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甘美を覚えて復讐をとげる

伊日(ww2)
何が故に復讐を誓う、の続き。
なんか伊が口悪いしSっぽいです。日本も口悪いです。そして、イギリスが不憫・・・・
甘美を覚えて復讐を遂げる





敗戦の色濃く、身の内に渦巻く分裂した感情に悪心が胸を襲った。
この不毛な戦争を終わらせることができるとしたら、それは世界の終わりを意味する。
しかし、その私の世界が終わりを告げたとしても、私以外の世界はかわらず回り続ける。私一人を置き去りにして。
苦渋の選択(だと思いたいし、信じている)で連合側に寝返ったイタリアさんにも、力つきて降伏したドイツさんにも、恨みも、怒りも抱いてはいない。ただ、かわらず生き続けるであろう彼らに安堵した。そして、別れを覚悟した。
かたく繋ぎあった筈の手は、もう今はすべて無くして今は誰の手もつかんでいない。空っぽになった両の手。それでも、自分の中に宿る幾千の命の為に、これからを暮らす命のために、地の礎を築く。
疲れた。もう休みたい。眠りたい、終わりたい。人であったなら、とうに命を捨てているだろう。一度目の兵器の投下を受けて、体に宿る大きな数の命が失われて、膝をついて血を吐いた。ちりちりといいながら体が一瞬にしてケロイドに覆われる。滲む血を押さえて、爛れた肌を抉る。痛みだけが、意識を保たせてくれる。もう終いだと思うのに、もう一人の自分はまだ戦えると、狂信的にまでに勝利を欲する。心の底では負けだと分かっているだろうに、それでも暗い目をしていながら走り続ける。
二度目の投下。
もう一人の自分が消えた。
私の体も、燃え上がった。そして、こころに風穴が開いたように、民が失われた。
半身であろうとしたものを消し去られて、立っていることもできなかった。ロシアさんがそれを見計らって、私の腕を斬りつけた。腕にぐるりと現れる、忌々しい呪いの刺青。もう、立ち上がることも、目を向けることも、できなくなった。
意識が、消えた。

目が覚めたら、見慣れた天井ではなく、一面の白。どこにいたのか、思い出せない。口がからからになっていて、息をすれば血の味がした。思うように動かない体のせいで、のたのたと視線を動かすしか出来なかったが、今まで見たことのない部屋だった。
「・・・?」
体に巻き付けられた、コードが目に入る。
ここは、病院か。
「wow!目が覚めたのかい?」
大きな声が耳を劈く。視線だけでそちらを向けば、敵である筈の男がそこにいた。忌々しいとしか言いようが無い。ただ、捲し立てるその男を、じっと見るしか無かった。そうか、負けたのか。そして、今、自分はこの男に支配されている。
イタリアさんは?ドイツさんは?二人がどうなったのか、知りたかったが、声もでない自分では、どうしようもなかった。ただ、じっと黙って、聞きたくもない姦しい声を耐えた。
回復は早く、しばらくして、ようやく自宅に帰ることを許された。
自宅は、無惨に門は焼け落ちて、飛び石や庭の木も、ところどころ焼けたあとがあった。両脇に控える、男。アメリカと、イギリスは、あたかも当然というようについてきて、勝手に上がり込んで、大切にしていた思い出の品たちを焼き捨ててしまった。
悲しくはなかった。負けた自分が生きている屈辱と、未だに一人では歩くことすらままならず、ともすればすぐに崩れ落ちてしまうような体を持っている自分の不甲斐なさと、戻らない時を思って、なぜだか涙が流れた。

誰かに手を握られて、少しの痛みに意識が浮上した。
ゆらゆらゆれるくるんとした髪に、ふわふわと現実に引き戻されて行く。瞳をずらせば、どれほど会いたいと願ったか知れない、イタリア、その人がいた。
「ごめんね、最後まで、一緒にいられなくて、ごめんね・・・・・!」
彼は目を涙でいっぱいにして、言った。彼に謝られることなんて、ない。すべては、自分の責任なのだ。頼りなかったばっかりに、友を裏切るという、彼の心に消えない傷をつけてしまったのだから。
『ごめんなさい、助けられなかった』そう言ったつもりが、やはり声は伴われなかった。彼に会えば、なおるかもしれないと思ったのだ。しかし、そうなると、コミュニケーションが出来ない。
ならば。
彼の手を引いて、唇に招き、もう一度言った。
「なんで、ごめんなんて・・・・!」
『約束を、守れなくてごめんなさい』
助け合おうと、言ったのに。
「ごめんね、ごめ・・・んね!俺、俺・・・!」
ああ、なんてかわいい人だろう、やはり、自分の信じていた通りの人だった。自分の不甲斐なさのために、裏切らざるを得なかったのだというのに、かれは自分の罪としていたなんて。
愛しくて愛しくて、たまらない。けれど、これを伝える言葉がない。
本当なら、抱きしめて、頭をなでて、大丈夫ですよ、と言ってあげたいのに。
彼の手のひらに、舌を這わせる。唯一覚えた彼の国の言葉。心からの愛を込めて。
「Ti amo」
目を見開いて、彼は日本語で愛してると言ってくれた。
こんなにも、愛しているのに、近くにいるのに、こんなにも遠い。
いつか、また彼の隣に何のしがらみも無く、自分が自分として立つことができるのだろうか。
そんな日がくればいいと願う。けれど、この先、自分がどうなってしまうのか、あの二人にしか知れない。もののように扱われるのだろう。意思も、なにもなく。
イタリアくんの、奇麗な瞳が、近くなる。目を閉じれば、ずっと求めていた、懐かしく、そして熱くなる口づけ。まるで食べられているみたいに深い。
舌が絡み合って、吸われて、息が出来ない。
飲み込めなかった二人分の唾液が、あごを伝っていく。
それを舐めとったイタリアくんのその瞳は、激しい嫉妬に燃えていた。
「カヴァリエレ気取りのヴァッファンクーロの鼻をへし折ってやらなきゃね・・・」
彼のその言葉に、甘美をおぼえた。
(そうだ、私は彼らだけを、イタリアくんとドイツさんだけを求めている・・・。他は全部、いらない。・・・騎士気取りの青二才のプライドをへし折ってやらなければ。・・・いつまでも私に清純を夢見る夢遊病者の頬をたたいて、目を覚まさせてやらねばならない・・・。私は負けた。これからはどんな屈辱でも受け入れてみせる。しかし、心までは立ち入らせはしない。許さない。)

去り際の、イタリアくんの唇を視界にとらえた。
「見てて、」それだけ言って、かれは扉の外に、消えた。

「日本!もうそろそろ時間だ!会議会場に行くんだぞ!」
もう大分と回復して、一人で生活をできるようになった日本を見て、言った。
前にも増して、無表情を崩さなくなった、気味の悪い能面のような顔の日本は、落ち着いた声で、一言、はいと言った。
彼は、無駄な会話を好まない。なにをもってして無駄だというのかと言うと、それは日常のことだったり、誰かのうわさ話だったり。自国の回復や事業などの事務的な話以外は、まるで反応がない。聞いてはいるのだけれど、相づちも無ければ、ぴくりともしない。イギリスは、前に好きだったというバラを持って訪ねたところ、受け取っただけで見向きもせず、机の上におかれただけだったというし、フランスが訪ねていっても、抑揚の無い、まるで感情を感じることの出来ない声で、「はい、」「まあ、」「おや、」「そうですか」しか話さなかったと言った。
「まあ、と言っても、顔見せ程度なんだけどね!辛くなったら別室で休んでくれて構わないし・・・・」
「さようですか、畏まりました。」
「あ、・・・・うん、あー・・・」
「何か?」
もう用事はすんだ、と馬鹿裏に、黒い瞳は底なしの沼になる。
「・・・・・まだ、恨んでいるかい?」
あんな目に、会わせたことを。そう聞いたけれど、かれは一切の感情を表さず、しかし、恐ろしくさえ思える満面の笑みで、
「まさか!」と返した。
それ以上なにも言えなくて、そのまま無言で、並んで会場の中へと足を踏み入れた。
復権してようやく姿を現した日本に、皆、様子を案じていたのか、一様に安堵の表情をしている。しかし、会議が始まって、すぐに彼の異変に気がつき、ある者は青ざめ、ある者は眉をしかめ、ある者は恐怖を顔に露にした。
日本が、笑っていた。先ほどの、恐ろしいほどの笑みで。
不気味なその顔を、一切崩すこと無く、じっと、何も言わずに椅子に座って話を聞いている。恐ろしい光景だった。
「日本、その顔、やめるんだぞ!みんな、怖がってるじゃないか」
能面のように動かない表情に耐えきれず、そう言うと、日本は「おや、さようですか?気がつきませんでした。・・・・笑顔の方がお好みかと思いましたのに。」と言って、一瞬にして、すべての表情を消し去った。
穴蔵のように、底なしの無表情に、よけいに恐怖心が募る。
「・・・・にほん!体調、悪いの?すっごく顔色わるいよ〜!」
しんと静まり返って、固唾をのんでいた中、ヴェ、という声とともに、底なしにの〜んびりした笑顔のイタリアが進み出た。
イタリアは、日本の腕をとると、立ち上がらせて、会議場の後ろの扉へ向かう。
「ちょっと待ちなよ!日本は会議に出ないと・・・・!」
「・・・・お前、分からないの?日本がこんなに辛そうにしてるのに・・・」
同様に、人でも殺せそうな冷たい空気を放ちながら、イタリアが言う。
日本を扉から外に滑りださせると、彼は欧州の人間としては小さいと思える体であるのに異常なほどの腕力で胸ぐらを掴んで引き上げた。



「日本にバーチョでもしてもらっていい気になってたの?マンモーニ?お前のマンマも今日でお別れだよ・・・・。」




「イタリアくん、ずっと、会いたかったです・・・」
久しぶりに体を繋いだ後の、甘ったるい空気が部屋を包んでいる。
決して厚いとは言えないイタリアの胸に頬を寄せて、日本が言った。
イタリアは、日本の髪を梳いて、うん、俺も。と返した。
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