ごめんね
露日
時事ネタあり。
時事ネタあり。
ごめんね
真夜中、そろそろプレイ中のR18女性向けエロゲも終焉に近づいてきたころ(すでにエログロスチルはコンプリートして、あとはハッピーエンドかバッドエンドかの分岐点のみとなっていた)この時間に似合わない、平和なぴぃーんぽーんという音が、響いた。
「ったく、誰ですかこんな時間に!」
寒いし、暗い。
家の電気は既に自室(限られた人間にしか出入りを許していない、ゲーム、漫画専用の部屋だ)の薄暗い灯り以外はすべて消してある。普通なら、ああ、もうこんな時間だもの、迷惑だったな、とか思って引き返す筈。いや、そもそも今の時刻は午前1時を回ったところ。こんな時間に普通、人の家を訪ねようと思わないし、そんなことはしないだろう。
となると、こんな時間に構わず、「寝てるなら叩き起こせよホトトギス」精神をぶっ放すのは、数人しかいない。大方、常に騒々しいAKYことメタボな彼か、純朴な癖に無邪気さが逆に怖い骨太なあの人かどちらかだ。
この二人、いや、この二大大国どもは、人の世の常、というのをご存知ないのだ。
ジャージから寝間着に着替えると(さすがに、こんな姿を見せられるのはフランスさんあたりしかいない。)上から半纏を羽織り、冷たい床に足の指をぎゅっと丸めながら、仕方なく、玄関まで歩いて行くことにした。
「はいはい、どなたですかね、こんな夜中に来る人は」
半纏を着ていても寒いし、足はなんだか痛いくらいに冷たい。畜生、あの部屋は暖かかったのに。
ぶるり、と身震いして、玄関の灯りを灯すと、案の定、メタボか骨太の分岐は骨太ルートになったようだ。
暗くても、アメリカさんよりも大きな背が分かる。
どちらも背が高いのだけれど、ロシアさんの方がもっと高い。だから、ロシアさんは玄関の引き戸のところ、頭の端っこが少し、切れて見えない。
「なんですか、こんな夜中に。気でも狂ったんですか」
そう言いながら扉を開けると、やはり思った通り、ロシアさんが長いマフラーを弄びながらぱっと顔を上げた。
その様子をみると、もしかすると居留守を使われる可能性があると分かっていたようで、少しだけ、なんだかこんなに大きな図体をしているのに、彼が可愛く見えた。
「こんばんは、日本くん。ロシアだよ」
「知ってます。で、入るんですか、入らないんですか」
投げ捨てるように言うと、あっと慌てて、「入る、はいる!」と大きな体をわたわたさせがならすこし屈んで中に入った。
扉を閉めながら、どうしたのかと聞いても、やっぱり口を開こうとしない。
鍵を閉めて、振り返ると、靴をきちんと脱いで、土間から上がって待っていた。
なんてお行儀がいい子なんだろう、と我ながら、自分の教育の賜物と、少し嬉しくなる。初めて着た頃は、靴は脱がないし扉は壊すし、散々だったのだ。
ふ、と息をついて、さて、今日は一体どうするつもりなんだろうか、と思いながらも、明日の朝ご飯は何にしようか、などと考えてしまう。
この寒いなかやってきたのだから、風呂につからないと冷えて風邪でも引きかねないし、まさかそのまま帰るなんてことはないだろうから、別室の布団を持ってきて客間に敷いておかねば、など、突然の来客に慣れきってしまった自分の思考に、すこしあきれてしまうほどだ。
「ごめんね、こんな遅くに来たら、迷惑だったよね?日本くん、もう寝てた?」
おおよそロシアさんの言葉とは思えない気遣いに目が数メートル先まで飛んで行った気分だ。
てっきり、僕が来たんだから起きてて当たり前じゃない!え?時差?ロシアにそんなサービスないよ?とかなんとか言ってさも当たり前のように風呂に入り、布団をつかい、惰眠を貪り、太陽も少し高くなったころに起きてきて朝ご飯をどうして先に食べちゃってるの?とかそういうわがままを言って、洗濯物を干す手を邪魔をして昼の買物にもまるで金魚のふんのように付いてきて珍しい物をめざとく見つけて、これ買って!あれ買って!と子供じみたわがままを言うものだと思っていたのに。拍子抜けしたけれど、はっと彼の悲しい過去を思い出して、なんだか、こんな夜中に来たことに大しても、怒りも収まる上にかわいそうになってきた。
・・絆されたのか。
「・・・寝てませんでしたけど。普通ならこんな時間に来たりしないでしょうけど、まあ、貴方はそういう人だと諦めてますから平気です」
「うん・・・ありがとう、日本くん。」
居間に入って、灯りを点ける。電気を点けるのは勿体ないから、いつも、行灯とランプを使っている。
暖かい炎の灯りが部屋を包んだ。
手燭を持って台所にゆき、薄暗い中を、彼が以前持ってきて置いて行ったティーカップとソーサーを探り、茶葉を手に取る。面倒なので、略式にしたいところだけれど、彼の様子からして、なにかあるのは間違いない。
暖かいお茶でも呑みながら、聞いてやろう。
「はい、お茶ですよ。どうぞ」
湯気の立つカップを前に差し出すと、こたつに半分体を埋めたロシアさんが、やっぱり外さないマフラーを弄んでいた手を止めて、こちらをみて笑った。
「うん。ありがとう・・・。あのね、・・・ごめんね」
笑っているのに、泣いているみたいな顔をして、言うので、何が何やらわからないではないか。
けれど何故彼が謝るのかは、分かっているのだ。
左腕をぎゅっと握った。
自分から、束縛したくてそうしたくせに、ひどくしたあと、こんなに後悔してこんな様子になるくらいなら、はじめから逃げ道なんて用意せずに、泳がせることなくすべて縛ってしまえばいいものを。
不器用すぎるこの大きな体をした子供が、愛しすぎてなんだか胸がいっぱいになる。抱きしめてやりたいところだけれど、こんなに大きくては腕も回らないのでそれもできない。
「いいですよ別に。今更じゃあないですか。・・・それより、あなたの上司、あなたに首輪を付けたんですって?悪趣味ですね・・・。私は前の上司の方の方がなんとなく好意が持てましたけどね。どうなんですか?」
「日本くん、僕を嫌わないでね?」
せっかく話題を振ったのにちっとも意に介さないようだった。
ロシアさんは、時々こんな風に気持ちを確認せずにはいられないのだというのは前からそうだから理解している。まあ、たまに鬱陶しくはなるんだけれども。
ため息をついて息を整える。
「はい、嫌いになんて、なりませんよ。約束します。この、左腕と右指に誓って、ね」
言って、寝間着の袖をずらして、赤く生々しい傷と、きらりとひかるゴールドの指輪を見せた。
ロシアでは、結婚指輪は右手。ぐるりと腕を回る赤黒く、爛れたようなこの痕は、彼の上司の上陸によって、抉られこすられたように焼け付いたのだ。と、同時に共鳴する指輪の締め付ける痛みに意識が飛びそうになったのを今も覚えている。
最近はそういったトラブルが多すぎて、対処しきれないというのに、こんなときに・・・!と思ったのも。
「痛かった・・・?」
そろり、と大きな指が腕の傷をなぞった。
「それは、まあ。貴方も、ご存知でしょう?貴方だって、痛かった筈です」
「・・・うん。すごく、心臓がつぶれそうだった。」
「どこかに落とさなかっただけよかったですね」
そう返したら、ようやくロシアさんは笑った。
やってきてからというもの、口の端をあげることさへしなかったのに、ようやくこぼれた笑みに、こちらも思わず笑ってしまった。
「もう、日本くんたら、変なの!」
「失礼な、変なのはあなたでしょうが」
このシロクマ!と罵れば、じゃあ、日本くんは黒猫だね!と言ってまた笑った。
すっかり冷えてしまった体に、目まで冴えてしまった。今日はしばらく眠れない。
そう思ったら、不意に背中、と言わず体が暖かく柔らかい物に包まれた。
「ろ、ロシアさん?」
にこにこ笑いながら、ちっとも意に介さないまま、腕も解こうとしない。
そのまましばらくして、けれど、暖かいから、まあいいか。と少しこの人肌にうとうととして降りてくる瞼に逆らえず、腕の中で目を閉じた。
真夜中、そろそろプレイ中のR18女性向けエロゲも終焉に近づいてきたころ(すでにエログロスチルはコンプリートして、あとはハッピーエンドかバッドエンドかの分岐点のみとなっていた)この時間に似合わない、平和なぴぃーんぽーんという音が、響いた。
「ったく、誰ですかこんな時間に!」
寒いし、暗い。
家の電気は既に自室(限られた人間にしか出入りを許していない、ゲーム、漫画専用の部屋だ)の薄暗い灯り以外はすべて消してある。普通なら、ああ、もうこんな時間だもの、迷惑だったな、とか思って引き返す筈。いや、そもそも今の時刻は午前1時を回ったところ。こんな時間に普通、人の家を訪ねようと思わないし、そんなことはしないだろう。
となると、こんな時間に構わず、「寝てるなら叩き起こせよホトトギス」精神をぶっ放すのは、数人しかいない。大方、常に騒々しいAKYことメタボな彼か、純朴な癖に無邪気さが逆に怖い骨太なあの人かどちらかだ。
この二人、いや、この二大大国どもは、人の世の常、というのをご存知ないのだ。
ジャージから寝間着に着替えると(さすがに、こんな姿を見せられるのはフランスさんあたりしかいない。)上から半纏を羽織り、冷たい床に足の指をぎゅっと丸めながら、仕方なく、玄関まで歩いて行くことにした。
「はいはい、どなたですかね、こんな夜中に来る人は」
半纏を着ていても寒いし、足はなんだか痛いくらいに冷たい。畜生、あの部屋は暖かかったのに。
ぶるり、と身震いして、玄関の灯りを灯すと、案の定、メタボか骨太の分岐は骨太ルートになったようだ。
暗くても、アメリカさんよりも大きな背が分かる。
どちらも背が高いのだけれど、ロシアさんの方がもっと高い。だから、ロシアさんは玄関の引き戸のところ、頭の端っこが少し、切れて見えない。
「なんですか、こんな夜中に。気でも狂ったんですか」
そう言いながら扉を開けると、やはり思った通り、ロシアさんが長いマフラーを弄びながらぱっと顔を上げた。
その様子をみると、もしかすると居留守を使われる可能性があると分かっていたようで、少しだけ、なんだかこんなに大きな図体をしているのに、彼が可愛く見えた。
「こんばんは、日本くん。ロシアだよ」
「知ってます。で、入るんですか、入らないんですか」
投げ捨てるように言うと、あっと慌てて、「入る、はいる!」と大きな体をわたわたさせがならすこし屈んで中に入った。
扉を閉めながら、どうしたのかと聞いても、やっぱり口を開こうとしない。
鍵を閉めて、振り返ると、靴をきちんと脱いで、土間から上がって待っていた。
なんてお行儀がいい子なんだろう、と我ながら、自分の教育の賜物と、少し嬉しくなる。初めて着た頃は、靴は脱がないし扉は壊すし、散々だったのだ。
ふ、と息をついて、さて、今日は一体どうするつもりなんだろうか、と思いながらも、明日の朝ご飯は何にしようか、などと考えてしまう。
この寒いなかやってきたのだから、風呂につからないと冷えて風邪でも引きかねないし、まさかそのまま帰るなんてことはないだろうから、別室の布団を持ってきて客間に敷いておかねば、など、突然の来客に慣れきってしまった自分の思考に、すこしあきれてしまうほどだ。
「ごめんね、こんな遅くに来たら、迷惑だったよね?日本くん、もう寝てた?」
おおよそロシアさんの言葉とは思えない気遣いに目が数メートル先まで飛んで行った気分だ。
てっきり、僕が来たんだから起きてて当たり前じゃない!え?時差?ロシアにそんなサービスないよ?とかなんとか言ってさも当たり前のように風呂に入り、布団をつかい、惰眠を貪り、太陽も少し高くなったころに起きてきて朝ご飯をどうして先に食べちゃってるの?とかそういうわがままを言って、洗濯物を干す手を邪魔をして昼の買物にもまるで金魚のふんのように付いてきて珍しい物をめざとく見つけて、これ買って!あれ買って!と子供じみたわがままを言うものだと思っていたのに。拍子抜けしたけれど、はっと彼の悲しい過去を思い出して、なんだか、こんな夜中に来たことに大しても、怒りも収まる上にかわいそうになってきた。
・・絆されたのか。
「・・・寝てませんでしたけど。普通ならこんな時間に来たりしないでしょうけど、まあ、貴方はそういう人だと諦めてますから平気です」
「うん・・・ありがとう、日本くん。」
居間に入って、灯りを点ける。電気を点けるのは勿体ないから、いつも、行灯とランプを使っている。
暖かい炎の灯りが部屋を包んだ。
手燭を持って台所にゆき、薄暗い中を、彼が以前持ってきて置いて行ったティーカップとソーサーを探り、茶葉を手に取る。面倒なので、略式にしたいところだけれど、彼の様子からして、なにかあるのは間違いない。
暖かいお茶でも呑みながら、聞いてやろう。
「はい、お茶ですよ。どうぞ」
湯気の立つカップを前に差し出すと、こたつに半分体を埋めたロシアさんが、やっぱり外さないマフラーを弄んでいた手を止めて、こちらをみて笑った。
「うん。ありがとう・・・。あのね、・・・ごめんね」
笑っているのに、泣いているみたいな顔をして、言うので、何が何やらわからないではないか。
けれど何故彼が謝るのかは、分かっているのだ。
左腕をぎゅっと握った。
自分から、束縛したくてそうしたくせに、ひどくしたあと、こんなに後悔してこんな様子になるくらいなら、はじめから逃げ道なんて用意せずに、泳がせることなくすべて縛ってしまえばいいものを。
不器用すぎるこの大きな体をした子供が、愛しすぎてなんだか胸がいっぱいになる。抱きしめてやりたいところだけれど、こんなに大きくては腕も回らないのでそれもできない。
「いいですよ別に。今更じゃあないですか。・・・それより、あなたの上司、あなたに首輪を付けたんですって?悪趣味ですね・・・。私は前の上司の方の方がなんとなく好意が持てましたけどね。どうなんですか?」
「日本くん、僕を嫌わないでね?」
せっかく話題を振ったのにちっとも意に介さないようだった。
ロシアさんは、時々こんな風に気持ちを確認せずにはいられないのだというのは前からそうだから理解している。まあ、たまに鬱陶しくはなるんだけれども。
ため息をついて息を整える。
「はい、嫌いになんて、なりませんよ。約束します。この、左腕と右指に誓って、ね」
言って、寝間着の袖をずらして、赤く生々しい傷と、きらりとひかるゴールドの指輪を見せた。
ロシアでは、結婚指輪は右手。ぐるりと腕を回る赤黒く、爛れたようなこの痕は、彼の上司の上陸によって、抉られこすられたように焼け付いたのだ。と、同時に共鳴する指輪の締め付ける痛みに意識が飛びそうになったのを今も覚えている。
最近はそういったトラブルが多すぎて、対処しきれないというのに、こんなときに・・・!と思ったのも。
「痛かった・・・?」
そろり、と大きな指が腕の傷をなぞった。
「それは、まあ。貴方も、ご存知でしょう?貴方だって、痛かった筈です」
「・・・うん。すごく、心臓がつぶれそうだった。」
「どこかに落とさなかっただけよかったですね」
そう返したら、ようやくロシアさんは笑った。
やってきてからというもの、口の端をあげることさへしなかったのに、ようやくこぼれた笑みに、こちらも思わず笑ってしまった。
「もう、日本くんたら、変なの!」
「失礼な、変なのはあなたでしょうが」
このシロクマ!と罵れば、じゃあ、日本くんは黒猫だね!と言ってまた笑った。
すっかり冷えてしまった体に、目まで冴えてしまった。今日はしばらく眠れない。
そう思ったら、不意に背中、と言わず体が暖かく柔らかい物に包まれた。
「ろ、ロシアさん?」
にこにこ笑いながら、ちっとも意に介さないまま、腕も解こうとしない。
そのまましばらくして、けれど、暖かいから、まあいいか。と少しこの人肌にうとうととして降りてくる瞼に逆らえず、腕の中で目を閉じた。
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