深夜2時の告白
伊日。
清水さんの君が好きを聞いて。
続きます。
清水さんの君が好きを聞いて。
続きます。
深夜2時の告白
深夜2時。ベッドに入っても眠れないまま、ぼんやりと、光を放つ携帯電話の画面を見つめていた。
何分そのままでいたかわからない。以前に交わしたメールを読み返したり、着信履歴や発信履歴を眺めている。
菊、という文字をみるたびに、昨日の喧嘩が頭をよぎる。着信履歴の方が、発信履歴よりも随分多い。
遊びのつもりなんかなかった。いや、もしかすると遊びだったのかも知れないが、自分にはそんな自覚はなかった。男性に対して可愛いと思ったのは彼が初めてで、今のところ彼が最後だった。抱きしめれば、頬を染めて抵抗して、キスをしたなら、少し怒ったみたいに照れる。年上なのに、今までのどんな相手よりも初心で、一緒にいて楽しかった。もちろん、友達のルートヴィッヒとだって楽しいが、男同士だから、という楽しさではない。子供みたいにスキンシップに照れるくせに、そのくせ、交わる時はむせかえる程の色香を漂わせて誘うから、いつも頭の奥が痺れて自制がきかない。(本人は否定するだろうが)
そんな彼だから、女の子に対するのと同じように、自分の物にしたくなった、ただの所有欲だったのかもしれないけれど。しかしいつの間にかこんなに胸を締め付ける程に愛しくなっていて、頭の中の多くの部分を占めていたのだ。
昨日、彼は細い肩を上下させながら、涙をためて、「いいかげんにしてください」といって踵を返した。
原因は、探す余地もない。自分のせいだ。彼に打たれた頬が熱かった。
彼を恋人だと周りにも紹介しておきながら、女の子に声をかけるのは止めなかったし、一緒に出かけたりもした。キスや、それ以上にも及ぶこともあった。けれどそれは自分にとってあまりにも自然なことだったから、いけないことだなんて思う気持ちは薄かった。だから、彼がそれを知りながら耐えているのかも知れないなんて思いもよらなかったのだ。ご飯を食べた後に、またアイスを食べて、これは別腹、というのに似ている。
しかし今、付き合おう、と言ったときの、彼の花の咲いたような笑顔が脳裏に蘇る。
はあ、とため息をついた。と同時に、謀ったみたいに携帯電話が鳴った。
ディスプレイに表示されるのは、着信表示。相手は、いままさに考えていた、彼、本田菊からだった。緊張と焦りで少し震える手で、ボタンを押す。
「…もしもし?」
向こうからは、ザーザーと雨の音が聞こえてくる。外は、雨なのだろうか。
鼻をすする音、嗚咽をかみ殺す音。向こう側の雨の音で、小さな彼の声は正しく聞こえない。
「どうしたの?…泣いてるの?」
返事のない相手に向かって、問いかける。
「い、ままでありがとうございまし、た。ヴァルガス、くん、さようなら、」
突然の言葉に、頭の機能が停止する。彼の震える声が、頭の中で反芻する。
「え、今、何て…」
ああ、なんてバカだったんだろう。今更気がつくなんて。
こんなにも、君が好きなんだ。世界で一番。誰よりも。
「わかれ、」
「待って!言わないで!」
待って、待ってよ。
まだ間に合うかも知れない。彼だってきっと、自分のことを思ってくれているから、女の子の所に行く自分が辛かったから、別れを選んだのだろうから。今、彼を失ってしまったら、一生後悔する。別れたくない。
「俺、いまやっと、菊を一番愛してるって気がつけたところなんだ。」
返事はないが、微かに息を呑む音が聞こえた。呆れているのか、ショックをうけているのか、やはり、と思っているのか。しかし、本当のことだから、仕方ない。
「ねぇ、俺のこと、愛してる?」
愛してるって、本当は別れたくないって、言って欲しい。我が儘で、なんて自分勝手な要求なんだろうと分かっている。しかし、もう一回、いちからやり直しをしたい。今度は大事にするから。菊のさりげない優しさに、これからは俺の方から返してあげられるものがあるとおもうから。電話でなんて、まどろっこしい。本当なら、ぎゅっと抱きしめて言いたい。
やはり、返事はない。
「ね、今、何処にいるの?」
答えてくれないか、と思ったら、ほんとうに小さな声で、ぽそり、と公園、です。と言ったのが聞こえた。通話状態にしたまま、急いで着替えをする。鍵と財布を持って、家を出た。公園、というのは、二人でよく利用している公園のことだと分かっている。マンションから離れたところにあって、菊が独りで住んでいる家からも近い。早く会いたい、足がはやる。
今度こそ、誠心誠意を尽くして、彼と真っ向から付き合いたい。
公園の外から、闇に溶け込む黒髪が見えた。
深夜2時。ベッドに入っても眠れないまま、ぼんやりと、光を放つ携帯電話の画面を見つめていた。
何分そのままでいたかわからない。以前に交わしたメールを読み返したり、着信履歴や発信履歴を眺めている。
菊、という文字をみるたびに、昨日の喧嘩が頭をよぎる。着信履歴の方が、発信履歴よりも随分多い。
遊びのつもりなんかなかった。いや、もしかすると遊びだったのかも知れないが、自分にはそんな自覚はなかった。男性に対して可愛いと思ったのは彼が初めてで、今のところ彼が最後だった。抱きしめれば、頬を染めて抵抗して、キスをしたなら、少し怒ったみたいに照れる。年上なのに、今までのどんな相手よりも初心で、一緒にいて楽しかった。もちろん、友達のルートヴィッヒとだって楽しいが、男同士だから、という楽しさではない。子供みたいにスキンシップに照れるくせに、そのくせ、交わる時はむせかえる程の色香を漂わせて誘うから、いつも頭の奥が痺れて自制がきかない。(本人は否定するだろうが)
そんな彼だから、女の子に対するのと同じように、自分の物にしたくなった、ただの所有欲だったのかもしれないけれど。しかしいつの間にかこんなに胸を締め付ける程に愛しくなっていて、頭の中の多くの部分を占めていたのだ。
昨日、彼は細い肩を上下させながら、涙をためて、「いいかげんにしてください」といって踵を返した。
原因は、探す余地もない。自分のせいだ。彼に打たれた頬が熱かった。
彼を恋人だと周りにも紹介しておきながら、女の子に声をかけるのは止めなかったし、一緒に出かけたりもした。キスや、それ以上にも及ぶこともあった。けれどそれは自分にとってあまりにも自然なことだったから、いけないことだなんて思う気持ちは薄かった。だから、彼がそれを知りながら耐えているのかも知れないなんて思いもよらなかったのだ。ご飯を食べた後に、またアイスを食べて、これは別腹、というのに似ている。
しかし今、付き合おう、と言ったときの、彼の花の咲いたような笑顔が脳裏に蘇る。
はあ、とため息をついた。と同時に、謀ったみたいに携帯電話が鳴った。
ディスプレイに表示されるのは、着信表示。相手は、いままさに考えていた、彼、本田菊からだった。緊張と焦りで少し震える手で、ボタンを押す。
「…もしもし?」
向こうからは、ザーザーと雨の音が聞こえてくる。外は、雨なのだろうか。
鼻をすする音、嗚咽をかみ殺す音。向こう側の雨の音で、小さな彼の声は正しく聞こえない。
「どうしたの?…泣いてるの?」
返事のない相手に向かって、問いかける。
「い、ままでありがとうございまし、た。ヴァルガス、くん、さようなら、」
突然の言葉に、頭の機能が停止する。彼の震える声が、頭の中で反芻する。
「え、今、何て…」
ああ、なんてバカだったんだろう。今更気がつくなんて。
こんなにも、君が好きなんだ。世界で一番。誰よりも。
「わかれ、」
「待って!言わないで!」
待って、待ってよ。
まだ間に合うかも知れない。彼だってきっと、自分のことを思ってくれているから、女の子の所に行く自分が辛かったから、別れを選んだのだろうから。今、彼を失ってしまったら、一生後悔する。別れたくない。
「俺、いまやっと、菊を一番愛してるって気がつけたところなんだ。」
返事はないが、微かに息を呑む音が聞こえた。呆れているのか、ショックをうけているのか、やはり、と思っているのか。しかし、本当のことだから、仕方ない。
「ねぇ、俺のこと、愛してる?」
愛してるって、本当は別れたくないって、言って欲しい。我が儘で、なんて自分勝手な要求なんだろうと分かっている。しかし、もう一回、いちからやり直しをしたい。今度は大事にするから。菊のさりげない優しさに、これからは俺の方から返してあげられるものがあるとおもうから。電話でなんて、まどろっこしい。本当なら、ぎゅっと抱きしめて言いたい。
やはり、返事はない。
「ね、今、何処にいるの?」
答えてくれないか、と思ったら、ほんとうに小さな声で、ぽそり、と公園、です。と言ったのが聞こえた。通話状態にしたまま、急いで着替えをする。鍵と財布を持って、家を出た。公園、というのは、二人でよく利用している公園のことだと分かっている。マンションから離れたところにあって、菊が独りで住んでいる家からも近い。早く会いたい、足がはやる。
今度こそ、誠心誠意を尽くして、彼と真っ向から付き合いたい。
公園の外から、闇に溶け込む黒髪が見えた。
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西條事情
店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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