手をつないで春風
リト日。
この二人はなんとなくいつまでたっても初々しいイメージ。
この二人はなんとなくいつまでたっても初々しいイメージ。
手をつないで春風
:
「日本さん、今日はよろしくおねがいします。」
そう言うと、日本さんはふんわりと笑った。
駅のホームは人でごった返して、ぼうっとしていたらいつの間にかひとりになってしまいそうだ。
不安になるが、隣に立っている日本さんは、ここにいる誰よりも見つけやすいから、もしもはぐれてしまってもすぐにわかるだろう。
彼の「はい」という言葉は、電車がくる音でかき消されてしまって、口の形だけしか分からなかった。
アナウンスと、電車の音。列車が轟音で通り過ぎて、突風が襲う。バタバタと袖が大きくはためいた。すごい風に、彼の無事を確かめる。彼はいつもの着物ではなく、今日は珍しくジーンズをはいていて、脚の細さや、体全体の華奢さが際立つ。隣に立っているのが自分だと、それも一際だろう。
丁度、こちらを向いていた日本さんと目があった。
ふんわり、と笑う彼の顔は、そこらへんの女の子よりも可愛い。
「リトアニアさん、この次の列車です。」
日本さんは、笑顔で言うと、唐突に俺の手を掴んだ。
「へっ?!」
突然のことにおおきな声を出して驚くと、直ぐにその手は離された。まだ、心臓が速い。
彼はそのまま、反対側の手で乱れていた髪を直すと、赤い耳を隠すように方耳にかけていた髪を下ろした。
「すみません、何でもないんです。」
小さな蚊のなくような声で言うものだから、ああ、何で知らない振りをして手を繋いでしまわなかったのか、とか、どうして彼からさせてしまったのか、とか、思考が廻る。
一度拒絶してしまうと、彼は二度としないのだ。
そうこうしているうちに、今度は自分たちが乗る電車が来てしまう。二人ずつのボックス席に座る。思ったよりも狭くないのは、日本さんが小さいからだろう。多分、ロシアさんやアメリカさん、北欧の彼らが座ったら、一人用になってしまうだろう。
しかし、いくら日本さんが華奢でも、他人同士では不快を感じる距離。自然と肩や太腿がさわる。
じんわりとそこだけ暖かく、妙な気分になってしまいそうだ。
そう思いながら、日本さんの、膝に置かれた手の上に、手を重ねた。
「!」
大きな目で驚きを隠せないといった顔をした彼に、こんどはこちらが笑う。
「ふふ、」
「すみません、さっきあんなことをしたからですよね…」
頬を通り越して目許まで赤く染まって、小さくなる彼はとてもかわいい。
「なんだか、催促したみたいで、すみません。」ぺこり、と頭を下げた。けれど、上から添えた手は払われなかった。
「いいえ、俺はうれしかったですよ。」
めったに自分から行動しない日本さん。こんなことはめったにない。何が理由にしろ、心に羽が生えたみたいだ。そして、上に置いた手を、彼の手の下に滑り込ませて、ぎゅっと握る。どちらのものともわからない高い体温に、まだ肌寒い季節のなか、この場所だけ季節が早周りしたみたいだ。
「何だか…恥ずかしいですね。手を繋いでるだけなんですが。その、手汗をかいたらすみません。その時はすぐ離します。」
「嫌ですよ。今日はこのままです。いいじゃないですか。気にしないですし。」
そんなことを言うなら、こっちも緊張でいつになく汗をかいているのだから、お互い様だろう。
いつまでたっても、慣れないというのは、いつも初心でいられていいかもしれない。
恋人も夫婦も、慣れてしまって当たり前になってしまったら、それが悪い訳ではないけれど、少し悲しい。
この、春風みたいな距離が、二人には一番だと思った。
窓から見える景色は緑豊かで、季節がもう初に向かっていると実感する。
これから向かう先にも楽しいことがまっているけれど、そこに行きつくまでに、もう幸せいっぱいになった。
視線をとなりの日本さんに移す。小さな頭がちょうど、俺の肩にもたれようとしているところだった。
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「日本さん、今日はよろしくおねがいします。」
そう言うと、日本さんはふんわりと笑った。
駅のホームは人でごった返して、ぼうっとしていたらいつの間にかひとりになってしまいそうだ。
不安になるが、隣に立っている日本さんは、ここにいる誰よりも見つけやすいから、もしもはぐれてしまってもすぐにわかるだろう。
彼の「はい」という言葉は、電車がくる音でかき消されてしまって、口の形だけしか分からなかった。
アナウンスと、電車の音。列車が轟音で通り過ぎて、突風が襲う。バタバタと袖が大きくはためいた。すごい風に、彼の無事を確かめる。彼はいつもの着物ではなく、今日は珍しくジーンズをはいていて、脚の細さや、体全体の華奢さが際立つ。隣に立っているのが自分だと、それも一際だろう。
丁度、こちらを向いていた日本さんと目があった。
ふんわり、と笑う彼の顔は、そこらへんの女の子よりも可愛い。
「リトアニアさん、この次の列車です。」
日本さんは、笑顔で言うと、唐突に俺の手を掴んだ。
「へっ?!」
突然のことにおおきな声を出して驚くと、直ぐにその手は離された。まだ、心臓が速い。
彼はそのまま、反対側の手で乱れていた髪を直すと、赤い耳を隠すように方耳にかけていた髪を下ろした。
「すみません、何でもないんです。」
小さな蚊のなくような声で言うものだから、ああ、何で知らない振りをして手を繋いでしまわなかったのか、とか、どうして彼からさせてしまったのか、とか、思考が廻る。
一度拒絶してしまうと、彼は二度としないのだ。
そうこうしているうちに、今度は自分たちが乗る電車が来てしまう。二人ずつのボックス席に座る。思ったよりも狭くないのは、日本さんが小さいからだろう。多分、ロシアさんやアメリカさん、北欧の彼らが座ったら、一人用になってしまうだろう。
しかし、いくら日本さんが華奢でも、他人同士では不快を感じる距離。自然と肩や太腿がさわる。
じんわりとそこだけ暖かく、妙な気分になってしまいそうだ。
そう思いながら、日本さんの、膝に置かれた手の上に、手を重ねた。
「!」
大きな目で驚きを隠せないといった顔をした彼に、こんどはこちらが笑う。
「ふふ、」
「すみません、さっきあんなことをしたからですよね…」
頬を通り越して目許まで赤く染まって、小さくなる彼はとてもかわいい。
「なんだか、催促したみたいで、すみません。」ぺこり、と頭を下げた。けれど、上から添えた手は払われなかった。
「いいえ、俺はうれしかったですよ。」
めったに自分から行動しない日本さん。こんなことはめったにない。何が理由にしろ、心に羽が生えたみたいだ。そして、上に置いた手を、彼の手の下に滑り込ませて、ぎゅっと握る。どちらのものともわからない高い体温に、まだ肌寒い季節のなか、この場所だけ季節が早周りしたみたいだ。
「何だか…恥ずかしいですね。手を繋いでるだけなんですが。その、手汗をかいたらすみません。その時はすぐ離します。」
「嫌ですよ。今日はこのままです。いいじゃないですか。気にしないですし。」
そんなことを言うなら、こっちも緊張でいつになく汗をかいているのだから、お互い様だろう。
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これから向かう先にも楽しいことがまっているけれど、そこに行きつくまでに、もう幸せいっぱいになった。
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リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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