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春が爛漫

露日+リト
でほのぼの
春が爛漫


*
*

「あ、眩暈が…」
不思議とぐらぐらと揺れる視界と頭に、立ち止まった。
春の、桜が塵りはじめた頃だ。気温も暖かい日が続いている。
ついこの間までまだ肌寒かったというのに、桜が満開になってからというもの、汗ばむくらいになっていた。
「ふぅ…」
少し辛くなって額に手を置いて蹲る。
と、気が付かないうちに目の前に誰か立っているのか、大きな靴だけが見える。
「…どなたですか、」
絞りだした声は思ったよりもよわよわしく、まるで病人のようだ。失礼な事だとは分かっているのだが、顔が上げられない。
しかし、相手も何も言わない。
そうすると、しばらくして何か移動する気配がして、目前の大きな靴の色が変わっていた。
「日本さん、大丈夫ですか、」
「、はい…すこし目眩が。」
そっと腕に大きな手が添えられた。ようやくすこし落ち着き、顔をあげると、そこには優しい顔をしたリトアニアさんの姿があった。
「リトアニア、さん…」
「はい。あ、あの、すみませんロシアさんが…」
「え、ロシアさん、ですか」
リトアニアさんは私を支えながら立ち上がらせると、さり気なく腰に手を回して、倒れないような支えてくれる。しかし、表情は困った顔だ。
「あ、はい。走ってどこかに行ってしまいました…」
そこでようやく納得する。先程の大きな靴は彼の靴だったのだろう。
「あ、取り敢えずそこのベンチに座りましょう。」
リトアニアさんは慣れた手つきでエスコートしてくれる。しかしロシアさんはどこに行ってしまったのだろう。もちろんリトアニアさんも優しく、とても好きだが、彼ならよかったのにと思ってしまう。
「散りはじめた桜も綺麗なものですね、」
感慨深そうに話す彼の声は、彼をそのまま表すように声さへ柔らかく、落ち着く。
「そうですね、少し寂しい気もしますけど。」
向こうから足音が響いてくる。重みのある足音は期待を呼び起こす。
「日本くん、お待たせ!」
やはり走ってきたのはロシアさんで、マフラーをなびかせ、息も上がっている。両手にはコンビニの袋と、衣料品量販店の袋を握っていた。
「これ!」
がさごそと袋をひっかきまわす。
「ロシアさん、ここ、座ってください。」
リトアニアさんの気づかいに返答するのも忘れて、どすんと腰を下ろして、袋から真っ赤なマフラーを取り出した。
「寒いとよくないからね」
有無を言わせずぐるぐるとマフラーが巻かれていく。内心、ロシアさんと同じ巻き方だ、と心が踊る。
「それから、あったかいお茶、おにぎり、ひえぴた!あ、あとチョコもあるよ!」
リトアニアさんは苦笑いをしている。
「、ありがとうございます。」
お茶を飲むと、じんわりと首から温かくなり、目眩のなごりが消えてゆく。即座に出されたチョコを口に含むと名残は一切なくなった。
「もう平気?」
「あ、はい。不思議なことに…」
ロシアさんは得意気な笑顔で、年上の私の頭をなでる。いつもなら、やめなさいと注意するところだが、そんな気持ちにもならず、この二人のふわふわした雰囲気に、とても癒されるのだ。
「桜が散っても、お二人がいるとずっと春みたいですね。」
「へ、」
「え、」
二人同時にきょとんとしている。

おかしくなって笑うと、二人もつられてまた春のような笑顔を向けてくる。




「せっかくですから、うちに寄っていってください。」
そう言えば、さらに春が爛漫になった。
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