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さくら色

露日
さくらネタショート
さくら色

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「桜が満開ですねぇ…」
庭から見える近所の桜並木が見事に色付いている。
新学期が始まったのか、通りにまたいつもの騒がしさが戻った。子供らの笑い声や話し声、走る足音を聴きながら、しまい忘れた炬燵を見やる。とうとう、しまうタイミングを逃して春まで出張っていた彼も、お別れのようだ。
「お世話になりましたね。」
今年はいつもより気温の高い日と低い日が入れ代わり立ち代わりやってきていたので、なかなかしまえなかったが、もうお役ご免だろう。コンセントを引き抜き、天板を取る。ふかふかの炬燵布団をひっぺがして、物干しにかけてやった。天板を元に戻すと、もう既に春も少し中頃の風情にようやくなった。
額にじっとりと浮かんだ汗を拭い、一息ついた。
ピンポーン
鳴り響くチャイムに、一瞬びくりと肩が震えたが、すぐにこんな時期に訪ねてくる人は思い当たるので、はいはいと返事をしてげんかんへ向かった。

擦りガラス越しに見える姿に、思わず頬がゆるんだ。


「はいはい、いらっしゃいロシアさん。」
両手に何か四角い箱を持ち、立っていたロシアさんは破顔した。
「桜、綺麗だね!」
「えぇ、丁度満開ですよ。」
へへっと笑い、彼は手に持った箱を前に出す。
「…何ですか?」
訝しがりながらも受け取ると、ほんのり温かい。
「お花見弁当!作ったからお花見!」
まるで子供か女子のような彼に、ますます心が温かい。笑みがこぼれる。なんて純粋な人なんだろう。
桜のふわりふわりとした印象にぴったりな人だと思った。
「…貴方が作ったんですか?」
「もちろんだよ。ロシアの伝統料理なんだよ。ロシアと日本、二人一緒。」

「可愛いですね。」
「何が?」
「貴方がです。」
「え」
不意に漏れた率直な言葉がきいたのか、ロシアさんの頬は、白い肌が映える、さくら色に染まった。

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店名:三日月商會
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