かみさまのおと
伊日。
有心論モチーフです。
微妙な死にネタ・・・かも知れません。
有心論モチーフです。
微妙な死にネタ・・・かも知れません。
かみさまのおと
いままでついた嘘と、真実ならどちらが多いんだろう。きっと、嘘の方が多いんじゃないかと思う。
自分の中の嫌いなところの方が、好きなところよりもはるかに多いのと同じように。
暗い、心臓の辺りにあるという、心の底に潜ってはもがき、引っ掻いては傷を抉りまた血を流す。
流れる血の色を確認して、安堵するのだ。
窓の外、どんより曇った空みたいにこの心も暗く停滞している。
泣き出しそうな空の下、暖かい部屋の中、空気がのそのそと動く気配しか無い部屋の中、密着する体から伝わる心音に耳を傾ける。じわりと溢れ出そうとしてとどまる涙が鼻をツンとさせた。
「フェリシアーノくん、大丈夫ですよ。」
頭を預けていた上の方からあたたかい手が降りてきて、優しく頭を撫でて、髪を梳いてくれる。
ソファーの上、甘えて膝枕をして欲しいと言ったら、恥ずかしそうにしながらも、いいですよと言ってくれた。
出会ってからずっと、菊に自分の格好良いところなんて見せることが出来ただろうか。思い当たるところなんてないからきっと無い。それでもずっと一緒に居て愛を注いでくれる本田菊という存在は、自分にとってすべてであり、存在自体が
愛であり、いつしかこの世界の神様となった。
だから、菊がいないと生きていけない。
息も出来ない。なにも出来ない。
浮き沈みの激しい心の波に飲み込まれそうになる。
それを知ってか知らずが、呼ばなくても驚くほどのタイミングの良さで菊はここに来てくれるのだ。
「菊、ねえ、どうして俺の傍にいてくれるの?」
ゆっくりゆっくり髪を撫でる手を止めず、しかし一瞬彼は息を呑んだ。
「…どうしてでしょうか…あなたと私が似ているからかも知れません。あなたが私が求められることで自分の存在意義を確認する事ができる卑しい人間だと知っていようがいまいが、あなたの存在が私を赦してくれる…あなたは誰かに愛されることで許される。ね、私たちって、お互いがお互いのために生まれてきたみたいじゃないですか?」
小首を傾げて、顎に手をやる仕草はとても幼い。
「それって、俺を愛してるってこと?」
「……まぁ、平たく言うと。」
何を言わせるんです。…ああ、恥ずかしい。そう言い、また菊は髪を梳き始めた。
「でも俺、菊が泣いてると悲しいし、菊が笑うと幸せで、うれしいよ…。でも、俺、菊になにもできてない。」
遠回りの愛の言葉を聞いて、さらに疑うようなことを言う。しかし、それは何度も繰り返してきたやりとりである。
菊は、
「…私も、あなたになにもできていません…あなたはいつも、私を笑顔にしてくれますし、包み込んでくれる。守ってくれているのに。けれど、私は貴方と一緒にいることができるだけで幸せ」
と返すのだ。そしたら、涙が止まって、二人で笑う。もう、どんよりとして見えた空も、世界も、色に溢れるのだ。
目尻から冷たいものが伝う感覚がして、はっと目を覚ました。
「菊?・・・菊?」
いつだって、呼んだら来てくれたのに、呼ばなくても、欲しいときに(欲しくない時なんて無かったのだけれど)は必ずそばに居てくれた筈なのに、どんなに呼んでも、求めても、彼は姿を現さなかった。
目を覚ましたのを気がついたナースが慌ててドクターを呼んできて、まじめそうな顔をした彼は、良かったですね、と言った。
どうしてこんなことになっているのかさっぱり分からないのだけれど、心臓が驚く位痛かった。
続けざまに、長い間会っていなかった兄だとか、知人だとか、友達だとかが駆けつけてきて、みんな、どうしてか嬉しそうに、笑ったり、泣いたりしていた。
「ねえ、どうして俺、ここにいるんだっけ?」
そういうと、真っ先にびっくりした顔をしたのは兄で、顔を引きつらせて言った。
「何いってんだ、お前・・・・あんまり長い間寝てたから忘れちまったのか?」
その後を続くように、アントーニョが言う。
「まあまあ、ロヴィ、しゃあないやん。・・・あんなあ、フェリちゃん前から心臓悪かったやん?やっと移植できたんや。奇跡的に、ドナーが見つかってな。」
「そうだ・・・。もう無理かと思ってたんだけどね・・・本当、よかったね」
地球上でも珍しい血液型である自分は、心臓の移植を待っていたのだった。けれど、当たり前にドナーは見つからなかった。そうこうしている内に病状は悪化して、意識を失った。それから何日か後、ドナーが見つかり、急遽移植手術を受けたのだ。
しかし、しばらく意識は失われていたままだったのだという。
「ねえ、菊は今日は来てないの?」
病室の外を見ても、あの黒々として美しい髪も、バター色の温かな膚も姿が見えない。
「キク?・・・誰だ?お前、そんな友達いたか?」
「え、____何言ってるの?菊だよ?菊!兄ちゃんも知ってるでしょ?俺の恋人・・・」
みんなどうしてか不思議そうな顔をしているし、兄は眉間に皺まで寄せている。必死に言うのに、誰もあの暖かい笑みの彼を知らなかった。
じゃあ、彼は誰?確かに2人で暮らしていたあの時間はなに?
絶対的な感触をもって記憶されているというのに、その時間はこの世界の何処にも存在しなかった。
その時間はずっと病院に居て、ベッドで意識不明で寝ていたのだ。
あの白い部屋の、白いカーテン、白いソファ。
暖かい膝の上、彼の体温、心臓の音。
「会いたいよう・・・」
ぎゅっと体を小さくして丸まったら、トン、と心臓が音を立てた。
_______________________________
補足。
ウィキ先生に、人口に対する割合が約1パーセント以下の珍しい血液型というのがあると教えてもらったのでそれを使いました。
で、
実はこの後、フェリシアーノは自分の心臓のドナーを探し出します。(もちろん亡くなってますけど)確か、ドナーって誰だって明かされないんですよね・・?探す事も良い事なのか分からないし、出来る事なのかさっぱりなんでアレですけど、まあフィクションですしね^^
遠い日本の土地からフェリシアーノに心臓を提供したのは「本田菊」という青年で、フェリシアーノが空白の時間を過ごしていた中で会ったのと同じ姿をしていた、と。
・・・あれ?これホラーになりかねないような・・・
いままでついた嘘と、真実ならどちらが多いんだろう。きっと、嘘の方が多いんじゃないかと思う。
自分の中の嫌いなところの方が、好きなところよりもはるかに多いのと同じように。
暗い、心臓の辺りにあるという、心の底に潜ってはもがき、引っ掻いては傷を抉りまた血を流す。
流れる血の色を確認して、安堵するのだ。
窓の外、どんより曇った空みたいにこの心も暗く停滞している。
泣き出しそうな空の下、暖かい部屋の中、空気がのそのそと動く気配しか無い部屋の中、密着する体から伝わる心音に耳を傾ける。じわりと溢れ出そうとしてとどまる涙が鼻をツンとさせた。
「フェリシアーノくん、大丈夫ですよ。」
頭を預けていた上の方からあたたかい手が降りてきて、優しく頭を撫でて、髪を梳いてくれる。
ソファーの上、甘えて膝枕をして欲しいと言ったら、恥ずかしそうにしながらも、いいですよと言ってくれた。
出会ってからずっと、菊に自分の格好良いところなんて見せることが出来ただろうか。思い当たるところなんてないからきっと無い。それでもずっと一緒に居て愛を注いでくれる本田菊という存在は、自分にとってすべてであり、存在自体が
愛であり、いつしかこの世界の神様となった。
だから、菊がいないと生きていけない。
息も出来ない。なにも出来ない。
浮き沈みの激しい心の波に飲み込まれそうになる。
それを知ってか知らずが、呼ばなくても驚くほどのタイミングの良さで菊はここに来てくれるのだ。
「菊、ねえ、どうして俺の傍にいてくれるの?」
ゆっくりゆっくり髪を撫でる手を止めず、しかし一瞬彼は息を呑んだ。
「…どうしてでしょうか…あなたと私が似ているからかも知れません。あなたが私が求められることで自分の存在意義を確認する事ができる卑しい人間だと知っていようがいまいが、あなたの存在が私を赦してくれる…あなたは誰かに愛されることで許される。ね、私たちって、お互いがお互いのために生まれてきたみたいじゃないですか?」
小首を傾げて、顎に手をやる仕草はとても幼い。
「それって、俺を愛してるってこと?」
「……まぁ、平たく言うと。」
何を言わせるんです。…ああ、恥ずかしい。そう言い、また菊は髪を梳き始めた。
「でも俺、菊が泣いてると悲しいし、菊が笑うと幸せで、うれしいよ…。でも、俺、菊になにもできてない。」
遠回りの愛の言葉を聞いて、さらに疑うようなことを言う。しかし、それは何度も繰り返してきたやりとりである。
菊は、
「…私も、あなたになにもできていません…あなたはいつも、私を笑顔にしてくれますし、包み込んでくれる。守ってくれているのに。けれど、私は貴方と一緒にいることができるだけで幸せ」
と返すのだ。そしたら、涙が止まって、二人で笑う。もう、どんよりとして見えた空も、世界も、色に溢れるのだ。
目尻から冷たいものが伝う感覚がして、はっと目を覚ました。
「菊?・・・菊?」
いつだって、呼んだら来てくれたのに、呼ばなくても、欲しいときに(欲しくない時なんて無かったのだけれど)は必ずそばに居てくれた筈なのに、どんなに呼んでも、求めても、彼は姿を現さなかった。
目を覚ましたのを気がついたナースが慌ててドクターを呼んできて、まじめそうな顔をした彼は、良かったですね、と言った。
どうしてこんなことになっているのかさっぱり分からないのだけれど、心臓が驚く位痛かった。
続けざまに、長い間会っていなかった兄だとか、知人だとか、友達だとかが駆けつけてきて、みんな、どうしてか嬉しそうに、笑ったり、泣いたりしていた。
「ねえ、どうして俺、ここにいるんだっけ?」
そういうと、真っ先にびっくりした顔をしたのは兄で、顔を引きつらせて言った。
「何いってんだ、お前・・・・あんまり長い間寝てたから忘れちまったのか?」
その後を続くように、アントーニョが言う。
「まあまあ、ロヴィ、しゃあないやん。・・・あんなあ、フェリちゃん前から心臓悪かったやん?やっと移植できたんや。奇跡的に、ドナーが見つかってな。」
「そうだ・・・。もう無理かと思ってたんだけどね・・・本当、よかったね」
地球上でも珍しい血液型である自分は、心臓の移植を待っていたのだった。けれど、当たり前にドナーは見つからなかった。そうこうしている内に病状は悪化して、意識を失った。それから何日か後、ドナーが見つかり、急遽移植手術を受けたのだ。
しかし、しばらく意識は失われていたままだったのだという。
「ねえ、菊は今日は来てないの?」
病室の外を見ても、あの黒々として美しい髪も、バター色の温かな膚も姿が見えない。
「キク?・・・誰だ?お前、そんな友達いたか?」
「え、____何言ってるの?菊だよ?菊!兄ちゃんも知ってるでしょ?俺の恋人・・・」
みんなどうしてか不思議そうな顔をしているし、兄は眉間に皺まで寄せている。必死に言うのに、誰もあの暖かい笑みの彼を知らなかった。
じゃあ、彼は誰?確かに2人で暮らしていたあの時間はなに?
絶対的な感触をもって記憶されているというのに、その時間はこの世界の何処にも存在しなかった。
その時間はずっと病院に居て、ベッドで意識不明で寝ていたのだ。
あの白い部屋の、白いカーテン、白いソファ。
暖かい膝の上、彼の体温、心臓の音。
「会いたいよう・・・」
ぎゅっと体を小さくして丸まったら、トン、と心臓が音を立てた。
_______________________________
補足。
ウィキ先生に、人口に対する割合が約1パーセント以下の珍しい血液型というのがあると教えてもらったのでそれを使いました。
で、
実はこの後、フェリシアーノは自分の心臓のドナーを探し出します。(もちろん亡くなってますけど)確か、ドナーって誰だって明かされないんですよね・・?探す事も良い事なのか分からないし、出来る事なのかさっぱりなんでアレですけど、まあフィクションですしね^^
遠い日本の土地からフェリシアーノに心臓を提供したのは「本田菊」という青年で、フェリシアーノが空白の時間を過ごしていた中で会ったのと同じ姿をしていた、と。
・・・あれ?これホラーになりかねないような・・・
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リンク:同人サイト様のみ
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