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本当は怖くない愛とロマンス

伊日。
タイトル文字ってすんません。

下の話ですんません。最初と最後のテンションが違い過ぎる件。
本当は怖くない愛とロマンス















「イタリアくん、起きてください」
朝、起きてまずするのが顔を洗う事。その後着物を着替えて、整えた後、使い慣れたキッチンで彼と自分の朝食を作る。
ここがイタリアで無ければ、いつもの光景だが、ここはイタリア、そしてヴェネツィアである。自宅と違って、時間ごとに教会の鐘が鳴る。冷蔵庫の扉を開けて、中を確認したところで時刻を告げる鐘がなった。
冷たい水を手にして、しゃきっとしたあと、前日に買った野菜をゆでる。
こんなところまできて日本食ばかりもなんなので、今日は自称洋食な朝ご飯をつくろうか、と思案する。冷蔵庫には確か卵があったし、パンは昨日の夜の物が残っているからオリーブオイルをつけてトーストすればいいだろう。野菜は生だと体を冷やすから、茹でて温野菜サラダにしよう。食べ残しのヨーグルトがあるから、ついでにソースを作ってしまおう。岩塩を混ぜて少しの酸味と塩味のあるソースが出来そうだ。
ふと窓から外をみたら、驚く位空は青く、はっとした。
もうひと月は自国の土を踏んでいないのだ。仕事は遠く離れていてもできるもので、パソコンと携帯電話さへ持っていれば問題ないので、彼も仕事に行っている時間、家事を済ませて仕事をしている状況だが、自国のことを思って少しだけ、ホームシックになってしまった。心臓の奥の方がクッと引かれたみたいだ。
卵をボウルに割って、カラカラと持参した菜箸で混ぜて、塩胡椒、醤油を少し。温めたフライパンにオリーブオイルを贅沢に引いて、じゅわじゅわと言わせて卵を流し入れた。
ふんわりオムレツが出来たら、それを彼が選んだらしいセンスのいい白い朝食皿に盛りつける。茹で上がった野菜は彩りが良いように、花形に人参を切ってみたが、これもできばえは上々だ。
ソースも美味しくできたから、あとは昨日の残りのパンをオイルをつけて焼くだけだ。
そしたら、イタリアくんを起こしてあげよう、と思い、パンを切ってオイルをたらし、塩をふりかけて焼いて、その間にお茶の用意をする。
「まあ、こんなもんですかね」
この一ヶ月、毎日ほぼこんな調子で夫婦ごっこをしているのだが、ちっとも違和感がないのがいけない。
「イタリアくーん、朝ですよー」
言いながら、さっき自分が寝ていた寝室へと行くと、扉側に顔を向けて眠っているのが見えた。自分が寝ていたのは扉側だったので、何故かドキっとしてしまった。
「イタリアくん?」
近くに寄って、寝乱れた髪をすいてやる。ふにょふにょしていた表情は、へにょっと笑ってどこか幸せそうである。
「イタリアくーん」
「ん・・・・」ようやくうっすらと茶色の眸が見えて、長い睫が瞬く。
「ヴェ・・・おはよ、日本・・・俺のアモーレ」
そんなことをさらっと言わないでください、心の中で叫ぶ。今、自分の顔が見えるのなら多分耳まで真っ赤であろう。いつまでたっても、何回言われても、慣れないのだ。愛の言葉というのは。
「ぐ、ご飯・・・できてますよ。今日はオムレツと、温野菜サラダ、あと昨日の残りのパンのオリーブオイルトーストと、私のおすすめ、ほうじ茶ラテです」
「ヴェ、美味しそうだねえ・・・・日本、ねえ、ちょっとここ来て」
「その手には乗りません!」
ここに来て、と言って、はいはいと乗ってはいけないのだ。そうしたなら何処をどうやったのか、いつの間にかベッドで彼に抱きしめられているという不思議な状況に陥ること間違いなしだし、それでなければ熱い口づけをされて息も絶え絶え、という状況に陥るのだ。
「ヴェ〜〜!何で、何でぇ〜〜!」
そんな可愛い顔してもいけません。その下は全裸なんですから。ええ、自分が朝起きた時全裸だったのは棚に上げておきますけれども。

美味しいね、とありがとうございます、を繰り返して食事を終えて、今度は自分の任務に取りかかる。
別に今日何がある、と言う訳ではないのだが、もうすぐ彼の誕生日が迫っているのである。なんとかして、欲しいものを聞き出してプレゼントするためにはどこかへ出かけなければ始まらない。
町中で、彼がいいなあ〜これ、格好いいよね!と言ったなら、それをプレゼントして驚かせたい、というところなのだ。彼はいつも、何が欲しいかと尋ねると、日本食、とか一緒に居て欲しい、とかそういうことを望むのだ。しかし、あいにくと彼は今日は、出かける予定と成っていた。仕方が無いので、もうすぐ時間だというのにのんびりしている彼を追い立てて、自分も準備をしてローマに旅立つ。日帰りではかなり厳しいのだが、行き先地の彼に言うと、二つ返事で(おそらくマのつく職業の方の力なのだろうと推測できるので少し怖いのだが)プライベート便を貸してくれた。
「こんにちは、ロマーノさん。すみませんでした、私の誕生日の件でご迷惑を」
会って早々謝ると、彼はバツが悪そうに頭をかいて、そっぽを向いてしまった。
「別に。お前の所為じゃねーだろ。・・・・で、今日はあいつの誕生日だろ」
「まあ、そうなんですけど。貴方の欲しい物も選んでくださいな。貴方だって、誕生日じゃないですか、ね?」
照れて顔が真っ赤なのに、とっても澄ました様子を繕うから、可愛くて笑ってしまった。
そうするとますます照れて怒るので、なんだか孫を前にしているみたいで嬉しくなってしまった。
「・・・で、これがこの前あいつが欲しいって言ってたモンだ」
しかし、彼の指差すそれに、言葉が出ない。
「こ・・・・これは・・・・その、あれですよね、私の家の会社の商品では・・・」
その、黒地に赤のボーダーや赤地に白や銀のボーダーの、不思議な、しかし知っている者にとってはそれしか想像できないような形状の物は、非常に外見はお洒落である。
「いやいやいやいやいや・・・これは無理です。絶対無理です。」
というか、私がいるのに必要なんですかねこれと思わないでも無いが、自分と彼は年齢が違うので仕方が無い。普通の人間でいうなら20歳の彼と、年齢不詳の爺とはそういう面での出来も違う訳だ。あまりにも呆然としていたのに気がついたのか、ロマーノくんはむっとしながら言う。
「何でだよ。あいつが欲しいって言ってたのは間違いねえぞ。俺と一緒に来てたんだからな。日本が居ないと出来ないから、コレ買おうかなあって言ってたぞ。・・・って何言わせてんだチギー!」
「うぉおおお恥ずかしい、フタエノキワミ!うう、しかし益荒男、武士、侍、日本男児。私に二言はありません。すみませーーーんコレください贈り物用です!」
2人してテンパってその店を出たのだが、店員さんは非常にいい人で、何も言わず、にっこりと傍目では分からないような、やたらとお洒落に包装してくれたので、紙袋を持っていてもこんなエロスをぶら下げているというのに誰も白い目で見たりはしなかった。
「で、ロマーノくんは何が欲しいんですか?も、もうあの店には二度と行きませんのでああいうの以外でお願いしたいです!」
「あったりまえだろうが畜生!・・・・俺は別に何も欲しいものなんて・・・」
「まあ、そうおっしゃると思っていました。・・・と、いうことで、これを差し上げます。」
鞄の中に入れていた、日本で買ってきておいたものだ。
シブい色の紙袋で縦長なのだが、日本の贔屓にしている店で購入した、ネクタイだった。
「いいのか?あいつはまだ貰ってねえんだろ?」
「はい。いいんです。一応、貴方に似合うかなあと思ってじっくり選んだんですから、今度の会議の時にはぜひ着ていらしてくださいな」
そこそこに楽しんだ後、見送りにきてくれた彼に手を振りながら、帰路についた。
ヴェネツィアは何時来ても素敵な街だ。今日は殊にそう思った。
夕焼け空の下、石畳を歩いていると、ここ数週間の内に顔見知りに成ったカフェのカメリエーレが手をふって、こっちに来いと言っている。
足早に向かうと、窓際の席でコーヒーを飲んでいる彼の姿があった。
「ciao!ヴラーヴァ!こんばんは。彼、来てますよ!・・・今日は少しご機嫌斜めかな?」
この人はいつまでたっても女性と間違えたままだ。もしかするとわざと直さないのかも知れないが。
「そうなんですか?おや、どうしたんでしょうか・・・」
「そんなの、決まってますよ、シニョーラ。帰ったときに、貴方が居なかったのが気に入らないって言ってましたからね。すごい荒れようでね。人殺しみたいな顔してましたからね。」
ええ、そんな馬鹿な、と思いつつ窓の向こうの席を見たら、丁度こちらを振り返ったところで、ばっちりと目が合ってしまった。
がたん!と向こうにいるのに椅子を倒したのが音まで聞こえるくらいで、あらっと思ったら腕を掴まれていた。
「菊!どこ行ってたの?!」
何がなんだか分からず、カメリエーレを見上げると、肩を上げて首を傾げてみせただけで、さっさと店に帰ってしまった。
こちらもぐいぐいと腕を引っ張られて、足早に待ちを通り過ぎる。家の中に入って後ろ手に鍵を閉める彼の様子がどことなく恐ろしい。
そのまま、寝室まで追い立てられて、窓際、下の方には暮れだした空と黒く光る海が見える。
「ちょっと、どうしたんです?イタリ・・・・フェリシアーノくん。何をそんなに慌てて・・・」
「どこ行ってたのって聞いてるの!」
ものすごい剣幕だ。今までこんなことってあっただろうか。しかし、本当に、先ほどのカメリエーレの言う通り、言わなければ犯されてしまいそうな雰囲気で、こわごわとあきれた事に震えている声で言った。
「ろ、ローマに行ってました・・・ロマーノくんに買物をつき合っていただいて・・・」
「じゃあ、どうしてあんな店に入ったの?兄ちゃんと、そういう・・・関係なの?昨日、俺の事愛してるって言ってくれてたのに・・・・嘘だったの?」
「ローマに居たのを知っているんですか?」
確かに会議はローマであると言っていた。このひと月は会議関係の外に出る仕事は全て彼が出る事になってしまったので、会議があれば開催地まで飛ばなくてはならない。幸い、欧州ばかりだから、彼はいつもすぐに帰ってきていた。
「ああ、そ、それじゃああの店に入ったのも見てたんですか?」
「・・・・・あそこ、アダルトショップだよね。ねえ、日本答えてよ。兄ちゃんとも、そういう関係なの?」
これは、あれを見せるしか打開方法はないようだと脳が告げている。
本当は、彼の誕生日分かれる寸前にコレを渡そうと思っていたのだが、致し方あるまいと思いつつ、ため息をついた。
「違います。断じて。・・・・は、仕方ありません。ロマーノくんには後でこんなことになった責任を取ってもらうとして。コレを貴方に。買いに行っていました。」
あのお洒落な例の紙袋をずい、とかれの胸に押し付ける。
不振層にこちらを見た後、恐る恐るその紙袋からそれを取り出し、包装を解いた。
「・・・・・・・ヴェ?これ・・・」
目が点とはこのことである。彼はさっきまでの人を殺せそうな、犯せそうな顔を一転させて、いつもの顔に戻っているし、しかも目が点になっている。
「う、あ、あの・・・・ロマーノくんに貴方が欲しいと言っていたものを買いたいと言ったら、前にコレを欲しいと言っていたと・・・それで」
「それで、菊が、コレを?兄ちゃんと?俺のために?」
「ああ、もう!」
真っ赤なのは承知しているがこんなことになるならまともに彼自身に問うて料理なりなんなりすれば良かったではないか。しかし、こんどは泣き笑いになってひいひい言いながらフェリシアーノくんが笑っているし、まあいいか、と窓から外を横目で眺めた。
「なんだ、そうなんだあ・・・ねえ、これ日本の家のやつでしょ?・・・どうやって使うか、手本を見せてよ・・・」


「え」

ああ、綺麗な夕焼けはもう既に沈んで空は真っ黒。綺麗な星空が見える。海は店の灯りを反射して下にも空があるみたいだ。
そんな綺麗な夜なのに、と思いながらも、獣の目をした彼に、欲がじわりと滲み出た。
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