誓いの証
露日。
大戦後で米→露日風味。
裏切りの約束の続き?
大戦後で米→露日風味。
裏切りの約束の続き?
誓いの証
*
*
*
「日本、君のことは俺が守るから安心してくれ!ヒーローに守られるんだから、無敵だぞ!」
「…はぁ、ヒーローですか、」
出会ってから少しした時、彼は輝く笑顔で、(実際に白い歯は輝いていた)そう言い放った。
急速に動き出した世界に戸惑うばかりの私は、彼の言葉だけを頼りに世界へ一歩踏み出した。
「ロシアさ、ん?」
重い瞼を開くと、見慣れた天井が迎えた。随分長い間眠っていた気がして、のろのろと首を動かすと、待ち兼ねた表情のロシアさんではなく、眼鏡を手に取り見つめているアメリカさんが目に入った。
「ロシアさん…は、」
咽がカラカラに渇いていて、擦れたような風の唸りのような小さな声が漏れた。
「日本!起きたのかい?よかった…」
眼鏡を装着して、安堵した表情をみせるアメリカさんに、疑問を渡しらしくもなく直接的に訊いた。
「何故貴方がここに?ロシアさんはどこに居ますか」
途端、彼の表情は険しくなる。
「あいつは今、ここにはいないよ。刺された君を、俺が救ったんだ!少し、やり過ぎたかもしれないが、こうでもしなきゃ、君はあいつのものになっていたかも知れない」
どういうことだろう。今未だ鮮明に思い出せる彼との最期、あれは叶わなかったというのだろうか。柔らかい、暖かな唇がこの穢れた唇にあてられ、口内が彼の温かさに満たされたと思ったのに。
状況が把握出来ずに、ただぼうっと天井を見上げた。
「これからは俺が君を介護して、治すから安心してくれ。…ちゃんと、今度は守るから」
「守るって、言いましたね、」
彼の言葉に思い出した。
「貴方は、嫌がる私を世界に導いた時にも、守ると言った。」
困惑する彼の瞳に、苛々と募る感情は膨張する。眸を開けたら優しい笑顔で迎えるロシアさんを夢見ていた。その細やかな夢を壊した、彼に。一体彼はどう思うだろう。今頃私を失った悲しみに、冷たい屋敷のなかで暗い眸をしているのだろうか。
ヒーローとは名ばかりの嘘つきには反吐がでる。
「…ごめん」
「いいえ。」
「今度は大丈夫だから。」
優しく触れようとしてくる大きな手のひらを払い落とした。大きいのは同じでも、彼には触れられたくない。何故なら彼は、見捨てたのだから。私を。冷たく突き放し、それ故に狂乱したことを忘れはしない。
不意に激痛が下半身を襲った。
「…!」
きつく眉を寄せた私に、彼は甲斐甲斐しいと言うのに相応しいくらいに世話を焼いた。
「ロシアさんに、会わせてください。」
涙が込み上げる。
どうしても彼に会いたかった。
「それは出来ない。また君を自分のものにしようとするかも知れない。」
「彼はそんな人ではない!」
優しい人なのだ。自分の物にしようとしたのではない、これは約束だったのだから。
「…貴方は何も知らない…」
「君は、もう俺に総てを委ねると約束されたんだ。」
「…守れなかったことはごめん。でも、これからは守る。何があっても。君の手足になるから。」
なま暖かい言葉には反吐がでる。いい加減な事をいうなと叫びたかった。介護というがそれはようは支配するということだ。何をするにも彼に強制的に頼ることになる。首輪を嵌められた庭先で座り込んでいる犬とかわりない。
「…私は貴方の捕虜として言いなりにはなりましょう。しかし、心までは支配されはしません。たとえ民が貴方を受け入れようと。本田菊は貴方を受け入れません。」
「日本…」
じりり、と膠着?%E:426%#ヤに陥る。
どちらとも譲らない。
その時、さっ、と襖が開いた。そこに立つのは待ち焦がれたロシアさんだった。
「日本くんの手を離してほしいな」
「ロシアさん、」
「ロシア!」
繋がれていた右手をロシアさんが奪う。時が止まった。隙をついて、ゆっくりと手の甲にひとつ、手のひらにひとつ彼は口付けを落とした。
「きさま…!日本から手を離せ!」
「いやだね。」
アメリカさんと打って変わって、ロシアさんの声はいつもより数段低く、冷たかった。
「君こそ、はやく消えてよ。僕は日本くんと話に来たんだ。」
君と話に来たんじゃない。そう言ってロシアさんは布団ごと私を抱き抱えて立ち上がった。
「離せ!」
ヒーローの余裕はどうしたのか、アメリカさんは焦りがむしゃらになったようにロシアさんに食って掛かった。しかし彼はそれを無視して襖を開けて歩きだす。
「ね、ごめんね。失敗しちゃったみたい。…日本くんを守れないよねこれじゃあ…」
「いいえ、いいんです。」
彼の大地とは正反対の暖かい胸に体を預けると、ひどく落ち着く。「貴方のものになると約束したのに、辛い思いだけさせてすみません。」
そう言うと、ロシアさんは否定するように首をふる。幼子のような仕草に笑みが零れた。
「好きだって言ってくれて、ありがとう、…僕も君のこと、愛してる。」
何度も聞いた言葉がこれほど何時もと違う響きを持つことに驚く。愛という言葉が染み渡った。
「国としては負けた者としてアメリカさんに従うことにします。けれど、このままでは癪なので、この右手を貴方に差し上げます。」
昔遊女は誓いの証に小指を切って落とした。ならば私は貴方が口付けをしてくれた右手を貴方に誓いの証に渡そう。
「日本くん、大好き!僕の国では、結婚した人は右手の薬指に指輪をするんだよ!」
「…左手では?」
「右!あ、じゃあこれあげる」
ロシアさんは片手で私を抱いたまま、もう片方でポケットを探す。
指の先には綺麗な指輪。
まるで少女のようだと自嘲ながらも、胸が高鳴った。
ゆっくりと、薬指に指輪が通される。
新しい一歩を踏み出すときの、守るという言葉が真実に聞こえたのはこれが初めてだった。
*
*
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「日本、君のことは俺が守るから安心してくれ!ヒーローに守られるんだから、無敵だぞ!」
「…はぁ、ヒーローですか、」
出会ってから少しした時、彼は輝く笑顔で、(実際に白い歯は輝いていた)そう言い放った。
急速に動き出した世界に戸惑うばかりの私は、彼の言葉だけを頼りに世界へ一歩踏み出した。
「ロシアさ、ん?」
重い瞼を開くと、見慣れた天井が迎えた。随分長い間眠っていた気がして、のろのろと首を動かすと、待ち兼ねた表情のロシアさんではなく、眼鏡を手に取り見つめているアメリカさんが目に入った。
「ロシアさん…は、」
咽がカラカラに渇いていて、擦れたような風の唸りのような小さな声が漏れた。
「日本!起きたのかい?よかった…」
眼鏡を装着して、安堵した表情をみせるアメリカさんに、疑問を渡しらしくもなく直接的に訊いた。
「何故貴方がここに?ロシアさんはどこに居ますか」
途端、彼の表情は険しくなる。
「あいつは今、ここにはいないよ。刺された君を、俺が救ったんだ!少し、やり過ぎたかもしれないが、こうでもしなきゃ、君はあいつのものになっていたかも知れない」
どういうことだろう。今未だ鮮明に思い出せる彼との最期、あれは叶わなかったというのだろうか。柔らかい、暖かな唇がこの穢れた唇にあてられ、口内が彼の温かさに満たされたと思ったのに。
状況が把握出来ずに、ただぼうっと天井を見上げた。
「これからは俺が君を介護して、治すから安心してくれ。…ちゃんと、今度は守るから」
「守るって、言いましたね、」
彼の言葉に思い出した。
「貴方は、嫌がる私を世界に導いた時にも、守ると言った。」
困惑する彼の瞳に、苛々と募る感情は膨張する。眸を開けたら優しい笑顔で迎えるロシアさんを夢見ていた。その細やかな夢を壊した、彼に。一体彼はどう思うだろう。今頃私を失った悲しみに、冷たい屋敷のなかで暗い眸をしているのだろうか。
ヒーローとは名ばかりの嘘つきには反吐がでる。
「…ごめん」
「いいえ。」
「今度は大丈夫だから。」
優しく触れようとしてくる大きな手のひらを払い落とした。大きいのは同じでも、彼には触れられたくない。何故なら彼は、見捨てたのだから。私を。冷たく突き放し、それ故に狂乱したことを忘れはしない。
不意に激痛が下半身を襲った。
「…!」
きつく眉を寄せた私に、彼は甲斐甲斐しいと言うのに相応しいくらいに世話を焼いた。
「ロシアさんに、会わせてください。」
涙が込み上げる。
どうしても彼に会いたかった。
「それは出来ない。また君を自分のものにしようとするかも知れない。」
「彼はそんな人ではない!」
優しい人なのだ。自分の物にしようとしたのではない、これは約束だったのだから。
「…貴方は何も知らない…」
「君は、もう俺に総てを委ねると約束されたんだ。」
「…守れなかったことはごめん。でも、これからは守る。何があっても。君の手足になるから。」
なま暖かい言葉には反吐がでる。いい加減な事をいうなと叫びたかった。介護というがそれはようは支配するということだ。何をするにも彼に強制的に頼ることになる。首輪を嵌められた庭先で座り込んでいる犬とかわりない。
「…私は貴方の捕虜として言いなりにはなりましょう。しかし、心までは支配されはしません。たとえ民が貴方を受け入れようと。本田菊は貴方を受け入れません。」
「日本…」
じりり、と膠着?%E:426%#ヤに陥る。
どちらとも譲らない。
その時、さっ、と襖が開いた。そこに立つのは待ち焦がれたロシアさんだった。
「日本くんの手を離してほしいな」
「ロシアさん、」
「ロシア!」
繋がれていた右手をロシアさんが奪う。時が止まった。隙をついて、ゆっくりと手の甲にひとつ、手のひらにひとつ彼は口付けを落とした。
「きさま…!日本から手を離せ!」
「いやだね。」
アメリカさんと打って変わって、ロシアさんの声はいつもより数段低く、冷たかった。
「君こそ、はやく消えてよ。僕は日本くんと話に来たんだ。」
君と話に来たんじゃない。そう言ってロシアさんは布団ごと私を抱き抱えて立ち上がった。
「離せ!」
ヒーローの余裕はどうしたのか、アメリカさんは焦りがむしゃらになったようにロシアさんに食って掛かった。しかし彼はそれを無視して襖を開けて歩きだす。
「ね、ごめんね。失敗しちゃったみたい。…日本くんを守れないよねこれじゃあ…」
「いいえ、いいんです。」
彼の大地とは正反対の暖かい胸に体を預けると、ひどく落ち着く。「貴方のものになると約束したのに、辛い思いだけさせてすみません。」
そう言うと、ロシアさんは否定するように首をふる。幼子のような仕草に笑みが零れた。
「好きだって言ってくれて、ありがとう、…僕も君のこと、愛してる。」
何度も聞いた言葉がこれほど何時もと違う響きを持つことに驚く。愛という言葉が染み渡った。
「国としては負けた者としてアメリカさんに従うことにします。けれど、このままでは癪なので、この右手を貴方に差し上げます。」
昔遊女は誓いの証に小指を切って落とした。ならば私は貴方が口付けをしてくれた右手を貴方に誓いの証に渡そう。
「日本くん、大好き!僕の国では、結婚した人は右手の薬指に指輪をするんだよ!」
「…左手では?」
「右!あ、じゃあこれあげる」
ロシアさんは片手で私を抱いたまま、もう片方でポケットを探す。
指の先には綺麗な指輪。
まるで少女のようだと自嘲ながらも、胸が高鳴った。
ゆっくりと、薬指に指輪が通される。
新しい一歩を踏み出すときの、守るという言葉が真実に聞こえたのはこれが初めてだった。
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西條事情
店主:西條
リンク:同人サイト様のみ
店名:三日月商會
アドレス:http://blaueterra.blog.shinobi.jp/
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