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君が僕に憑依した!

骸ツナ小説。同名の曲からイメージをいただきました。
HPより移動*
下の「地球を見たかった..」からどうぞ。
*



頭から君が離れない。




身体から君が離れない。




眸に焼きついた君が消えない。



これは呪縛。



君が僕に憑依した!


君が笑った。


胸が鳴る。


こんな感覚は初めてで、骸は驚きと戸惑いを隠せない。

目の前にいて笑顔を見せる人物に、不思議な程に心が温まる。
けれどふとした瞬間のこの笑顔に、胸がざわついて落ち着かない。

なんでしょうか、この感覚は。

骸は自分の胸に問いかける。
こんな感覚はついぞ感じたことが無い。
今まで生きてきた中で一度として感じたことのないもの。
だからこれが間違っているのかさへ、何なのかさへ分からないのだ。

目の前で笑うのは、以前は敵同士だったイタリア最強マフィア、ボンゴレファミリーの次期ボス、
沢田綱吉。
弱弱しい、女のような体つきに顔つき、髪の毛の1本に至るまで、 マフィアという言葉が似つかわしくない。
骸の中で最も忌むべき存在である筈のマフィアで、しかも、その頭であるというのに、 何を血迷ったのか、その人の笑顔でこんなにも胸が温かくなる。

(ふざけないで下さい。なんたる屈辱だ)

マフィアを許せる筈も無いというのになんという体たらく。
骸は心の中で毒づいて、テーブルの向こう側、 正面に座ってオレンジジュースを飲んでいる少年を見た。
見ると、ん、と小さく言って、何かと訊ねるように首を傾げる。

「なんでもありませんよ、・・・美味しいですか、」

貼り付けたような笑顔で、問いかけると、うれしそうに

「うん、美味しいです。オレンジジュースでもこんなに味が違うんですね、」

なんて呑気なことを言ってはしゃいでいる。
実感がないのか、自分がマフィアの次期ボスに完全に就任を認められたというのに。
相も変わらず子供のような味覚を持って、オレンジジュースの他にはハンバーグとライス、 ケーキがテーブルに並んでいる。
挙句の果てにハンバーグについていたサラダを差し出して

「六道さんにあげます。」

嫌いな野菜を食べないでおこうとしている。

(なんたることだ。まるでボスとしてなっていない。それ以前にいつまで子供でいるきなのか)

けれど、そんな風に思うけれど、
この人がこんなにも親しげに接してくれるのがとてもうれしいと思っている。

(不本意極まりない)

「・・・・沢田くん」

呆れたように、ため息をついてそういえば、

「す、すみませんでした。ちゃ、ちゃんと食べますから・・・。ぅう、」

と焦ったように悲しそうに言うから、また不本意な感情が。
どこまで僕を貶めれば気が済むんですか君は。

「仕方ないですね、食べてあげますよ。・・・その代わり、そうですねえ、名前でよんでくれますか、」

こちらばかりが損をすることはしたくない。
べつに野菜は嫌いでないしむしろ好きなくらいだ。けれど、 彼はマフィアだ。
交換条件なんて当たり前。
代価を貰わなくては。
骸は他にも・・・というか、殆どの彼の周りの人物を彼が苗字で呼び、 名前で呼ばないのを知っているため、 別段自分が苗字で呼ばれることを不思議とは思っていないし、寂しくもない。
が、この時彼ができる代価といえば、そういった他愛のないことしかないのだ。
確か以前は髪の毛を洗って欲しいと頼んだのだったか。

「へ」

加えていたストローをぽろり、と口から離して、綱吉は骸をまじまじと見た。

「・・・・どうしました、名前で呼ばないと、サラダは君が食べることになりますけど」

「いえ、あの六道さん、どうかしたんですか。何でそんな・・・いきなり名前で呼べなんて・・・」

「おかしいですか、」

突然、頭が変になってしまったのかと思うほど、ぶんぶんぶんっと首を左右に振って そんなことないですと言う。

「あ、えっと・・・さ、サラダは頑張って食べることにします。」

「、僕を名前で呼ぶのはいやですか、」

ふんっと鼻で冷めたように聞こえるようにわざと笑った。
一瞬、深く胸を抉られるような感覚に陥ったわけを、彼は知らない。
恋さへ知らない骸には、一瞬のそれは見逃してしまうようなものだったのだ。

「そ・・・ういう訳では・・・・でも、何かいきなり名前っていうのも・・・」

もじょもじょと口ごもり、食べようとしていたハンバーグの切れ端を、フォークに刺したまま、 手が止まっている。

「・・・では、何故」

(どうして名前で呼ぶなんて簡単なことでしょうに。君が呼んでくれたら、僕は)

と、そこまで考えて思い至る。

(君が呼んでくれたら、僕は・・・・何でしょう)

首を傾げたって、答えは返ってこない。
骸は一体何なのかというのを考えているうちに、綱吉との間に沈黙がやってきた。
綱吉は未だ、フォークを動かさずに、骸を見ている。
そしておもむろに、

「む、骸さ・・・・・ん、」

と言った。

「え、」

「む、くろさん」

「あ、れ、今、沢田君、」

顔から何かが噴出したようだ。
骸は綱吉の不意打ちに、 全く持って余裕のない恥ずべき間抜けな応えを返してしまった。

(な、名前を・・・・よんで、くれたのか)

「・・・綱吉君、ありがとう。」

今度は骸が名前で呼ぶ。
骸の目のまえで、綱吉は周囲すら赤面するほどに頬を染めて、うれしそうに笑った。




(あれ、)

骸はまた首を傾げる。

(今、何か、凄く・・・・・)


(もしかして、僕は・・・・君が、好きなのか)

目の前にいる綱吉を見ても、ボンゴレファミリーのボスである、そう、マフィアである綱吉を見ても、先ほどのような不愉快さはもうなく、 むしろどこか先ほど感じた温かさよりも満ち足りている。

「君は、とんでもないことをしてくれましたね、」


骸は目のまえで可愛く笑う綱吉の目を見て、募り募ってしまった愛しさに気がついてしまったことに、苦笑した。





(ああ、君が僕のものになればいいのに。これじゃ、六道輪廻もお手上げです。)
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