まどろみ便り
露日
まどろみ便り
もう随分とあたたかくなった。
冬の間、白く覆われていた大地にようやく緑が蘇り、灰色の空に青い色が見え隠れし、空気も、身を切るようなものではなく、ようやく何か暖かいものが混じり始めた。
ルースキー・スタンダルトの空き瓶をテーブルに転がす。重たい音を立ててテーブルの端へ。コップは遂に空になったが、暖かくなったなら、無理に飲む必要はない。
ふうっと息を吐いた。
遠く離れた土地を思う。
そこはもう、春が訪れている筈だ。先日の会議に参加した際に、そう言っていた。
自分以外誰も居ない家はとても静かで、時折、家が鳴る以外は自分の奏でる音しか聞こえない。ぴしり、家が鳴る。
久しぶりに、酔ってしまったのだろうか、意識が緩やかに沈んでゆく。テーブルに転がったルースキー・スタンダルトの瓶と目があった。
「ん?」
不意に暖かいものが肩に掛かった気がして、目が覚めた。あれからどれくらい経ったのだろうか。
肩を探ると、大きなブランケットがずるりと引っ張られて落ちた。「あれ…?誰だろう」
確かに、意識を失う前までは一人だった筈だ。それに、やはり誰もいる気配はない。とすると、誰がこれをかけていったのか。
首を傾げた。
立ち上がった拍子に椅子が転ける。
テーブルを見れば、達筆な、文字が踊るメモ。
「突然訪ねて失礼しました。鍵がかかっていたので勝手に入りましたが、飲みすぎですよ。風邪をひかないように、」
親なんていた事がないけれど、いたならきっとこんな感じ。
自分を気遣う優しさに、胸が熱くなった。
「日本くん…」
見れば、その足で帰るつもりと記されている。
全速力でコートを羽織り、扉を開ける。勢い余って壁に激突したドアノブが、嫌な音をたてたけれど、構っている時間はない。
空港への近道を知っているから、もしかすると彼より早く空港に着くかも知れない。
空港について、彼を見つけたら、ぎゅっと抱きしめてやろう。
そうしたら、きって、酒臭いですよ、話しなさいと言いながら、背中にその細い腕が回るだろう。
乗り捨ててあった車を拝借して、雪の無くなった道を猛スピードで飛ばした。
(日本くん!)
(…おや、まあ、ロシアさん)
もう随分とあたたかくなった。
冬の間、白く覆われていた大地にようやく緑が蘇り、灰色の空に青い色が見え隠れし、空気も、身を切るようなものではなく、ようやく何か暖かいものが混じり始めた。
ルースキー・スタンダルトの空き瓶をテーブルに転がす。重たい音を立ててテーブルの端へ。コップは遂に空になったが、暖かくなったなら、無理に飲む必要はない。
ふうっと息を吐いた。
遠く離れた土地を思う。
そこはもう、春が訪れている筈だ。先日の会議に参加した際に、そう言っていた。
自分以外誰も居ない家はとても静かで、時折、家が鳴る以外は自分の奏でる音しか聞こえない。ぴしり、家が鳴る。
久しぶりに、酔ってしまったのだろうか、意識が緩やかに沈んでゆく。テーブルに転がったルースキー・スタンダルトの瓶と目があった。
「ん?」
不意に暖かいものが肩に掛かった気がして、目が覚めた。あれからどれくらい経ったのだろうか。
肩を探ると、大きなブランケットがずるりと引っ張られて落ちた。「あれ…?誰だろう」
確かに、意識を失う前までは一人だった筈だ。それに、やはり誰もいる気配はない。とすると、誰がこれをかけていったのか。
首を傾げた。
立ち上がった拍子に椅子が転ける。
テーブルを見れば、達筆な、文字が踊るメモ。
「突然訪ねて失礼しました。鍵がかかっていたので勝手に入りましたが、飲みすぎですよ。風邪をひかないように、」
親なんていた事がないけれど、いたならきっとこんな感じ。
自分を気遣う優しさに、胸が熱くなった。
「日本くん…」
見れば、その足で帰るつもりと記されている。
全速力でコートを羽織り、扉を開ける。勢い余って壁に激突したドアノブが、嫌な音をたてたけれど、構っている時間はない。
空港への近道を知っているから、もしかすると彼より早く空港に着くかも知れない。
空港について、彼を見つけたら、ぎゅっと抱きしめてやろう。
そうしたら、きって、酒臭いですよ、話しなさいと言いながら、背中にその細い腕が回るだろう。
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リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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