アモーレのすすめ
伊日。
何がいいたかったかというと、このようにしてイタリア化した日本ができあがるっていう……
続く…かもしれない
何がいいたかったかというと、このようにしてイタリア化した日本ができあがるっていう……
続く…かもしれない
漸く季節もよくなり、休みが取れたから、ふいに思いついたら連絡をするのも忘れて飛び立っていた。13時間と少しのフライトを終えて降り立ったミラノの空港は、まだ自国では日差しが暑く、汗もかくくらいだったのに、少し肌寒いくらいだ。
念のため持っていた羽織りを肩にかける。余りにも急いだせいで、着物姿である自分は、ひどく衆目を集めている。片手のトランクをぐぐっと引き寄せる。仕方がない、ホテルで着替えよう。
空港の横にあるホテルでフロントを見渡せば、見知ったホテルマンが笑顔で手をあげている。
「Ciao!ベッラ!今日はヴァルガスさんとは一緒じゃあないんですか?」
こちらは男であると毎回言うのに、またも手を取り甲に熱いキスを頂いてしまった。訂正するのも面倒なので放っておくことにして、頷く。いつもは、ヴェネツィアから彼とここ、ミラノにやってきて、空港のこのホテルで一泊、それから飛行機に乗って帰るのだ。
行きは彼が迎えてくれて、そこから列車で2時間の旅である。当然ホテルになど、寄らない。
「ええ、今日は何も言わずに来ましたから。…この服を何とかしたいんですが。着替える場所、貸して頂けます?」
羽織りを摘んで眉をあげると、心得た、とばかりに、頷くと、すぐに鍵を持ってカウンターから出てきた。
さっとトランクを攫ってさっさと前を歩く彼の後を追いかける。
「いつもすみませんね、」
そう言うと、にやりと笑って、
「ヴァルガスさんの恋人に失礼はできませんて!」
「え、な、何?何ですって?」
空港から電車に乗り換える。そこからまたユーロスターに乗り換えれば、彼の住むヴェネツィアまでは優雅に列車の旅が出来る。ローマの家に行ってしまっていれば、それまで、だ。
チケットを買って、もうすでに待っていた電車に乗り込む。乗ったと同時に滑り出す列車に、足をとられながら、前から歩いてくる乗車員らしき人物に片言ではあるが席を尋ねた。
「Dov'e il mio posto?」
乗車券を差し出しながら伝えると、
「ヴェッ!菊の席はここだよ!」
と腕を取られた。バランスを崩して抱かれるかたちになってようやく顔を上げると、今頃ヴェネツィアの家に居る筈の人物。乗車員の制服を着ているので気がつかなかったが、確かに彼である。
ぎゅっっと抱きしめる力を強くして、肩口に顔をうめているが、思わず停止しかけた頭をフル回転させてなんとか声を絞り出した。
「う、イタリア、くん?」
「Si!驚かそうとしたんだけど、成功?かな?」
「あ、はい、…吃驚しました…」
彼の花の咲いたような顔に気圧されて、問い詰める気が失せた。
「あのねぇ、日本ん家の人が電話くれたんだぁ~っ!」
走り出した列車の中を手をつないで歩き出す。嬉しそうに言うが、確か自分は口止めをした筈だったのだが、と内心ため息をついた。今頃、生暖かい笑顔を浮かべたしてやったりな部下を思い出して、苦笑い。
コンパートメントにつくと、乗車員の制服のジャケットを脱いでまたキラキラした目で語りかけてくる。
「日本がね~、俺のとこに行きましたので、よろしく!って!『あの人、見た目が幼いから危険だから』だって~!」
わは!と言って笑うが、こちらには笑えない話だ。何が危険なのかさっぱり分からない。
本当に、自分は彼らよりも遥かに年上だというのに。
「…でも、俺と居たほうがよっぽど危険なのに、ね!」
「へ!?」
するり、と首筋を、彼の細いがしっかりと男、の形をしている指が辿る。口の端に笑みを浮かべた彼のそんな顔を見ることが出来るのは、一体何人くらいいるのだろう。害のない羊のように見えて、その実、彼の中は獰猛な狼である。舌なめずりをしている姿が脳裏をよぎる。
「あのね、この周り、誰も入れないようになってるんだ。」
「、それは、どういう…?」
ふふ、と笑って彼は答えないが、どういう意味かなんて、聞かなくても分かる。聞かなければ分からない程経験も浅くない上に、かまととぶっても美味くない。
ため息をついて、彼のシャツのボタンに手をかけた。
大人しく脱がされるままになっているが、かれの顔といったら、だらしなく緩んでいるのに格好がついて綺麗だ。細められた青い瞳。そんな顔に興奮する自分も自分だとは思うのだけれど。
待ちきれなくなった彼に、唇を奪われる。隙間を無くそうとするみたいなその口付けは、深く、深く、喉の奥まで届くのではないかと思う程だ。舌を絡めて吸い上げる。じゅっ、と卑猥な音が鳴る。
酸素を求めて顔を反らそうとしても、それをさせまいとする彼の手によって頭を固定されて、ままならない。漸く解放された時にはもう既に随分と乱れて息も絶え絶えである。
「…はっ、はぁ、…」
「きく、きく…愛してる…」
切羽詰まったような、うっとりしたような顔をして、シャツの下を彼の手が撫でる。
このまま流されると、本当に危険だ。旅の恥は書き捨て、とは言うが一番書き捨てたい人は忘れてくれない訳で。
「だ、めです!イタリア、くん!こんな…!」
「フェリシアーノって呼んでよ、菊…」
既にたいして力も入らない手で、肌を弄る彼の腕を掴むが、かれはにこりと笑って耳元に息を吹きかけられた。
「…っ!」
不本意にも、体が震える。彼を煽るだけだというのに。
赤い舌が、ちろりと見える。
にんまりと笑い、彼はまた唇を奪った。
ああ、もういいか、会いたいから飛んできた訳だし、ここはイタリアな訳だし。何だか、自分もイタリア人になった気になっていいきがしてきた。
自分の髪の毛がひより、と一本くるりとなって浮かんだのが横目に見えた。
「フェリシアーノくん、会いたかった……愛してます。」
とろける甘さの空気の中、息も絶え絶えそう言うと、捕食者の瞳が甘くなって花を咲かせた。
「ヴァ・ベーネ!アモーレ!」
いつの間にか眠っていたのか、目が覚めたらふわふわのベッドが体を包んでいた。
「…ん?」
あたりを見回せば、まだ日は照っている。
「フェリシアーノ、くん?」
部屋は静まり返って気配がない。しかし、鼻をくすぐるのは美味しい香り。トマトやバジルの香りだ。くう、とお腹が鳴る。
もそりと体を起こして、部屋を出ると、案の定、かれはキッチンで鼻歌を歌いながら料理をしていた。
「おはよう、ございます?」
「ヴェ!おっはよ~!今お昼作ってるからね~」
不覚にも、朝食をとってからまたうとうとと寝てしまったようだ。ソファに座っていた筈だから、ベッドまで運んでくれたのは彼だろう。まだ時差ぼけが残っていたようだ。
イタリアくんの作る料理は美味しい。自国でもかれの国の料理は大人気で、彼の国自体、嫌いな人なんていないんじゃないだろうか。国民の行きたい国ナンバーワンをずっと独占しているくらいだから。本場のイタリアンも何度も口にしているが、それでもやはり、彼の作る料理にはどれも及ばない。以前そう言ったら、同じことを返されてひどく恥ずかしい思いをしたので、二度、同じ過ちは犯すまい、と口を噤んだ。
テーブルのセッティングももう終わっているし、あとは、本当に盛り付けて終わりなようで、「座ってて!」という言葉に甘えて席についた。
窓の外は、緑が撓わな庭に、暖かな光が差し込んでいて、まるでこの世のものではないような景色だ。
向こうの方に、緑に埋もれるようにして見える柵が、唯一ここが人のすんでいる場所だと知らせてくれる。
窓からは、たらんとした風が吹いている。また睡魔に攫われてしまいそうだ。
「菊、お待たせ!できたよ~」
はっとして顔をあげると、できたてのパスタがほくほくと湯気をたてていた。
「まあ!美味しそうです、イタリアくん、さすがです!」
「フェリシアーノ、だよ」
「あ、フェリシアーノくん…」
すかさず訂正が入ったが、口に入れた料理の余りの美味しさに、美味しいですフェリシアーノくん!を連発して、彼の名前を呼ぶのが恥ずかしいというのを忘れてしまった。
「菊がよろこんでくれてよかった!」
念のため持っていた羽織りを肩にかける。余りにも急いだせいで、着物姿である自分は、ひどく衆目を集めている。片手のトランクをぐぐっと引き寄せる。仕方がない、ホテルで着替えよう。
空港の横にあるホテルでフロントを見渡せば、見知ったホテルマンが笑顔で手をあげている。
「Ciao!ベッラ!今日はヴァルガスさんとは一緒じゃあないんですか?」
こちらは男であると毎回言うのに、またも手を取り甲に熱いキスを頂いてしまった。訂正するのも面倒なので放っておくことにして、頷く。いつもは、ヴェネツィアから彼とここ、ミラノにやってきて、空港のこのホテルで一泊、それから飛行機に乗って帰るのだ。
行きは彼が迎えてくれて、そこから列車で2時間の旅である。当然ホテルになど、寄らない。
「ええ、今日は何も言わずに来ましたから。…この服を何とかしたいんですが。着替える場所、貸して頂けます?」
羽織りを摘んで眉をあげると、心得た、とばかりに、頷くと、すぐに鍵を持ってカウンターから出てきた。
さっとトランクを攫ってさっさと前を歩く彼の後を追いかける。
「いつもすみませんね、」
そう言うと、にやりと笑って、
「ヴァルガスさんの恋人に失礼はできませんて!」
「え、な、何?何ですって?」
空港から電車に乗り換える。そこからまたユーロスターに乗り換えれば、彼の住むヴェネツィアまでは優雅に列車の旅が出来る。ローマの家に行ってしまっていれば、それまで、だ。
チケットを買って、もうすでに待っていた電車に乗り込む。乗ったと同時に滑り出す列車に、足をとられながら、前から歩いてくる乗車員らしき人物に片言ではあるが席を尋ねた。
「Dov'e il mio posto?」
乗車券を差し出しながら伝えると、
「ヴェッ!菊の席はここだよ!」
と腕を取られた。バランスを崩して抱かれるかたちになってようやく顔を上げると、今頃ヴェネツィアの家に居る筈の人物。乗車員の制服を着ているので気がつかなかったが、確かに彼である。
ぎゅっっと抱きしめる力を強くして、肩口に顔をうめているが、思わず停止しかけた頭をフル回転させてなんとか声を絞り出した。
「う、イタリア、くん?」
「Si!驚かそうとしたんだけど、成功?かな?」
「あ、はい、…吃驚しました…」
彼の花の咲いたような顔に気圧されて、問い詰める気が失せた。
「あのねぇ、日本ん家の人が電話くれたんだぁ~っ!」
走り出した列車の中を手をつないで歩き出す。嬉しそうに言うが、確か自分は口止めをした筈だったのだが、と内心ため息をついた。今頃、生暖かい笑顔を浮かべたしてやったりな部下を思い出して、苦笑い。
コンパートメントにつくと、乗車員の制服のジャケットを脱いでまたキラキラした目で語りかけてくる。
「日本がね~、俺のとこに行きましたので、よろしく!って!『あの人、見た目が幼いから危険だから』だって~!」
わは!と言って笑うが、こちらには笑えない話だ。何が危険なのかさっぱり分からない。
本当に、自分は彼らよりも遥かに年上だというのに。
「…でも、俺と居たほうがよっぽど危険なのに、ね!」
「へ!?」
するり、と首筋を、彼の細いがしっかりと男、の形をしている指が辿る。口の端に笑みを浮かべた彼のそんな顔を見ることが出来るのは、一体何人くらいいるのだろう。害のない羊のように見えて、その実、彼の中は獰猛な狼である。舌なめずりをしている姿が脳裏をよぎる。
「あのね、この周り、誰も入れないようになってるんだ。」
「、それは、どういう…?」
ふふ、と笑って彼は答えないが、どういう意味かなんて、聞かなくても分かる。聞かなければ分からない程経験も浅くない上に、かまととぶっても美味くない。
ため息をついて、彼のシャツのボタンに手をかけた。
大人しく脱がされるままになっているが、かれの顔といったら、だらしなく緩んでいるのに格好がついて綺麗だ。細められた青い瞳。そんな顔に興奮する自分も自分だとは思うのだけれど。
待ちきれなくなった彼に、唇を奪われる。隙間を無くそうとするみたいなその口付けは、深く、深く、喉の奥まで届くのではないかと思う程だ。舌を絡めて吸い上げる。じゅっ、と卑猥な音が鳴る。
酸素を求めて顔を反らそうとしても、それをさせまいとする彼の手によって頭を固定されて、ままならない。漸く解放された時にはもう既に随分と乱れて息も絶え絶えである。
「…はっ、はぁ、…」
「きく、きく…愛してる…」
切羽詰まったような、うっとりしたような顔をして、シャツの下を彼の手が撫でる。
このまま流されると、本当に危険だ。旅の恥は書き捨て、とは言うが一番書き捨てたい人は忘れてくれない訳で。
「だ、めです!イタリア、くん!こんな…!」
「フェリシアーノって呼んでよ、菊…」
既にたいして力も入らない手で、肌を弄る彼の腕を掴むが、かれはにこりと笑って耳元に息を吹きかけられた。
「…っ!」
不本意にも、体が震える。彼を煽るだけだというのに。
赤い舌が、ちろりと見える。
にんまりと笑い、彼はまた唇を奪った。
ああ、もういいか、会いたいから飛んできた訳だし、ここはイタリアな訳だし。何だか、自分もイタリア人になった気になっていいきがしてきた。
自分の髪の毛がひより、と一本くるりとなって浮かんだのが横目に見えた。
「フェリシアーノくん、会いたかった……愛してます。」
とろける甘さの空気の中、息も絶え絶えそう言うと、捕食者の瞳が甘くなって花を咲かせた。
「ヴァ・ベーネ!アモーレ!」
いつの間にか眠っていたのか、目が覚めたらふわふわのベッドが体を包んでいた。
「…ん?」
あたりを見回せば、まだ日は照っている。
「フェリシアーノ、くん?」
部屋は静まり返って気配がない。しかし、鼻をくすぐるのは美味しい香り。トマトやバジルの香りだ。くう、とお腹が鳴る。
もそりと体を起こして、部屋を出ると、案の定、かれはキッチンで鼻歌を歌いながら料理をしていた。
「おはよう、ございます?」
「ヴェ!おっはよ~!今お昼作ってるからね~」
不覚にも、朝食をとってからまたうとうとと寝てしまったようだ。ソファに座っていた筈だから、ベッドまで運んでくれたのは彼だろう。まだ時差ぼけが残っていたようだ。
イタリアくんの作る料理は美味しい。自国でもかれの国の料理は大人気で、彼の国自体、嫌いな人なんていないんじゃないだろうか。国民の行きたい国ナンバーワンをずっと独占しているくらいだから。本場のイタリアンも何度も口にしているが、それでもやはり、彼の作る料理にはどれも及ばない。以前そう言ったら、同じことを返されてひどく恥ずかしい思いをしたので、二度、同じ過ちは犯すまい、と口を噤んだ。
テーブルのセッティングももう終わっているし、あとは、本当に盛り付けて終わりなようで、「座ってて!」という言葉に甘えて席についた。
窓の外は、緑が撓わな庭に、暖かな光が差し込んでいて、まるでこの世のものではないような景色だ。
向こうの方に、緑に埋もれるようにして見える柵が、唯一ここが人のすんでいる場所だと知らせてくれる。
窓からは、たらんとした風が吹いている。また睡魔に攫われてしまいそうだ。
「菊、お待たせ!できたよ~」
はっとして顔をあげると、できたてのパスタがほくほくと湯気をたてていた。
「まあ!美味しそうです、イタリアくん、さすがです!」
「フェリシアーノ、だよ」
「あ、フェリシアーノくん…」
すかさず訂正が入ったが、口に入れた料理の余りの美味しさに、美味しいですフェリシアーノくん!を連発して、彼の名前を呼ぶのが恥ずかしいというのを忘れてしまった。
「菊がよろこんでくれてよかった!」
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西條事情
店主:西條
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アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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