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まちぼうけ聖夜

伊日。
まちぼうけ聖夜








日が落ちるのが早くなって、まだ16時だというのに太陽は早々に店じまい始めて、空は薄赤く染まる。
昼間に多少高くなった温度も、それと同じようにしてまた失われていく。
街はにぎわい、浮き足たった空気が人々の間を縫う。
もう少し暗くなったなら、街は電球でライトアップされて、イルミネーションの海となるだろう。幸せそうに並んで歩く男女や、友達同士、親子。誰も彼もがこの聖者の誕生日を、祝う訳ではないのに、プレゼントを渡して幸せをかみしめるという日を楽しみにしていたのだ。
しかし、今日は誰とも会う約束をしていない自分にとっては関係のない話で、少しだけ腹立たしくもあった。必ずイヴの日はどうするかという連絡をしてくれるという約束をしていたのに、思い人は今日に成っても連絡をよこさなかった。
「イタリアくんの女ったらし」
鬱々と考えながら街を歩く。気を利かせてくれた上司が、今日は恨めしくてしかたない。こんなことなら無理矢理にでも今日仕事を詰め込んでおけばよかった。
どうせ、本国で可愛い女性たちとイヴを過ごすんだろう、そう思うといっそうみっともないとは思うものの悋気の炎が燃え上がる。
自分に何かご褒美を上げようか、とか、渡そうと思っていたプレゼントは、自分の物にしてしまえばいいとか、彼以外の誰かで、今すぐここへ来れる人間に連絡を取ろうとか、いろんな事が頭を駆け巡る。
予約しておいた鳥肉を(もちろん、家で焼くつもりだったので生のままである)手に、ぶらぶらと家路についた。
住宅街の装飾が名物に成っている家を何軒か見て回って、お気に入りの家の前で少し立ち止まる。確か、ここの家はアメリカ人のご主人と、英語教師だった彼の教え子だった内儀さんが住んでいるのだったか。最近、子供が生まれたと幸せそうに報告してくたのだと、その隣に住む知人が言っていた。
ぐるぐると廻ったせいで、あたりは暮れて、あとは太陽の沈んだ後の残りの光が夜空を照らすだけだ。
吐いた息が白かった。
「ただいま帰りました、」
鍵を開けて、しんとして、灯り一つついていない我が家に足を踏み入れる。
ポチ君が嬉しそうに走りよってきてくれて、にっこりと笑いかける。
「・・・・ポチくん、それ、どうしたんです?」
確かに、自分が出かける前には、首輪なんてものはしていなかったし、散歩の時に申し訳程度に付けている首輪も、こんなものではなく、普通の革製だった筈で、こんな真っ赤で豪奢なものではなかった。
問いかけても、彼はきゃわん!と誇らしげに鳴くだけで、答えに成っていない。
「だ、誰かいるんですか・・・?」
前に、イギリスさんがやってきたとき、彼は家に上がるなり、あらぬ方をみてにっこり笑って手を差し出したことがあった。
おそるおそるあたりを見回すも、誰かいる気配はない。
首を傾げながら、居間の灯りを灯す。
「メリークリスマス!」
灯した瞬間、何かが腰にまとわりついて、あまりの勢いに後ろにそのまますっ転んだ。
幸い、頭に衝撃はやってくることはなく、その腰にまとわりついてきた誰かがしっかりと受け止めてくれていたのは理解する事が出来た。
「・・・・イタリアくん」
その変に転がった鳥肉がごんっと酷い音を立てて転がった。ポチ君は面白そうにしているし、たまは迷わずそれを追掛けた。
「ヴェ、・・・・日本、怒ってる・・・?」
「いいえ。」
怒っていないと言えば嘘に成る。何故かと言えば、彼は連絡してくれなかったのだから。しかし、ここでそれを知られてしまうのもバツが悪い。爺の悋気はみっともない。
「うそ、怒ってるよ!俺、分かってるよ〜!」
上に乗りながら、彼は半泣きで言って、頭を押し付けてくる。
ヴェッ、ヴェッ〜〜!と、世にもみっともない声をだして。
「・・・・どうして、連絡してくださらなかったんですか?・・・・爺は少し、悲しかったです」
なるべく顔を見ないようにして、言う。横目で見たイタリアくんのくるんが、ハート型になった。
「ヴェ!驚かそうと思ったんだけど・・・・」
頬を撫でてくる彼のすらりとした指が憎い。
「あ、あのね、・・・・」
言わせず、唇を奪った。
声でも失って、顔を赤くすればいい。驚かされたどころか、心の中をかき乱されたのだ、これくらいやってしまっても罰はあたらない。
にんまり笑って目を合わせれば、想像通り、珍しく赤面したラテン男。
「に、にほん・・・」
今、決めた。
今日は、いつもの仕返しに、されてばかりではない自分を見せてやろう。
「・・・閨が楽しみですね。」
不敵に笑えば、彼はこれ以上無いくらいに微笑んで、頷いた。
「うん、幸せにしてあげるからね!」
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