可愛い家
露日。
冬の夜と同舞台SS
冬の夜と同舞台SS
可愛い家
この家は、とっても可愛い作りをしている。
聞けば、これは彼自身で材料を集め、少しずつ作ったのだと言う。
向日葵を思わせる黄色い内壁が、とても彼らしい。
家の中もとても小さくコンパクトな作りで、身の丈にあった暮らし、という言葉がぴったりで、ノスタルジックな布や置物、年代物の家具や敷物に囲まれているし、たまに砂嵐しか映らなくなるテレビも、質素な作りの電球も、すべてが彼の持つ、素朴さだとか、純粋さだとかを表している。
そして、夏に訪れたなら、そこは溢れんばかりの緑に包まれて、屋根が見えるか見えないか、といった具合にまで草花が成長しているし、庭の畑も見事な物で、都会にある彼の家からは想像もつかない様子で言うなれば夢のようである。
今の季節は冬。木々は枯れて、雪の下に隠れて見えず、あたり一面を銀世界に替えている。
夏場が一番にぎわうダーチャも、冬と成れば人も少ない。時々、週末になると手入れのためにぽつぽつと人影も見えるが、ほぼこの家で暮らす彼に取っては交流もない遠い向こうの敷地にやってくる人間は興味の対象にはならないらしい。
鈍い音を立てて部屋を暖めている暖房も、ストーブの上でしゅんしゅんと音を立てる薬缶も、いつか見たあこがれの暮らしをそのまま実現している。
ただ、そこにいて酒の瓶からちょびちょびと頬を赤らめて飲んでいる熊のように大きな男の姿があることだけが、違う。
「ロシアさん、飲み過ぎですよ」
言ってもきかないことは分かっているが、これ以上飲んだら瓶の中の酒も底をついてしまうだろう。
「ん、う〜ん、日本くん、僕日本くんが欲しいなあ」
てんで答えに成っていないが、彼なりの何かの回路が繋がったのだろう。
あえて聞きはしなかったが、無言で酒の瓶を回収すると、少しだけ抵抗の色をみせた。
「あっ!・・・・もう、どうして持っていっちゃうの?」
「貴方が飲み過ぎだからですよ。これ以上飲んだっていいことなんてないですからね」
ぴしゃりと言うと、真っ赤な顔をしたこのロシア人は、さらに顔を赤らめて言う。
「いいこと?・・・いいこと、あるよ」
「何ですか。」
彼にとっていいことなんて、こちらにしてみれば迷惑きわまりないことにきまっているから、聞かないが勝ち、とも思ったのだけれど、この展開は初めてで、思わず問いかけていた。
彼はその赤い顔をへらり、へにょりと崩して、気味悪くえへへ、と笑った。
背後に見える黄色い向日葵色の壁と一緒で、ひどく温かな笑顔だった。
「だって、日本くんが、世話をしてくれるでしょう?その間は、日本くんは僕だけを見てくれるじゃない」
この家は、可愛い作りをしている。
ベッドも持ち主を寝かせたらとても狭いし、それなのに客間がないから、寝るところはこの狭いベッドしかない。ソファは固いし、そこに敷くクッションの数も少ないから、そんな時はかれの抱き枕として無を極めるのだ。
可愛いのはこの家だけではないらしく、持ち主も思考はかわいらしいらしい。
そんなことを言いながら、一度だって世話らしい世話をさせたことがないくせに。
「ああ、日本くんが僕のものになればいいのに・・・」
そんな戯れ言を呟きながら、傷だらけの机の上に、可愛くないくらい大きな体をした、可愛いシロクマは突っ伏した。
この家は、とっても可愛い作りをしている。
聞けば、これは彼自身で材料を集め、少しずつ作ったのだと言う。
向日葵を思わせる黄色い内壁が、とても彼らしい。
家の中もとても小さくコンパクトな作りで、身の丈にあった暮らし、という言葉がぴったりで、ノスタルジックな布や置物、年代物の家具や敷物に囲まれているし、たまに砂嵐しか映らなくなるテレビも、質素な作りの電球も、すべてが彼の持つ、素朴さだとか、純粋さだとかを表している。
そして、夏に訪れたなら、そこは溢れんばかりの緑に包まれて、屋根が見えるか見えないか、といった具合にまで草花が成長しているし、庭の畑も見事な物で、都会にある彼の家からは想像もつかない様子で言うなれば夢のようである。
今の季節は冬。木々は枯れて、雪の下に隠れて見えず、あたり一面を銀世界に替えている。
夏場が一番にぎわうダーチャも、冬と成れば人も少ない。時々、週末になると手入れのためにぽつぽつと人影も見えるが、ほぼこの家で暮らす彼に取っては交流もない遠い向こうの敷地にやってくる人間は興味の対象にはならないらしい。
鈍い音を立てて部屋を暖めている暖房も、ストーブの上でしゅんしゅんと音を立てる薬缶も、いつか見たあこがれの暮らしをそのまま実現している。
ただ、そこにいて酒の瓶からちょびちょびと頬を赤らめて飲んでいる熊のように大きな男の姿があることだけが、違う。
「ロシアさん、飲み過ぎですよ」
言ってもきかないことは分かっているが、これ以上飲んだら瓶の中の酒も底をついてしまうだろう。
「ん、う〜ん、日本くん、僕日本くんが欲しいなあ」
てんで答えに成っていないが、彼なりの何かの回路が繋がったのだろう。
あえて聞きはしなかったが、無言で酒の瓶を回収すると、少しだけ抵抗の色をみせた。
「あっ!・・・・もう、どうして持っていっちゃうの?」
「貴方が飲み過ぎだからですよ。これ以上飲んだっていいことなんてないですからね」
ぴしゃりと言うと、真っ赤な顔をしたこのロシア人は、さらに顔を赤らめて言う。
「いいこと?・・・いいこと、あるよ」
「何ですか。」
彼にとっていいことなんて、こちらにしてみれば迷惑きわまりないことにきまっているから、聞かないが勝ち、とも思ったのだけれど、この展開は初めてで、思わず問いかけていた。
彼はその赤い顔をへらり、へにょりと崩して、気味悪くえへへ、と笑った。
背後に見える黄色い向日葵色の壁と一緒で、ひどく温かな笑顔だった。
「だって、日本くんが、世話をしてくれるでしょう?その間は、日本くんは僕だけを見てくれるじゃない」
この家は、可愛い作りをしている。
ベッドも持ち主を寝かせたらとても狭いし、それなのに客間がないから、寝るところはこの狭いベッドしかない。ソファは固いし、そこに敷くクッションの数も少ないから、そんな時はかれの抱き枕として無を極めるのだ。
可愛いのはこの家だけではないらしく、持ち主も思考はかわいらしいらしい。
そんなことを言いながら、一度だって世話らしい世話をさせたことがないくせに。
「ああ、日本くんが僕のものになればいいのに・・・」
そんな戯れ言を呟きながら、傷だらけの机の上に、可愛くないくらい大きな体をした、可愛いシロクマは突っ伏した。
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西條事情
店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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