうなんですか?私が何処で何をしていようと、仕事さへこなせばいいと言ったのは貴方ではないですか。」
「その仕事がおろそかになっているアル。お前の仕事はただ殺せばいいという物ではないアル。懐柔して情報を聞き出す事も役目じゃないアルか?」
一丁前にも仕事を選ぶなんて・・・・とそういってかれは鼻で笑った。
「その体は誰に抱かれようと、我のものアル。・・・とにかく。そうそうにここでの生活を辞めないと、お前、大変な事になるヨ。お前を追っているのは我だけじゃない、ブラギンスキもお前を追っているアル。」
誰に抱かれようと、とその言葉に一瞬にして背筋が凍った。
「・・・出て行ってください。」
「・・・・・その声、その目アル。腐抜けた面よりよっぽど見がいがあるネ。・・・明日、夜12時。いいアルな」
言葉を投げ捨てて踵を返すその黒い悪魔は、音も立てずに消えた。
「く・・・・っ」
涙は出なかった。ただ、彼を傷つけるだろうと思うとひどく気が重い。しかし、彼の命のためには消えるしか無かった。
「さようなら、なんて言ったらきっと行かないでよって言って泣くんでしょうね」
愛が冷めた訳でもないのに、この胸はまだ彼の事でいっぱいなのに、彼のもとを去らなければ成らないのが引き裂かれるように辛い。
「でも、きっと私の事なんてすぐに忘れてくれますよ・・・ね」
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が、王にバレてしまい、王によるとブラギンスキも菊を狙っているという話。ブラギンスキは手段を選ばないので有名で、菊はフェリシアーノがマフィアだと知っていたのでなおさらフェリシアーノが危ないということで家を出ます。
分かれた2人は・・・・というのが書きたかったんです。上記はさらっと書いちゃいましたが。ねっとり詳しくやりたかった。
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西條事情
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