忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

桜の香

露日。やまなしおちなしいみなし。
桜の香




「桜の季節ですねえ」
会議中だというのに、のほほん、とした声が、丁度意見が途絶え、しんとした議場に響いた。確かにもうあと数分で会議は終了ではあるが、とても場違いなほどに緩んだ一言だった。
「……と、日本?」
コホン、と咳払いをしてから、戸惑ったドイツの声を合図に、一斉に視線が集まった。
当の本人はというと、視線を感じている風もなく、ほんわりと普段は見せない緩みきった顔をしたままだ。
「ヴェー!日本がおかしいよ、ドイツぅ!」
イタリアが涙目でドイツのスーツにシワを作っている。
「わ、かってる!」
日本の向かいの席のフランスといえば、とろけそうな目で見つめている。
「いや、なんだこんな顔するんだ日本、いいよ日本はあはあ」
「やめろ変態!そのいやらしい目で日本を見るな!日本が穢れる!」
「なんだとー!お兄さん怒っちゃうよ!」
「ははははは!イギリス、君も十分目がイッてるよ、ははははは!」


「……日本くんち、桜が咲いてるの?」
それらを尻目に問いかけた。
「ええ。」
相変わらず、遠い目をして、家に咲いている桜にでも思いを馳せているのか、生返事である。
しかしその表情はなんとも春の日差しのようで、つられてこちらも口角が上がってしまった。
「ふうん。…僕、花見にいきたいなぁ。日本くんち、もうあったかい?」
「どうでしょう…まだ寒い日はありますが、日差しは十分暖かいですから。」
普段みせない柔らかい笑みに、束の間呼吸まで止まってしまった。周りではまだ騒がしく、言い合いや掴み合いを続けている。
「ね、日本くん、会議、抜け出しちゃおうか?もう、すぐ終わりだし」
ここで了承なんてしないだろうと思っていたら、意外にも、すぐにこくんと頷くから、少しだけ心臓が落ちかけた。
日本くんを、抱き上げる。
見えないように背を向けて、ひっそりと扉を開けて、体を滑らせた。
丁度待ち構えていたように鳴る、終了時刻の合図。
こんな会議だから、いつも定時でお開きだ。
遠くなった会議室から、日本くんを探す声が廊下まで響いていた。

「ねえ、どうしたの?」
「どうとは?」
「だって、いつもならこんなこと許してくれないじゃない?」

そういうと、日本くんは艶やかに笑って、答えなかった。




「きみならで誰かに見せむ桜の花色をも香をも知る人ぞ知る。なんてね、ようやく訪れた春だからですよ。」
春だから、いいじゃないですか、浮かれたって。
PR

西條事情

店主:西條

リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
メルフォは下にあります。

contact

何かありましたらこちらへどうぞ