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薬は甘いキスにして

伊日。
日本が風邪をひきました。
薬は甘いキスにして





朝起きたら、頭が痛いし、なんだか顔が熱い。
布団で頭を覆ってしまったみたいにぼんやりしているし、お手洗いに行こうとして布団から出たら、足が覚束ないし、ひどく寒かった。
廊下の壁を手すりにして、目的地に向かい、同じようにしてまた寝床へもどる。
今日は到底起きたくなかったのだけれど、そういう分けには行かない。
自国で会議があるというのに、自分が参加しないわけにはいかないし、第一、ホスト国にはやるべきことが山積みなのだから。
昨日、到着した面々にさんざん飲みにつき合わされ、それなりに冷える夜に、カッターシャツ一枚では少し冷えたのだろう。
こめかみをもみながら、のそのそと起き上がる。ため息をついて、寝間着の帯を引いた。

「おはようございます」
続々と入場してくる各国の代表団と、国の化身たち。
一番乗りでやってきたのは、やはりドイツさんで、代表団もきっちりとしたスーツをびしっときめているし、どことなく、ドイツさんと似ていて、なんというか・・・ごつい。かつてその隆々とした筋肉に憧れたモノだが、もうあきらめた。こんな老体には無茶な話だった。
「おはよう、日本。いいホテルを用意してくれて助かった。朝食のブルストと黒パンもなかなかの味だったぞ。」
「おや、よかった!そうおっしゃっていただけると本当に嬉しいです」
ドイツの方と結婚されたという女性が、旦那さんと一緒に作った小さなホテル。代表団を泊めるには適さないとは思いながらも、遠いところからわざわざやってきてくれる彼のために、なんとかリラックスできる空間を、という意見に、自国の手配係や上の者たちも賛同してくれて、こういうことになった。と、言っても、そんなことをしたのは、ドイツさん相手だけで、他の人には、仲の良い国同士で集まってもらい、グループに分けてホテルに行ってもらった。
「あーー、ん、その、すばらしい心配りだった。感謝する。」
耳を赤く染めて、照れながらもそういう彼は、とっても愛らしいと思った。(そんなことを本人に言うと、間髪入れずに、すこしどもりながら、「そ、そんなことはない!にほん、お。お。お前の方が、だな・・・」と返されるのは分かっているので、思っただけにとどめた)
「ところで、日本、顔色がわるくないか・・・?体調でも悪いのか?」
「・・・・え、そうですか?・・・・ちょっと頭痛がするだけですから、平気ですよ。」
そこまで言って、他の国々も続々と入場して、挨拶にやってくるから、彼はその波にのまれて深く追求されずに終わった。
「おはよ〜う、にほんっ!はぐはぐ〜〜!」
あとは入場していないのはスペインさんとイタリアくん、ギリシャさんだけとなったとき、どかん!と突進してきたのはイタリアくん。
「おはようございます、イタリアくん。・・・・お待ちしてました」
いつもは、恥ずかしいと思い、引き離すのだけれど、頭痛とおそらく熱、でだるくて離すこともできず、されるがままになっていると、それを不思議に思ったのか、彼はしばらくしてすぐに離してくれた。
「?日本?・・・・・熱?」
抱きしめられた時にわかったのだろうか、心配に揺れる瞳に、ぼうっとした頭がぬるま湯につかったみたいにふやけて行く。
「平気ですよ、ちょっと、だけですから。」
「・・・・・言とくけど、俺、そんなんじゃ騙されないよ?すぐ無茶するんだから。俺、日本が心配なんだ、隠さないでよ・・・。」
「・・・・す、すみません・・・・」
「もっと甘えてくれていいのに〜〜。」
素直に肯定すると、はあ、っとため息をついて、また抱きしめられた。
ふんわりと香る甘い匂いは、彼の香水だ。あまりきつい匂いは好きでない彼は、自分だけの専用の香りを調香師に作らせているそうで、服装と同じく、纏う香りもお洒落で洗練されている。ふんわり、と香るくらい、それが一番なんだと、前に言っていた。その、自分にとってはもはや安心する香りとなっている彼の香りは、甘えさせるに十分の効果を示す。
「・・・イタリアくん、私、本当はとってもしんどくって・・・・頭も痛くて、今すぐ横になりたいくらいなんですよ・・・。でも、ホスト国がそんなこと、する訳にはいかないでしょう?だから、ちょっとだけ、スペインさんか、ギリシャさん、どちらか最後の方がくるまで、こうしてくださいませんか?」
彼の方に顔をくっつけて、深呼吸をする。彼の甘い香りが胸いっぱいに広がった。
「ヴァベーネ!」
ふんわりと体が浮いて、目を白黒させていたらいつの間にか、ソファーに座ったイタリアくんの足をまたいで、向かい合っていた。
「・・・これで、ゆっくりできるでしょ?無理は禁物だよ、アモーレ。」
そういって、キスを送ってくるから、いつもなら、「な、なんですか!」とか「恥ずかしい・・・」とか言えるのに、勝手が違って、真っ赤になって胸に顔を押し付けるしか出来なかった。



いつのまにうとうとしていたのか、はっと起きると、自国は当初、会議を始める予定だった時間を20分オーバーしていた。
「えっしまった!寝てました・・・!イタリアくん、離してください、遅れてしまいます」
「大丈夫だよ、スペイン兄ちゃん、まだ来てないから。遅れてくるように連絡したんだ〜」
「ええ、ぇ、ぇえええええ?!」
結局、スペインさんの到着が遅れて、会議は40分遅れて開始。
それにも関わらず、いつもとはまるで違ってスムーズかつスピーディに会議はすすみ、なぜか予定より10分も前に終わった。
参加者が言うには、
「イタリアの視線が怖かった」とか、「イタリアが途中、脱線しそうになると銃を取り出して磨きだして恐ろしくて話を中断せざるを得なかった、」とか、不可解な意見が多数あがったとか、あがらなかったとか。
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