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君に真っ赤な花束

伊日。
輝やく世界はきみがいてこその続き。短いですが、菊さんおめでとう!
君に真っ赤な花束













飛行機のシートベルトのサインが点滅して、眼下に広がる自国とは違って、明らかに人の手で整理された、しかしひどく美しい街並みを眺めた。
少し陽は傾き、薄いオレンジ色の光がレンガ色の街を照らしている。
もうすぐ彼に会える。
自国の時間からすると、過去へタイムスリップしてやってきて、
言い方はとんちんかんかも知れないが、帰ってきた、とそう思える感覚が胸を襲って内蔵が喜びにふわりと浮いたようにさへ思えた。
ぐっと押し付けられる感覚の後、轟々と音をさせて飛行機は着陸する。
彼は、もう来ているに違いない。


「菊ぅ〜〜〜〜!」
国際線の到着ゲートから、何人かのアジア人の中でもひときわ目立つ姿(それは、自分が彼を愛しているので、かも知れないが)を一目で見つけて、大きく手を振る。スーツケースを片手にもって、上品に彼は手を口元に持って行き、照れ笑いをして見せた。
「イタリアく・・・・・あー、フェリシアーノくん、お待たせしました」
イタリアに来たら、名前で呼び合う。これが自分たちが決めたルールだ。
普通の人間としての時間を楽しむための秘訣でもある。
大きく両腕をのばして、すこし尻込みする日本を無理矢理腕の中に閉じ込めると、恥ずかしいのか、くぐもった声で、「ちょっと、」と言った。
「会いたかった。」
耳元で呟けば、観念したのか、小さな、蚊の鳴くような声で「私もです」と答えてくれた。
結局、ローマへ行くのは避けて、ヴェネツィアにある自宅へ行くのもやめて、兄の縄張りではあるけれど、アマルフィへ行く事にした。
世界遺産でもあるこの海岸の都市は、太陽の街とも称される。
崖で営まれるレモン畑や階段ずくしの家々を廻る郵便配達員。馬に乗って移動する土木作業員。下の方から「ボンジョールノ!」と叫べば、上の方から「ヴォンジョールノ!」と声が帰ってくる。そんな街だ。
観光客も多く、リゾートでもあるから、年中にぎやかである。
観光好きの日本は、目を輝かせて、これは嬉しい誕生日プレゼントです!なんて言って笑った。
結局アマルフィに着く頃には陽が落ちて、暗い夜空の下を、灯りで宝石箱をひっくり返したように輝く街の中を手をつないで2人で歩いて、ご飯を食べて、ワインを飲み交わし、押し掛けた隠れ家に目につかないように姿を眩ませたのだった。
「わあ、すごいですねえ・・・・さすがフェリシアーノくん。センスが素敵です」
調度品にまで感動を止めない彼は、さっきからシャッターの鬼と化しているが、寄っているのか、歩みが少し、危なっかしい。ふらふらとして、時折肩にもたれかかってくるのも、とても愛おしかった。
「ヴェ、菊、・・・・ちょっとこっち」
もうそろそろ、時刻は24時を廻ろうとしていた。
頬を染めて、とろんとして、もうすでに自分の色に染まりつつある恋人を見た。
ありきたりかも知れないけれど、きっと喜んでくれると思うから、と部屋の向こうの仕掛けが頭をよぎった。

驚く顔と、笑う顔と、照れる顔。それが見れるのは、あと10秒先の話。
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