「 」つけ
土日。
「 」つけ
もう、もしかしたらあの人は駅に着いてるのかもしれない、そう思いながら、足早に歩く。
何故早足なのかというと、走ると、あの人にあった時に息があがって格好悪いというのもあるし、自分のような大きな体の人間がここで息咳ききって走っていれば、誰かにすれ違いざまぶつかってしまったなら、相手を吹き飛ばし兼ねないから、せめて早足で、待ち合わせ場所の駅まで早く着けと念じながら足を高速で動かすしかないのだ。
すれ違う、彼の国の人々は妙な物でも見るような目つきで興味深げに見たり、あからさまに振り返ったりしながら奇異の目を向けている。それもその筈。会議後、ホテルに帰らずそのまま来た所為で身にまとっているのはいつもの伝統衣装だし、この顔には面をつけている。以前、「この国にはコスプレイヤーという人たちがいるのでそんなに目立ちませんよ」と言っていたが、それはどうやら、隣に
あの人がいる場合のみ、のようだ。
「早くしねぇと、心配させちまわぁ…!」
人でにぎわう駅で、待ち合わせる人間も多かろうに、そのなかで、後から待ち合でやってきた人が先に待ち人と手を合わせ去っていくのを見ているのはすごく切ないのだ。
「あー!何だってあの爺さん、話を混ぜっ返しやがって…!」
世界会議後、さっさとホテルに帰ろうとした矢先、嬉々としていた自分の仮面の下を読み取ったエジプトに呼ばれて、話(それも、これから会うあの人の、過去どんなに素晴らしい関係だったか、など彼のあの人に対する思い)をさんざん聞かされたのだが、こちらはこのあと予定があるのだと言っているのに、一向に聞く気配はなく、そうして一端ホテルに戻って着替えたりと準備をする時間が無くなってしまったのだ。
最後には、「この壺をあの子に私からの贈り物だと渡しておくれ、」と言って壺を押し付けてきた。今、まさにカバンの中にはその壺ももちろん入っている。
「くそったれ…!何だってんだい」
確かに、彼らの恨みを買った自覚はある。あの人はアイドルだからだ。
本人はまったくもって気がついていないし、自分を過小評価しすぎるきらいがあるので、まさか自分が多数の者から熱視線を送られていようとは思いもしていないらしい。
今は、ただ、出会ったタイミングが良かったと安堵するだけだ。
ようやく目的地につこうとしている。見慣れた愛しい姿が視界に入り、自然、口角が上がっていく。
「日本!…すまねぇ、待たしちまったな!」
一瞬驚いたように目を見張る姿も、愛らしくてたまらない。
「ああ、トルコさん。平気ですよ、……ホテル、寄って来なかったんですか?」
「エジプトの爺さんに捕まっちまってえな…。これ、爺さんからだい。」
見事なことに、日本の顔は綻んだ。あの爺さんに、すこし感謝せねば。…花を買う時間を奪ったのも彼だけれど。
「服、似合ってますぜ。」
日本は、いつもの着物姿ではあるものの、季節にぴったりの落ち着いた色合いで、帯の素材も値が張りそうな上物だし、羽織りは縮緬に見えた。
「ふふ、私の着物の良し悪しが分かるのは、貴方だけですよ、トルコさん。…でも、気合いを入れているのまで分かるんですから、すこし恥ずかしいですけど。」
それは、要するに、自分と会うのにめかしこんで来てくれた、ということだ。
「日本…!」
思わず抱きしめてしまったら、腕の中でこら、と笑い声が聞こえた。
今日はそのまま、最後までいってもいいらしい。
歌い出したいくらい嬉しくて、早々に手を取って歩き出した。
まだ、時間は沢山あるのだ。
「トルコさんたら、顔、真っ赤ですよ」
格好を付けたいのに、そうは行かないらしい。
仮面の下まで悟られずにすんで、良かったと内心ホッと息をついた。
もう、もしかしたらあの人は駅に着いてるのかもしれない、そう思いながら、足早に歩く。
何故早足なのかというと、走ると、あの人にあった時に息があがって格好悪いというのもあるし、自分のような大きな体の人間がここで息咳ききって走っていれば、誰かにすれ違いざまぶつかってしまったなら、相手を吹き飛ばし兼ねないから、せめて早足で、待ち合わせ場所の駅まで早く着けと念じながら足を高速で動かすしかないのだ。
すれ違う、彼の国の人々は妙な物でも見るような目つきで興味深げに見たり、あからさまに振り返ったりしながら奇異の目を向けている。それもその筈。会議後、ホテルに帰らずそのまま来た所為で身にまとっているのはいつもの伝統衣装だし、この顔には面をつけている。以前、「この国にはコスプレイヤーという人たちがいるのでそんなに目立ちませんよ」と言っていたが、それはどうやら、隣に
あの人がいる場合のみ、のようだ。
「早くしねぇと、心配させちまわぁ…!」
人でにぎわう駅で、待ち合わせる人間も多かろうに、そのなかで、後から待ち合でやってきた人が先に待ち人と手を合わせ去っていくのを見ているのはすごく切ないのだ。
「あー!何だってあの爺さん、話を混ぜっ返しやがって…!」
世界会議後、さっさとホテルに帰ろうとした矢先、嬉々としていた自分の仮面の下を読み取ったエジプトに呼ばれて、話(それも、これから会うあの人の、過去どんなに素晴らしい関係だったか、など彼のあの人に対する思い)をさんざん聞かされたのだが、こちらはこのあと予定があるのだと言っているのに、一向に聞く気配はなく、そうして一端ホテルに戻って着替えたりと準備をする時間が無くなってしまったのだ。
最後には、「この壺をあの子に私からの贈り物だと渡しておくれ、」と言って壺を押し付けてきた。今、まさにカバンの中にはその壺ももちろん入っている。
「くそったれ…!何だってんだい」
確かに、彼らの恨みを買った自覚はある。あの人はアイドルだからだ。
本人はまったくもって気がついていないし、自分を過小評価しすぎるきらいがあるので、まさか自分が多数の者から熱視線を送られていようとは思いもしていないらしい。
今は、ただ、出会ったタイミングが良かったと安堵するだけだ。
ようやく目的地につこうとしている。見慣れた愛しい姿が視界に入り、自然、口角が上がっていく。
「日本!…すまねぇ、待たしちまったな!」
一瞬驚いたように目を見張る姿も、愛らしくてたまらない。
「ああ、トルコさん。平気ですよ、……ホテル、寄って来なかったんですか?」
「エジプトの爺さんに捕まっちまってえな…。これ、爺さんからだい。」
見事なことに、日本の顔は綻んだ。あの爺さんに、すこし感謝せねば。…花を買う時間を奪ったのも彼だけれど。
「服、似合ってますぜ。」
日本は、いつもの着物姿ではあるものの、季節にぴったりの落ち着いた色合いで、帯の素材も値が張りそうな上物だし、羽織りは縮緬に見えた。
「ふふ、私の着物の良し悪しが分かるのは、貴方だけですよ、トルコさん。…でも、気合いを入れているのまで分かるんですから、すこし恥ずかしいですけど。」
それは、要するに、自分と会うのにめかしこんで来てくれた、ということだ。
「日本…!」
思わず抱きしめてしまったら、腕の中でこら、と笑い声が聞こえた。
今日はそのまま、最後までいってもいいらしい。
歌い出したいくらい嬉しくて、早々に手を取って歩き出した。
まだ、時間は沢山あるのだ。
「トルコさんたら、顔、真っ赤ですよ」
格好を付けたいのに、そうは行かないらしい。
仮面の下まで悟られずにすんで、良かったと内心ホッと息をついた。
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リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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