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三六五題二十から二十三

三六五題
ムクツナ三点、スクツナ一点

020. つたないことば

伝えたいことの半分も
言葉で伝えることができない

なら何で伝えたなら伝わるだろう


「もーいいかげんにしてください」
「つれないですね、愛してますよ」
それこそ息をするように愛の言葉を紡いでも、この体を焼き尽くさんばかりの慕情は半分だって伝わりはしない。

「…綱吉くん」

小さく言って
薄く笑うその前に、柔らかい光を背に受けて、照れたように笑う彼の姿が見える。

「言葉なんて、つたないばかりで上手く言えませんけど、俺だって」

「骸さんが好きですよ」



つたないことばはこちらもおなじ。

けれど

伝わる




021. 隠密行動

今日は朝から綱吉くんは元気がありません。
一体何があったのか、他校生の僕には知る由もありません。
けれど彼の元気のなさを知りたい。
だから今日も僕は彼を、帰り道三歩後ろから見送りにゆくのです。

-綱吉くん、どうしてそんなに悲しそうなんですか
-ああ、そんな、泣かないでください
不意に綱吉君がぼくを振り返りました。
ああ、そんな、大きな目許に涙が。

僕はここにいますから、ねぇ、安心してください。

「骸…?」

はい

「骸」

何ですか、

「…逢いたいよ…」
僕は胸を締め付けるような痛みを受けて、思わず視線を外しました。
届かない声がもどかしい。
こんなに声を張り上げて君の名前を呼んでも、優しく君の涙を拭っても、君には届かないのですね。
綱吉くん、綱吉くん、綱吉くん、

夢の中でしか話ができなくても、僕はいつも君の近くにいるんです。
だから、泣かないでください。
「待ってて、すぐに助けに、行くから」

無理はしないでくださいね

「うん」

衝撃が体を突き抜けました。
返事を、しましたか、
「うん」
聞こえて…?
「わからない。けどなんとなく分かる。」
そうですか…
僕はとてつもなく嬉しくなりました。

隠れていたつもりでしたけど。わかってたんですか
「うん。いつも近くに感じてる。早く助けに行くから、待ってて」
なんとなく、彼の元気のない理由がわかりました。
心配してくれていたんでしょうね。

僕はうれしくて、
いまこの冷たい水の中にいることを忘れてしまうくらいに暖かくて、


きっと伝わらないのだろうと思いながらも、きつく抱きしめました。



022. 声が聞きたい

夢の中に、いつもいる。
俺の偉大なる家庭教師は、骸の持つ能力の一部だと言った。

夢のなかに入ると必ずどこからかやってきて。
何やら楽しく話して帰ってゆく。

不可解だ。

けれど

いつしか彼、その人を知る度に、募る想い。

そして気づいた。
「好きなんだ…」
ぽつり、と知らないうちに口から出ていたことばにぎくりとした。
空は今にも泣き出しそうなくらいに雲が重々しく重なっている。


023. かごめの見る空

綺麗に茜色に染まった空が、きらきらと目の前に広がっている。
目をとじても、瞼の裏側に残った茜色が美しすぎて、胸の辺りがざわめいて、口の中が少し渇いていた気がした。
空には鳥が無数と飛んでいて、隊列を組んでいる。
もうすぐ日が暮れるから、栖へ帰るのだろう。
綱吉は朱く照らされた美しい髪をそっとすくった。
と、前を歩いていた長身の、すらりとしていながらも均整の取れた体を黒い皮のズボンと、タイトなシャツに黒のネクタイというこんな田舎町には似つかわしくないくらいに華やかな男、が立ち止まり、なんだ、と言うように首を傾げて優しく眼差しをくれる。
「スクアーロ、髪、綺麗に朱くなってるね、」
「そうかぁ」
少し照れたように、頬をぽり、とかきながら、馴れない笑みを浮かべる。
「そうですよ」
それがなんとも可愛いというか、こんなことを言えば彼は落胆するか怒るかするだろうけれど、彼は格好いいのに、時々凄く可愛いのだ。
だから、思わずにこりと笑顔になる。
「…はぁー不意打ちはやめろぉ……、ほら」
どきりとしたのか、一瞬固まった後、そっと手を差し出してくる。
綱吉は、その手に手を乗せると、ぎゅっと力を入れて手をつないだ。
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