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貴方ともっと近くになれる

2010年を祝い隊。
土日
貴方ともっと近くになれる





バフチェシェヒル大学の一角。大量の生徒たちは、ここがトルコであるにも関わらず、すらすらと、あるいはたどたどしくもあるが、日本語を熱心に話している。
ここに日本人がいないことだけが、今立っているこの場所が日本ではないのだと忘れないように教えてくれている。
受付の女性は日本語で彼氏募集中、との文字の書かれたTシャツを着込んで受付作業に没頭しているが、合間に日本語を話すトルコ人に「意味知ってるの?」と聞かれて、「当たり前でしょ!」と憤慨していた。曰く、日本人の彼氏が欲しいんだそうな。その周りにも、日本語で、日本の同じくらいの年の青年なら絶対しないだろうというような丁寧な挨拶をかわしているのが見える。(日本に以前、そういうことがあると言ったら、「・・・・しないのではないんですよ。恥ずかしいことですが、できないんです、彼らは」と悲しそうに笑っていたが、その後、「私たち日本人が丁寧で命の宿った言葉をはなせなくなった分、あなたや他の国の方が興味をもってくださっているので、いいんです」と言って照れたのか頬を染めながら話していた)
ここで開催されるのは、日本語弁論大会で、通称、日本語王。優勝者には嬉しい、トルコ日本間の往復航空チケットが授与されるため、勉強中の彼らはそれを勝ち取るのに燃えているのだ。
航空券さへただで(ただで貰うには大変な努力が必要だけれど)貰えれば、旅費は押さえたら結構滞在できてしまうのだ。
学生たちは、それぞれの考えたテーマについてのスピーチの練習に余念がない。
呼ばれてやってきたが、特にすることがないのでぶらぶらしていたら、見知った黒髪をみてぎょっとした。
「やいやいやいやい!おい、逃げんな日本、こらっ!」
気づかれたのを悟って、早足で人ごみに紛れようとするのを大声を出して止めると、周りは残念ながら日本語が分かる者だらけなため、大変な注目を集めてしまった。
「ちょっと、サディクさん、困りますよ・・・!ここ、日本語分かる人しかいないんですから・・・!」
珍しくポッコポコとさせながらも、見つかってしまった恥ずかしさか頬をほんのり染めている。
「すまねえ、ちょいとびっくりしたんでえ。・・・なんで何も言わずにきたんだよ、言われてりゃ、迎えにいったのによ」
「・・・いえ、はあまあ、なんと言いますか・・・その・・・忙しくて」
「忘れてたってえことかい?」
今度はこっちが怒る番で、少し低く唸るように言うと、びくっと肩を振るわせて、視線をあっちこっちにやっている。
「ち、違いますよ!突然決まったので仕方なく。あなただって仕事あるって言っていたじゃないですか」
「俺だってそうでえ。知り合いから日本語王があるから来てくれって言われたんで」
じゃあ、仕方ないですね、あなたもわたしも、と言ってそこでこの議論はおしまいで、ちょうど開始のベルが鳴ったので二人して急いで会場の中へ滑り込む。
審査をすることになっている日本は、入ったと同時に、少し慌てた様子の運営委員に連行されてしまったので、一人で客席から壇上の正面の席を陣取って見上げる。
誰が書いたのか、縦書きの「日本語弁論大会」の文字が掲げられている。
一人ずつ、拍手の中舞台に上がって、各自が考えた日本についてのスピーチを始める。上手下手はあるものの、皆、日本語や、日本文化が大好きなのだと分かった。
(ま、俺がこんなに好きなんだ、当たり前だあな。)
顎に当てた手が、整えている髭をしょりりと言わせた。

「なんだか、嬉しいですね、あなたの国の人がこんなに熱心に私の言葉を練習してくれるなんて」
日本はそう言って微笑む。
新市街のガラタ塔から、アジアサイドのイスタンブールを眺めながら、風に吹かれて舞い上がる黒く艶のある髪を押さえながら、目を細める日本は、この国では特別な感情を持って迎えられるのだ。
「さあ、ハマムにでも行こうかねえ?」
にんまり笑って言うと、日本は顔を真っ赤にして鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をした。
「やですよ!人に体を洗ってもらうなんて、恥ずかしくて無理です!」
「いいじゃねえか、俺がケセジやってやるってんだ!隅々まできれえにしてやらあ」
茶化して言うと、もっと真っ赤になった。
「もう!」
怒ったように言うけれど、本気で怒っていないのは、分かっている。
流れるように腰に手を当てればまた、当然のように体を寄せてきてくれる。
いつもよりぐっと近く感じて、なんだか幸せすぎて顔のにやけがとまらない。そうしていたら、それに気がついた日本が、仮面のした、少し出た頬をひっぱって、ばか、と呟いた。



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日本語王ネタは、ゆーちゅーぶで見た動画から。
トルコの日本愛さ加減に萌えた!
ハマムはトルコ風銭湯。ケセジという人にもこもこの泡で洗ってもらったり、垢擦りをしてもらったりします。男同士でします。(女風呂は女同士ですね)
ちょっとしたサディクのセクハラです
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