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叫び、祈り

露日ベースの露良(感情は伴わない)
ただ良が不憫。
日本が誰状態。


それでもOKなかたはどうぞ!
叫び、祈り





嫌だと思いながらも毎回抱かれたのは、多分こころのどこかで必要とされたかったのだと思う。
ひとりになって、初めて、あの人がいないと自分の周りには誰一人いないのだと分かった。

彼が書斎で食事をすると言う時、それがあるという合図。
いつもはだだっ広い部屋で食べるのに、その日は必ず書斎で食事をすると言う。用意をして給仕をするのも、指名されるのは自分だ。
震える体は言うことを聞かず、治まらない。しかし、指名されてそれに背く事は出来なかった。
身代わりだとか、そんなことは知っている。けれど、自分は彼のたった一つの弱点を知っているようで、それを他へ耳打ちすることもなかった。
また、書斎。
震える手でワゴンに乗せた食事をテーブルに置いてゆく。
料理を用意したリトアニアが、心配をして、代わりに行こうと言ってくれたのを思い出した。
「ラトビア、こっちにおいでよ」
ロシアさんがこういう声を出すときは、必ず。
「あれ?聞こえないのかなぁ?」
あれがくるということだ。


「んっ!…く…」
むせかえる程の濃厚な、淫靡な香が部屋中を覆う。
背中にかいた汗が、シャツを貼り付かせて、気持ちが悪い。
口内を乱す彼の太い指が、口の端から唾液を漏らせて、絨毯に染みを作った。
「ねえ、声は出しちゃだめだって、言ったでしょ?」
ロシアさんの低い声。
穿たれた中に、背を反らす。
内臓が内側から圧迫される。体の中に収まっている彼の太く大きなそれのせいで、暑くてたまらない。
「日本くん、日本くん、日本くんっ、」
呼ぶ度に、繰り返される律動。かき回される中。彼は前戯も愛撫もしない。入り口が擦れて痛い。
ただ、これをするときは彼の愛しい日本、さんが遠くの地で、彼の敵である男に犯されているのだという。ロシアさんと、日本さんの間には互いを感じる事ができるらしい。ロシアさんは日本さんの右手の薬指に契約をさせているからだ。二人の間でどんなやりとりがあったのかは定かではないが、以前、リトアニアが悲しそうに話していたのを覚えていた。ロシアさんは、日本さんの心が粉々になるのが分かるのに、助けに行くことができなくて、もどかしく、どうしようもなく悔しいから、自分を汚そうとしてこんなことを繰り返すのかも知れなかった。三人の中で、一番背格好が似ている自分が指名されるのは致し方ないことなのだと、その時は思った。

いつしか、皆がそれぞれ別の道を歩み始めようという時、ようやくロシアさんは愛しい人と会うことができた。
「日本くん!」
何年ぶりかに見る日本さんは、嘗ての彼とはまるで違って、生気のない青ざめた肌に、沼の底のような瞳をしていた。それでも、彼は笑っていた。
「お久しぶりですね、ロシアさん」
夏だというのに、襟の詰まったブラウスをきている彼は、どこか異様だった。
しかし、ロシアさんがその体を胸に抱こうとしたとき、彼は言った。その言葉に、その場にいた全員が、怒りと、悲しみと、苦しみに満ちた目で地を睨んだ。
「…駄目です、ロシアさん。あなたに触れていただけるような清い体ではなくなってしまいましたから。穢れに満ちた私はあなたに優しくされることも、抱かれることも、資格がない。」
日本さんの目には涙がたまっていた。
「日本くん、」
「約束、守れなくてごめんなさい。それを…言おうと…」
蒼白な顔をした彼の大きな瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。みんな、初めてみる日本さんの涙に、驚きを隠せなかった。
過去の二人にどんなことがあっても、今の、この日本さんをみる限り、二人が互いを大切に思いあっているのが分かった。
「二人とも、行こう」
リトアニアが、エストニアに続き、それに自分も続いた。けれど、どうしても、その場から去ることが出来ずに、結局、扉の外から動けなかった。
部屋の中から、ロシアさんと日本さんの声が聞こえた。
そして、いつからかそれは熱い吐息になり、嬌声に変わるだろう。日本さんのか細い高い声と、ロシアさんの愛を呟く声が響く。
うっすら開いた扉の向こうには引きつった火傷の痕が覆う白い肌を日本さんがロシアさんに晒していた。
「穢れてなんて、ないよ」
日本さんはうなだれて、まだ涙を流していた。
「…、私は嫌だと言うのに、」
「僕、日本くんのこと、凄く好きだよ。大丈夫だよ、どんなことがあっても信じてるし、愛してる。」
ロシアさんは、日本さんの右手をとって、薬指に口づけを落とした。
「日本くんだって、これを解こうとしなかった。…大丈夫、治るから。僕は君を守るよ。」
一層涙を流す日本さんを、ロシアさんはきつく抱きしめて、想像できないくらい優しく、甘く口づけた。
「……ねぇ、入ってもいい?」
彼が、立ち上がった自身を秘所にあてがう。日本さんは言葉で答えることはなく、ロシアさんの右手の薬指に、口づけた。それを合図に、ロシアさんは日本さんに侵入していく。体の小さな彼には、大き過ぎるのか、のけぞり、ロシアさんが回すようにすると、背中に置いた手が爪を立てた。
今まで自分に与えられていたものというのは、一体何だったのかと、思わずにはいられない。
こんなに、丁寧にする彼を見たこともなかった。気遣うことをするなんて、考えられないことだった。別世界の出来事に思えてならない。一際大きく高い声が響き、それが日本さんの限界を示していた。続いて、息を詰める音が響き、小さな日本さんの体を下敷きにするように、ロシアさんが果てた。
廊下の向こう、リトアニアが心配そうに、此方を伺っているのが見えた。
ようやく、体を動かし、彼のまつ部屋へと、扉の前で踵をかえした。

「日本さんとロシアさん、ああいう関係だったんですか」
唐突な言葉に、リトアニアもエストニアも、手に持っていたカップを取り落としかけた。
しかし、長くは沈黙は続かず、どちらともなく話始めた。
「まあ、そうみたいだよ。」
「初めて会った時に一目惚れしたんだって。それからずっと日本さんに思いを伝え続けてたみたいだね。」
「……国っていう立場は、難しいですね。」
まだ、目の奥に焼き付いている二人の姿。
彼らは多分、人であったなら、こんなことにはならなかったと思うのだ。人である以前に国である以上、互いがどんなに思いあっていても、どうすることもできない時がある。今回みたいに。
「そうだね。でも、ラトビア。国じゃなかったら、二人とも出会ってなかったから、これはこれで、二人にとっては良かったんだと思うよ。」
「そうでしょうか……」

役目を終えた自分が、これから誰に必要とされるのか、喪失感だけが胸を襲う。
もちろん、二人が再会できたのは喜ばしいことだけれど。心の何処かで残念に思う自分もいる。
熱い紅茶の立てる湯気を見つめながら、その向こうの茶色い紅茶を見る。底には、天井が白く映し出されていた。




「……そうか。僕はロシアさんが好きだったんだ。」
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