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瑪瑙の段に縋るとき

伊日
タイトルは西條八十の詩の一節から。
生温い性的表現あり。
基本的に、イタリアに臭い台詞を言わせたかっただけな小説です。ご注意を^^
瑪瑙の段に縋るとき




ひりり、とした視線を感じる。
自意識過剰なだけかも知れず、注意をすることはもとより、何か?と問うことすらできない。ただ、その視線に耐えて、何も無いように努めるしかない。
しかし、あまりに意識するせいで、視線がする方向へ顔を向けることもできず、ぎごちない、と思いながらも、まるで、その方向を見ることが罪であるかのように避けた。
会議は、まだ続いている。
隣に立つアメリカさんがありえない支離滅裂な意見を言って、いつもの通り、イギリスさんやフランスさんがちゃかして批判する。
ギリシャさんは相変わらず、猫をなでながらなにかあさっての方向を向いているし、スペインさんは隣のロマーノさんに楽しそうに話しかけている。(しかし、話しかけられているロマーノさんは仏頂面をしてまるで聞いていないようだ)反対となりのロシアさんは、その後ろに控えているベラルーシさんにおびえて、あるまじきことに、「いや、いや」とつぶやいている。(ちなみに、うまいこと、ベラルーシさんが「結婚」と呟くその間の手のように「いや、」と言うので、ロシアさんが一人で「結婚いや結婚いや」と言っているようにも聞こえる。)向こうの方に座っているドイツさんとオーストリアさん。オーストリアさんはなぜか会議室なのに優雅に美しいティーセットでお茶をしているし、ドイツさんは書類を握りつぶさんとしている。オーストリアさんの隣では、ハンガリーさんが嬉々として紅茶を次いでいた。ポーランドさんとリトアニアさんは、ポーランドさんが「そしたらぜんぶピンクにしたらええしーーー!なあ、ええと思わん?てかマジ最高だし!ありえんくない?」と言うのをなだめたりしている。見回す中、視線があったスウェーデンさんが、彼なりの笑顔で笑いかけてくれる。雑談していたのだろう北欧の面々がそれに気がついて、アイスランドさんやノルウェーさんが小さく手を振るのに返す。(デンマークさんは撃沈していた)。
「・・・・」
こうしてあたりを見回している間も、じっと見てくる感じは消えず、ロマーノさんの隣、わざと見ないようにしたそこに座る、イタリアくんが、なんとも怖くて見ることが出来ない。
(私、なにかしましたっけ・・・・・?)
けんかなんて、戦時中でもしたこともなかったし、気分を害してしまったということも考えられにくい。もとより、彼は気分を害したときはそれと素直に伝えてくるのだ。
と、すると、なんだろうか。分からない。
そもそも、今までこんなことはなかった筈だ。
会議が、ドイツさんの怒声を遮るように打ち鳴らされたスイスさんのライフル音で軌道修正される。
「一人、持ち時間は8分である。発表はデーダをもとに検証をしてあるもののみとする!私語、雑談は一切みとめない!発表する者は覚悟をするのだ!さあ、一番始めは誰が発表するのだ!手をあげるのである!」
捲し立てるスイスさんに、あっけにとられていると、イタリアくんの声がした。
「はいは〜〜い!俺がするよ〜〜!あのねえ、えっと、もう、12時をすぎているから、お昼にするのがいいと思います!」
「・・・・・・・・うむ、そうであるな。」
イタリアくんの意見に、うんうん、と珍しくスイスさんは頷いた。
「ではお兄様、皆さんにお部屋を出る前にくじを引いてもらいましょう?午後からの発表はその順番で、・・・というのはどうでしょう?」
「うむ。リヒテン、我輩もそれが良いと思う。そうしよう。」
会議はここでいったん終わり、皆、それぞれ食事の為に発ってゆく。
視線を避けるようにして、ロシアさんの影にまわり、部屋をでようとした。
(ロシアさんの、「あれ?どうしたの、日本くん?寒いの?僕のコートの中に入れてあげようか?」という声は無視した。)
「にっほ〜〜〜〜ん!」
あと一歩で、会議室を出るのだという矢先に、くだんのイタリアくんの声。
「は、い・・・・?」
なるべく見ないようにして、返事をすると、近くで茶色い髪が揺れたかと思ったら、ぎゅうぎゅうに抱きしめられていた。
「ちょ、イタリアくん??こういうのはだめですって・・・!」
「ヴェ〜〜!ごめん〜〜!でも、これは挨拶だよ?」
別段、悪びれることもなく、そうのたまった。
「そ、それは知ってますけど・・・。」
「ね、これから俺とご飯たべに行こう?美味しい店知ってるんだ〜〜!予約も入れてるんだけど・・・・、平気、かな?」
予約まで入れていると言われてしまうと、こちらは特に予定は無いわけだから、断る理由が無い。先ほどの会議中の痛いくらいの視線を省けば、かれはとってもいい友人なのだ。考え過ぎだったのだ、と忘れてしまえばいいではないか、と思い直してその誘いに乗ることにした。
さっさと手をさらわれて、振り返ったり、呆然とされた視線を受けながら、廊下を早足ですぎると、会議場からも飛び出して、気がつけば、テーブルの前で料理に舌鼓をうっていた。
「美味しい・・・!本当に、すっごくすっごく美味しいです!」
昼だというのに、勧められるままにワインまで飲んでしまって、少しだけ気分がハイになっているのが分かる。美味しいイタリアンに、美味しいイタリアンワイン。
赤ワインの芳醇な香りと口に広がる甘さも感じる酸味や滑るようなのどごしにうっとりとしながら、彼のおすすめだというパスタを頬張る。
正面に座るイタリアくんは、というと、にこにこ笑っているだけでちっとも箸・・・もとい、フォークが進んでいない。
「・・・?イタリアくん?どこか悪いんですか?ちっとも食べてないじゃないですか・・・」
そういったら、かれは見とれてしまうくらいに美しく笑って、
「どこも悪くないよ。ただちょっと、日本があんまりにも可愛いから、見とれてた。」と言った。
酒の所為だけではなく、体の熱がいっきに顔に集中する。
「え。え?・・・・え?イタリアくん?」
「黒曜石みたいに、月のない夜みたいに深い深い黒い瞳が滲んでさ、ときどき俺が映るんだ。バター色の肌もいつもよりほんのり赤くなってて可愛いし・・・・フォークを握ってるても小さくて可愛い。その先の桜みたいに色ついた爪もすっごくすっごく、・・・・美味しそうで。甘そうで。もう、なんだか、お腹いっぱいになっちゃった。」
さらり、とそんなことを言って退けた彼は、自分の顔がどんなことになっているのか、分かっているのだろうか。分かっているのだろう。それでいてこんなことを言う。口説かれているのだと、思っても仕方ないではないか。
「・・・・・爺をからかっちゃ、いけません。・・・・練習相手なんて、嫌です」
「冗談じゃないよ。本命を前にしてちゃ、練習通りにも、予想通りにもいかないんだから。・・・・本当は、ここで日本をさらって、俺の部屋まで連れてっちゃうストーリーだったんだけど・・・」
ふふ、と笑う彼は、とても妖艶、と言える。
「いいですよ・・・。爺に、イタリア人の本気を見せてください。」
すらすらと、酒の成果か普段なら口に出来ない強気なことばが出た。若い頃にもどったかの錯覚すら覚える。
嘘なら嘘でいい。慕っている人間に抱かれたらそれはそれで捨てられてもそれを頼りに生きて行けるではないか。
(あ、そうか、私は彼が好きだったんですか。)
イタリアくんの指が、フォークを置いてテーブルに添えていた手をゆっくりとたどる様に撫でた。
その手はぎゅっと私の手を握って、立たせると、さっさと会計もせずに(ただ彼は、「ごちそうさま!グラッツェ!あとよろしく!」と言っただけだった。)店を出た。

「・・・・ふ、ぁ!」
執拗に咥内を荒らされて、胸が激しく上下する。頬を伝う二人分の飲みきれなかった唾液が顎を伝って首筋へ流れる。
酒がまわってぐらぐらするし、異様に体が熱い。
着いてすぐに、二人服を脱がせ合ったために、何も纏わない体が心細い。
触られもしないのにまた立ち上がってしまった自身を、不意に自分よりも数段大きな彼のそれでこすられて、思わず腰が浮く。
「ひぁ!」
その声を聞いてか、彼は悦の入った顔で笑った。
彼の手は、何度も何度も誰にも触らせたことのない場所を出たり入ったりしている。その指がなにかを霞めた。
「ぁああ、っ、な、!」
体に電流が走って、あまりの快感に達してしまって、彼の腹と、自らの腹が白濁で汚れた。
「みいつけた・・・・・。」
また、電流が走る。びくびくと自分でもおかしいと思うのに、体から力は抜けるは、震えるわで混乱してしまう。
「や、です、だめ。」
とっさに、そういうと、イタリアくんは、どうして?きもちいいでしょう?と言ったが、
「だって、変に、なっちゃいます・・・・!」
と返すと、急に真顔になった。不安になって、イタリア、くん?と声をかければ、彼はえへへと笑った。
「・・・・我慢できない・・・や・・・。ごめんね?」

「おい、イタリア、日本はどうした?」
午後の会議、一番手で発表を始める予定だった日本は、会議が始まっても姿を見せなかった。不思議に思ってきくと、イタリアは見たことのない顔で、にっこり笑って、言った。
「ヴェ〜〜、あのねえ、腰が痛くて動けないからお休みさせたんだよ〜〜!」
その場の全員の目が点になったのは言うまでもない。
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