秋に狂うプリマベーラ
西日。
立日に続き、金木犀ネタ。
立日に続き、金木犀ネタ。
秋に狂うプリマベーラ
「今日もええ天気やなぁ~。」
スペインさんののんびりした声が、縁側から聞こえて、朝食を準備していた手を止めて、そちらに向かう。確かに、雲一つない秋晴れである。
「そうですね、晴れてよかった。」
昨日は久しぶりの大雨に見まわれていた。
雨は別段嫌いではないのだが、やはり客人のあるときは、天気が良いほうが嬉しい。
1ヶ月に一度はやってくるスペインさんに対しても同じで、やはり彼が来ているからには天気がいい方が良い。
「別に雨が嫌なんちゃうんやけどなぁ~、やっぱり晴れとる方が何か元気でるんやよなぁ。」
「分かります。」
そう言って、また台所に引っ込む。味噌汁と、おかずをお盆に乗せて、食卓へと並べると、スペインさんもようやく縁側から離れて、にこにこと笑いながら席についた。
「ん?何やろ?日本、何か匂いせえへん?」
「は、…何でしょう…」
「甘い匂いするやん!…日本て香水付けとったっけ?」
スペインさんの言う甘い香りというのが分からなくて、首を傾げる。自分には、美味しい味噌汁の芳しい香りしか分からない。
「…まあ、えっか。ほな、いただきます!」
ぱっちん!と手を合わせて、ペコリ。随分彼も日本式に慣れたものだ。
お箸も上手に持って、豆の煮付けをうまいこと挟んで食べている。終始にこにこを崩さず、いちいち美味しいなぁ!うわっうまっ!とか言って誉めてくれるスペインさんに、笑みがこぼれた。
「えっ!この卵焼き、中にトマト入っとるやん!」
「ふふ、気がつきました?…せっかくですから、ちょっとやってみました。トマト、お好きでしょう?」
「好きどころっちゃうで!日本の次くらいに好きやもん!うわっめっちゃ美味しいやん!」
「お口にあってよかった。」
食事の間も、二人きりだというのに実に賑やかで、彼が去ってしまった後、独りきりで食べるのが、苦痛になるくらいだ。
彼がもって来てくれたトマトを使って、トマト入りの卵焼きを作ったのだが、正解だったようで嬉しい。卵にトマトは合う。だから至極当然ではあるのだけど。
嬉しそうに頬張る彼を見ていると、知らず知らずのうちに箸が止まっていたのか、スペインさんは心配そうに「日本、どないしたん?元気あらへんよ?」と言った。
「はは、あまりにもスペインさんがおいしそうに食べてくださいますので、ちょっと見惚れてしまいました。…これでは、貴方が帰ってしまった後、食事が詰まらなくなってしまう筈です。」
「!」
ぽろ、と卵焼きが、ご飯の上に落ちた。
スペインさんは呆けたようにこちらを見ている。
「どうしました?」
「日本!それはあかんわ!何や、親分照れてしもたやんか~」
言うたら、日本は俺のことめっちゃ好きやで!ってことやんか!そんなんずるいわ~!
目を覆って、まるで、映画の中、神に祈るようなポーズをとったスペインさんに、そして今し方彼がまくし立てた言葉に、赤面する。
自分でも、気がついていなかったのだ。
「…す、すみません、意図的ではないとはいえ、…」
「謝らんといて!俺も、ずっと日本のこと好きやってんから!せやけど、ずぅっと離れとったから、言い出せへんかったんや。」
好きやで、日本!愛しとるよ!そう言って、許可もとらずに、スペインさんは、卵焼きの香りのする唇を合わせた。
何も言えず、目を見開いていると、とどめのように、彼は言った。
「せやけど、親分はずるいんやで。…通い続けとったら、日本が俺に情が湧くんやないかなって、思っとったんや。……よけい、日本が好きになるだけやったけどな」
『金木犀の季節になりました!こちらの公園では…ー』
スペインさんの唇を味わいながら、つけっぱなしのテレビから聞こえてくるアナウンサーの声に、はっとした。
甘い香り。その甘く香る人を陶酔させる香りは、もう秋が深まったという証で、彼の言う通り、私の体からにじみ出た、この国の秋の知らせだった。
「今日もええ天気やなぁ~。」
スペインさんののんびりした声が、縁側から聞こえて、朝食を準備していた手を止めて、そちらに向かう。確かに、雲一つない秋晴れである。
「そうですね、晴れてよかった。」
昨日は久しぶりの大雨に見まわれていた。
雨は別段嫌いではないのだが、やはり客人のあるときは、天気が良いほうが嬉しい。
1ヶ月に一度はやってくるスペインさんに対しても同じで、やはり彼が来ているからには天気がいい方が良い。
「別に雨が嫌なんちゃうんやけどなぁ~、やっぱり晴れとる方が何か元気でるんやよなぁ。」
「分かります。」
そう言って、また台所に引っ込む。味噌汁と、おかずをお盆に乗せて、食卓へと並べると、スペインさんもようやく縁側から離れて、にこにこと笑いながら席についた。
「ん?何やろ?日本、何か匂いせえへん?」
「は、…何でしょう…」
「甘い匂いするやん!…日本て香水付けとったっけ?」
スペインさんの言う甘い香りというのが分からなくて、首を傾げる。自分には、美味しい味噌汁の芳しい香りしか分からない。
「…まあ、えっか。ほな、いただきます!」
ぱっちん!と手を合わせて、ペコリ。随分彼も日本式に慣れたものだ。
お箸も上手に持って、豆の煮付けをうまいこと挟んで食べている。終始にこにこを崩さず、いちいち美味しいなぁ!うわっうまっ!とか言って誉めてくれるスペインさんに、笑みがこぼれた。
「えっ!この卵焼き、中にトマト入っとるやん!」
「ふふ、気がつきました?…せっかくですから、ちょっとやってみました。トマト、お好きでしょう?」
「好きどころっちゃうで!日本の次くらいに好きやもん!うわっめっちゃ美味しいやん!」
「お口にあってよかった。」
食事の間も、二人きりだというのに実に賑やかで、彼が去ってしまった後、独りきりで食べるのが、苦痛になるくらいだ。
彼がもって来てくれたトマトを使って、トマト入りの卵焼きを作ったのだが、正解だったようで嬉しい。卵にトマトは合う。だから至極当然ではあるのだけど。
嬉しそうに頬張る彼を見ていると、知らず知らずのうちに箸が止まっていたのか、スペインさんは心配そうに「日本、どないしたん?元気あらへんよ?」と言った。
「はは、あまりにもスペインさんがおいしそうに食べてくださいますので、ちょっと見惚れてしまいました。…これでは、貴方が帰ってしまった後、食事が詰まらなくなってしまう筈です。」
「!」
ぽろ、と卵焼きが、ご飯の上に落ちた。
スペインさんは呆けたようにこちらを見ている。
「どうしました?」
「日本!それはあかんわ!何や、親分照れてしもたやんか~」
言うたら、日本は俺のことめっちゃ好きやで!ってことやんか!そんなんずるいわ~!
目を覆って、まるで、映画の中、神に祈るようなポーズをとったスペインさんに、そして今し方彼がまくし立てた言葉に、赤面する。
自分でも、気がついていなかったのだ。
「…す、すみません、意図的ではないとはいえ、…」
「謝らんといて!俺も、ずっと日本のこと好きやってんから!せやけど、ずぅっと離れとったから、言い出せへんかったんや。」
好きやで、日本!愛しとるよ!そう言って、許可もとらずに、スペインさんは、卵焼きの香りのする唇を合わせた。
何も言えず、目を見開いていると、とどめのように、彼は言った。
「せやけど、親分はずるいんやで。…通い続けとったら、日本が俺に情が湧くんやないかなって、思っとったんや。……よけい、日本が好きになるだけやったけどな」
『金木犀の季節になりました!こちらの公園では…ー』
スペインさんの唇を味わいながら、つけっぱなしのテレビから聞こえてくるアナウンサーの声に、はっとした。
甘い香り。その甘く香る人を陶酔させる香りは、もう秋が深まったという証で、彼の言う通り、私の体からにじみ出た、この国の秋の知らせだった。
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店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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