忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

嘘じゃない嘘

伊日。
膚の色、から続いています。
嘘じゃない嘘












大きな手が伸びてきて、キツく腕を掴んだ。
痛い、離して欲しいと言うのに、声が出ない。
連れ出されて日の下に露わにされた所為で、視界が白く消えた。
ずっと守ってくれていた大切な人を裏切ることになってしまった。
あの日の、彼の傷ついた顔が今でも忘れられない。どうして傷つけたくない誰かを傷つけてしまったのか、酷く胸が揺らいだ。
舞台上に引きずり出された黒子は、ぎらぎらの照明の下では無力極まりない。
徐々に息苦しさが募った。
「きく、菊…、」
苦しすぎて目をあけると、視界一杯に整ったフェリシアーノくんの顔が広がっていた。
焦ったように自分の名前を呼ぶ彼に、首をかしげた。
「フェリシアーノ、くん…?」
あの日から、彼の強い希望により、ヴァルガス家に世話になっている。
今まで体験したことのないようなふかふかのベッドは広く、成り行きで一緒に寝ることになってしまった。
窓から差し込む光が、まだ世界が闇に包まれていることを示している。
「いま、息してなかった…」
くしゃりと泣きそうな顔をして、唇を噛んでいるのを見て、彼に心配をかけてしまったことを知る。確かに、夜中、目が覚めて隣に寝ていた誰かが息をしていなかったらパニックになることは間違いない。
どれくらいそうなっていたのか分からないが、彼が必死で呼びかけてくれていたのは、少なくとも彼にとってはとるに足る人間なのだろう。
少しそれにホッとする。彼の愛はいつも自分を心から安心させてくれるのだ。
勘違いしてはいけないと思うのに、自分は彼の優しさが特別なものだと思おうとしている。
彼を慕いはじめているのだ。
「ごめんなさい、心配をかけてしまって…」
「ヴェ、いいんだよ…。ホッとした」
優しい手が、頭を撫でて、頬を拭われて、自分が泣いていたと気がついた。
「もう、大丈夫だからね…。」
額に口づけが落ちる。
腰に回された腕も、安心させるように力を強くして、背中をゆっくりと撫でる手にまた眠気が襲う。
もう、怖い夢は見ることはないだろう。
恐ろしい過去を繰り返し見る事も、あったとしても、過去だと割り切ることができるかも知れない。
息を吸うと、フェリシアーノくんの甘い、けれどすっきりとした香りが肺を満たした。

「菊、おはよう」
昨日の夜中、ふいに目が覚めて、隣を見たら、菊は息をしていなかった。
突然の事にびっくりして、何をすることも出来ずにただ声を出して名前を呼ぶしかできなかった。
あの日から、少しずつではあるけれど、菊は心を赦してくれている。我ながら卑怯なやりかただと思うのだけれど、それは菊を傷つけることでしか自分の思いを伝えることができなかった彼らと比べたらまだましだ。
自分は、愛しい人を傷つけるなんてことはできないし、自分を見てくれないとしてもいつも最大限で愛しさを示すのだ。きっと降り積もっていつかそれがいっぱいになって相手は気がつくと願いながら。
愛しいと言葉に出して伝えると、初めこそぼうぜんとしていたのだけれど、ようやく赤面するようになった。少しずつ自分の色に染まって行く菊に、さらに愛しさは募った。
目をこすりながら、ゆっくりと起き上がる彼は、細く、華奢で、強く掴んだなら折れてしまいそうに儚く、まるで女の子みたいなのに、その胸には女の子特有の膨らみはなく、彼が男だと
主張している。
初めて彼を見たとき、自然と眸が彼を追っていた。下を向いて、白い首を露に歩いていた姿や、背筋をすっとのばして、花壇に腰をかけて本を読んでいた時の表情。女の子じゃないと知っても彼を目で追うことはやめられなかった。見ればいつもカークランドやジョーンズに囲まれていたから、遠くから見るしかできなかったのだけれど、目で追う内に、いつしか彼らの関係がおかしいことに気がついた。そして、クラスが同じになった。ルートヴィッヒと委員会が同じだったのと、その兄、ギルベルトと知り合いだったのもあり急速に近づいて行った。
知れば知る程、ミステリアスでのめり込んで行く。いつしか女の子と遊びにいくのもまれになって、気がついたら菊とよく似た女の子にばかり声を掛けている自分に驚いた。
笑うとき、口に手を当てて首をすこしかしげるところも、スキンシップに過剰に反応するところも、表情が読み取りにくいと噂されていたのに、目が離せない位にころころ変わる表情に友情から感情は愛情に変わっていたのだ。
それを、こんな状況を利用して、思いを遂げようとしている。卑怯だとかなんとか言われようと、構わない。自分はみんなが思っているよりもずるいのだ。
「お、はようございます・・・フェリシアーノくん・・・。すみません、昨日は」
起きたばかりでかすれた声がひどく扇情的だ。
「ヴェ、ヴェ〜!気にしないで!ちょっとびっくりしたけど、菊が平気でよかった。これからは怖い夢みないように、寝る前に俺がおまじないしてあげるし、子守唄歌ってあげるからね!」
「子守りうたですか?・・・ふふ、ありがとうございます。貴方の声を聞いて眠れるなんて、贅沢ですね」
乱れた寝間着を直しながら(乱れたのは、俺が勝手にその袷から腕を差し込んで素肌を抱きしめたせいで、菊は基本的に寝相がいい)ふんわり笑った。
朝食は、すでに家を出ていた兄が用意してくれていたようで、2人でそれを頬張る。
食事の時間も楽しくてしかたない。けれど、菊は未だに登校する時に成ると、表情を少し固くする。
「だぁい丈夫、俺がいるよ!」
手をぎゅっと握って、額にキスを送って、真っ赤な顔をして照れて下を向く顔を、また追って鼻にキスを送った。
照れて怒る姿も可愛くて、このさき本気で落としにかかるけど、赦してね、と心の中で呟いた。
PR

西條事情

店主:西條

リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
メルフォは下にあります。

contact

何かありましたらこちらへどうぞ